良くも悪くも精霊のお仕事
しばらくぶりです。
コロナ関係で失職しそうな流れなので、投稿できるうちに完結させてしまいます。
マオと話していたら、リトルがやってきて何か見せてくれるという。
どれどれと乗せてもらい、マオとやってきたのは洋上の無人島、灯台のある神子元島だったんだけど。
「……おいおい」
行ってみたら、そこにあったのは壊れた機械──いわゆる無人機ってやつ?だった。それもひとつじゃなく、いくつもあった。
明らかに飛行するものだが、人間が乗るためのものじゃない。
そして、素人むけのドローンのような、精巧だけどあまり遠くには行けないようなものでもない。
これは、アレだろ。
よく知らないけど、すごく遠方の基地みたいなとこから飛んでくるやつだろ。
そんなやつが何機も……全部壊れてるっぽいけど。
「どうしたんだこれ?」
「グゥ」
「……目についたから撃ち落とした?」
「グゥ」
さすがに細部まではわからないので、そこは精霊に補足してもらう事にした。
「詳細を教えてくれるかな?」
『ブンブンとびまわって、あちこちみてたー』
『それを、この子が落としたのー』
「ほうほう、見てたと……って、ちょっと待て」
さすがに流せない内容だった。
「すると何?このドローンだか何だかって、石廊崎周辺を見てたと?俺たちやエルフたちラミアたちも?」
『そうだよー』
「そうだよって……」
なんで知らせてくれないんだよと言いかけて、その無意味さに気づいた。
そうだ、精霊にそういう細やかな気づかいは期待できないんだった。
彼らには未来も過去もない。
ただフワフワと、かわいい見た目のまんまの存在と思って間違いないんだ。
これは俺の方が悪いな。
よし、別の質問をしよう。
「じゃあさ、聞きたいんだけど、こいつらを操ってた奴ってわかるかい?」
単純に考えたら、壊れたドローンからとれる情報なんて限られるだろう……科学的に言えばね。
通信記録があるわけでなし、周波数帯や部品がどこの製品かで想像するくらいかな?まぁ軍事マニアなら知ってるやつもあるだろうけど、俺はわからないしね。
けど、こういう質問の方が精霊には向いてるはず。
さて、どうかな?
『んー、ふたつあるよー』
「ふたつ?」
『あっちと、あっち』
ぜんぜん違うふたつの方向を精霊たちは示した。
「ああうん、なるほどさっぱりわからないな」
方角だけでは推測しか……いやちょっとまてよ?
「操ってた奴らの顔とか姿とか、わかる?」
『わかるよー』
「俺に見せてくれる?」
『いいよー』
他人の頭に映像を映す。
だけどこれ、おそらく俺の体内にいる精霊たちが仲介してるんだと思う。
こう、ピピッときたり、なぜかその風景が見えたり。
精霊とのやりとりってのは本来、言葉によるものじゃないって事なんだろう。
さて。
「──おう、これはまたわかりやすいな」
こっちは米軍らしい……ああ、こっちは中国っぽいな。
米軍の方は、これは生き残りを集めている連中っぽい。
たしか米軍ってあちこちに出張ってたっていうし、目的は生き残り集めて帰国ってとこかな?
それはいい事なんだろうけど、内部の空気が不穏なのはいただけないな。
まさかと思うが……。
中国の方は、別の意味でややこしいもんを見てしまった。
「なんだこれ?」
初老のおっさんが見えて、そのおっさんは無人機が映した俺たちの映像を見ている。
それはそれで問題なんだけど、おっさんの頭に浮かんでる映像は、俺の予想のはるか斜め上を言っていた。
……なんなんだよ。
どうしてこの中国のおっさんの脳裏に、親父とお袋が見える?
しかもこれ、俺の知ってるふたりより全然若いぞ。
両親は俺と同じ異世界からの帰還者らしい。エキドナ様も言ってたから間違いない。
ただし俺と違って、立派な勇者と精霊使いの二人組でもあったらしい。少なくとも戦力的には。
もしかして、帰還してから中国の人と何かあったのかね?
しかし俺を見ながら思い出してるってことは、まさか俺のことも知ってるのか?
うーん、こっちも不安要素だなぁ。
とりあえず精霊に頼む事にした。
「こういうやつ、まだ飛んでる?」
『ないよー』
「じゃあ次に見つけたら知らせてくれる?
あと、空でも海でもいいけど、生き物がないもの、こういう機械みたいなものが近づいてたら、これも知らせてほしい。できる?」
『わかった!』
精霊たちは自然のものと機械のようなものは区別ができるようなので、そっちの方向で頼んだ。
実際、漁船みたいなもので接近される可能性もあるから、ちょうどいいだろう。
「そしたら、これはどうするかな?埋めるかどうかしたほうが」
「ちょっと待って」
マオに止められた。
「ん?どした?」
「ナナが見てみたいって」
「おや、そうなのか?」
ナナというと、マオと仲良くしてくれてるエルフの人だ。
俺も精霊に頼み、通話をつないでもらった。
「えっとナナさん、これ見たいんです?」
『はい、地球製の機械に関心があります。特にそれらは先進の機構が使われているのでしょう?』
「いいけど危険だよ?こっそり動いて何か撮影されるかも」
『内部でデンキの動きがあれば気づきますし、充分に注意しますよ』
ふうむ。
「わかりました、じゃあどうします?今、見に来ますか?」
『場所は覚えましたから問題ありません』
「覚えた?」
『ご存知ありませんか?精霊に頼めば、地図に印をつけるように場所を覚えてくれるんですよ』
え、なにそのマップ機能。俺知らないんですが。
「便利ですねそれ。覚えたいです」
『マオに教えてありますので、彼女から学んでください』
「了解です」
おう。
やっぱり俺、純粋な魔力以外のすべてでマオに負けてるんじゃね?
いや、まぁ負けてもいいんだけどさ……うーん。
通信を終えた。
「なぁマオ」
「なに?」
「地図に印をつけてもらうってのナナさんに習ったか?」
「習った。これ」
「お」
マオがそういった瞬間、脳裏に白地図みたいなのが広がった。
どうやらこの周辺らしい。
「これどうやって使うんだ?」
「知らない。思ったものを貼り付けらればいいって言われた」
「貼り付ける?……ああ」
要は自分で考えて使えってことか。
じゃあ。
とりあえず、この神子元島をマーキングしてみた。
「お、出た」
神子元島灯台の場所に、某グー○ル・マップみたいにマーカーつけてみた。さらに神子元島灯台の名前もつけておく。
おーついたついた、なんだこれ便利じゃねーか。
しかも、見た風景も写真のように貼り付けられるのか。すげーな。
精霊関係って、こういう便利なのとダメなのの落差すごいよなぁ……まぁそれだけ、精霊が人間とは違う存在って事なんだろうけど。
「よし使えそうだ、ありがとう……さて戻るか」
「うん」
マオはなぜか、目を細めてにっこりと笑った。




