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本当の願い

そんな会話が終わった後、アヤメは

「最後の時まで、どうかふたりで過ごしてください」

そう言って玄関を出ようとする

アヤメは見送りに来たユウキに少しだけ笑いかけて

「カレー美味しかったですよ」

そう言って、ドアを閉めた

時計を見れば、残る時間は一時間ほどで

ユウキは当たり前のように俺の膝の上に戻ってくる

「座り心地いいの?」

「…うん」

その声は、まるで感情を感じなくて

何を思っているのかは読み取れない


だから、聞いてみた

「…ユウキはさ、神様になりたいの?」

「…なっても良い」


「それがユウキの願い事?」

「…分かんない」


「チアキと付き合って、死にたくないって思った」

「叶うなら、生きていたいって」

「チアキを忘れないで居られるなら、それでもいいって」

もう死んでしまうと思っていたユウキからすれば

生き続ける神になってでも、そんなふうに思うのは

願いだと言えば、そう聞こえるかもしれない


それでも、それは間違った問いの上にあって


「これはもしもの話」

俺はそんな切り出しでユウキに問題を出す

歪められたそれではなく、本当の願いを聞く

「もしも、ユウキが死にもせず神にもならなくて良いなら」

「何をお願いする?」

ユウキは俺の上で、膝を抱えたまま喋り始める

「…笑わない?」

「笑わないよ」


「…チアキとお出かけしたい」

「チアキとご飯が食べたい」

「おやすみって言って一緒に寝て

朝起きたらおはようって言いたい」

「一緒に座って喋って」

「それでキスをして」

「怒って笑って」

「喧嘩して嫌いになって」

「それでもまた、好きになって」

「そうしていつか、結婚なんかして」

「……そんなふうに」

彼女の声は震える

「…そんなふうに生きたかった」


告げられた願いは

俺とユウキがそんなふうに生きられるなら

それは正しくハッピーエンドだと言えて


大富豪になりたいとか

六本木ヒルズの最上階に住みたいとか

王子様とお城で過ごしたいとか

そんな、過ぎた願いでは無くて


でも、そんな些細な願いすら

全部叶えてあげることは出来なかった


「そっか」

「ちゃんと、聞けてよかった」


だから俺は最後に

それが足るのかを確認する

「ねぇ、ユウキ」

「俺はユウキの人生を幸せにできた?」

彼女は膝から降りて、俺に向き直り

「うん、私は生まれて幸せだったよ」

そう言って笑う


それならば良かった

だったら俺は物語を終えられる


こんな間違った結末を

あるべき姿に戻すことが出来る


俺はユウキの手をそっと握り、玄関を出る

震えるその手は、強く俺を握り返して



それじゃあ、そろそろ

魔法が無いシンデレラは幸せになれるのか?

そんな、考えるだけ無駄な疑問に答えを出しに行こう


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