第1話 覚 醒
エルファイルの言葉の真意とは一体……?
ということで、始まります。
「……。……て。起きて……」
揺すられる感覚と共にかけられる声で、オレの意識は覚醒する。
ーーしかしまだ眠い、あと五分……。
「……10トンハンマーで叩けば起きるかな?」
「死ぬわ馬鹿!」
少女の台詞に対して反射的に答えながら飛び起きる。
なお、彼女がいう10トンハンマーは、実際の重さ(ゲーム内感覚)は10キロあるかどうかで、攻撃力は初期装備レベルだが、部位破壊・(一定ランク以下)武具破壊に関してはプレイヤーメイドや、ボスドロップの最高ランクハンマー類に比肩するピーキーな武器なのである。
対人戦では、腕を破壊して武器を使えなくする効果を使えるため、回復スキルないソロプレイヤーをキルするとき、武器封じという意味で使われていた。
あと、何気にこの武器の攻撃にペインアブソーバーがほぼついてないので、喰らうとめちゃくちゃ痛いのである。
入手可能になって一週間で対人に使ってはいけないと運営が通達したというのは有名な話だ。
いや、使用不可にしろよと思ったのはオレだけではないはずだ。
「いや、ジョシュアが起きないのが悪いと思う」
ぶつくさいいながら、10トンと書かれたハンマーをしまうシオリ。
いや、アレは冗談抜きで激痛で悶え苦しむから勘弁!
死にそうな激痛は三回も味わいたくないしな!
「すまんすまん……ってここは……?」
周囲を見回しながら問いかける。
木漏れ日が差す森の中、少し頭上を覆う枝葉が少ない広場のような場所で、その中心には蔦におおわれた仄かに光りを放つ縦長な石碑が立っていた。
その傍にオレたちはいた。
つまり仄かに光る範囲内にオレとシオリはいたようだ。
しかし、エルファイルの姿はない。
「わかんない。メニュー見ても国名とか表示されないし……エルはいないし……」
どんよりした空気に縦線がついていかにも落ち込んでますというエフェクトを出すシオリをなだめるように口を開く。
「まあ、とりあえず無事だし……(たぶん)生きてるんだからなんとかなるだろう」
「……ジョシュアってわりとお気楽星人だよね」
「悲嘆にくれてるより、できるだけ早く切り替えてたほうがいいってだけだ」
冷静にそう答えたあと、自分も左手を動かし、ゲームのメニュー画面を開く
『神族(元ヒュム) エインフェリア/剣聖/至宝の紡ぎ手 2100/99★/99★/99★』
自分のステータスを示す項目の左下にアイテム一覧とか、マップとかそういう表示があり、右下には、今のオレをSD化したキャラとレベルとジョブレベル以外のステータス数値が表示されている。
「……運営に通報、ログアウト、ワールドチェンジがなくなってるか……」
左側のウィンドウを下にスクロールしていき、気がついたことをこぼす。
「非アクティベートですらなくね……」
それに反応してため息をはくシオリ。
「まあいい。」
そういって立ち上がったあとに、石碑の方を向き、石碑を注視する。すると
『魔物避けの石碑 周囲の魔力を使い魔物を退ける力を持つ。ある程度の魔物を近寄らせない。一定範囲内に複数あると互いに共鳴現象を起こし、その複数の内側に入るのを阻む結界を生み出す 退けるちからは、吸い上げた魔力に依存する』
という情報が頭の中に流れてくる。
「鑑定は使えるっぽいな」
それから、アイテムを見て、いくつか取り出してはしまうを繰り返す。
「とりあえずいつもの最強装備にして……よし、これならなんか来てもとりあえず大丈夫だろう」
プレイヤーメイド(自作)の礼装プラス(一番強いの)に、緋い樋がある長剣を腰に着ける。
「なお、一番得意なのは両手用大剣二本を片手ずつで振り回す双剣の模様」
シオリが茶々いれてくるが、装備の関係と、プレイ時の不便さが原因なのだから仕方ない。
「うっせ、とりあえずいくぞ」
そういってオレは何となくで歩き出す。
にしてもエルファイルの奴、どこだろうなと思いながら。
すると、背後から追いかけてくるとおもったシオリから声がかけられる。
どうせ「待ってー」とかそういうのだろうと思っていたがーー
「ジョシュア……そっちはなにもないって木々が言ってるよ?」
その言葉にオレは盛大にずっこけた。
「そういえばお前、たしか『転生』で戦乙女つか神族になったけど、元々はハイエルフだっけ?」
「うん。そうだよ」
ハイエルフはエルフの種族の中でも器用、知力と魔力が高く後衛特化と言われている。
またエルフ共通の植物系統の意思を読み取ったり、フィールドが森の場合ステータス補正がある上、植物が周囲にあると魔法に補正がかかったり、対エルフ時に少しステータス補正を受けられる。
かわりに植物の採取ポイントで行う採取が他の種族より少なくなったりするエルフのデメリットに加え、盗賊系エネミーとゴブリン、オークなどからターゲットにされる確率が上がるという後衛向き種族としては地味に嫌なデメリットを持っている。
「ジョシュアはヒュムから神族だったっけ?」
「ああ、だけど初期の初期エインフェリア止まりだったけどな。つか、数ヶ月かけてやっとマックスになったレベルなのに、神族ジョブまでフルコンプしてたアイツはガチの変態勢だよな……」
ヒュムはいわゆる人間。
能力的には平均で、ジョブ補正がある意味一番響く種族だったりする。
神族は面倒な特殊条件満たした上で試練乗り越えないとなれない上にジョブレベルあげる手段が戦乙女とエインフェリアを除いてすさまじく面倒という廃人の廃人向けエンドコンテンツである。
あと、戦乙女は名前の通り女性限定だが、転生時に基準満たしてないとなれないと後々になって発覚したため、廃人勢含め(特に廃人勢)がブーイングしたのは是非もないと思う。
遠い目をしたくなったがなんとかこらえる。
「気を取り直して……人がいる方を探しに行くぞ」
「おー!」
オレのノリに乗りやすいシオリはオレの言葉に反応していい返事をしてくれる。
そうして、おれたちはこの場をあとにしたのである……。
いかがでしたか?
続きはのんびりと書いていきますのでのんびりとお待ちください。