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おちたあとに

ゴンドラから崩れ落ちるように降りて

隣を歩くユウキに告げる

「コレ無理…もう絶対に乗らない」


そんな俺を見て、ユウキは笑いながら

「怖かったねー」

…いや、絶対思って無いよね?

そんな、心にもない事言うのは

美容室のスタイリストだけで良いから

アイツら必死にワックスだのブローだので弄くり回して、「いい感じじゃないっすか」とか言うけど、家で再現できねぇから?

その時以外、いい感じになった試しが無ぇよ


降り口を通り過ぎてしばらく歩けば

天井に付けられたモニターがあって、そこには落ちてるときに撮られていた写真が映し出されている。

ライセンスに厳しいくせに人の肖像権は侵害すんのな?


まぁ俺の場合、フリー素材に等しいからどうでもいいけど


「チアキ、すごい顔してるね」

ユウキは心底おかしそうに笑っている

まじまじと見てみれば、それこそ世界の終わりみたいな顔をした俺と、手を上げて引きつりながらも笑っているユウキが居て

そんな写真は、ほんの少しだけ幸せに見えて

「一枚くらい買っとく?」

思わずそんな事を言ってしまった。

そんな俺の提案にユウキは、首を振り

「いいや、私もひどい顔してるから」

「もう少し可愛く写ってるのがいいよ」

なんて、少し悲しそうに笑った


そんな風に言われてしまっては、無理に買うのも忍びない

俺は最後にそれを眺め、目に焼き付ける

別に写真が残っているかなんてどうだっていいのだ

ただこんな時間を過ごしたことだけ覚えていればそれで良かった

歩きながらパンフレットを眺めてユウキは

「次はこれがいい」

指差すのは、また絶叫マシンで俺の顔が引きつる。


「いや、だから乗らないって…」

ユウキはニコニコと笑い

「大丈夫だよ、だってチアキ乗らないって言ったのコレでしょ?」

確かに、二度と乗らないといったのはコレだけども…

ユウキさん俺みたいな事言うのね?

「揚げ足取りだろ……」

「私のお願いなのに?」

そう言って笑うユウキは、まるで子供みたいで

そんなふうに言われてしまっては乗る以外選択肢が無い

俺は諦めまじりに

「へいへい、了解しました」

適当な返事を返して、

それでもユウキが楽しくない訳では無いことに少しだけ安心した。

「チアキ次はどんな顔するんだろうね?」

そんな冗談に俺は笑って

「もう慣れたからあんな無様な顔、二度と拝めると思うなよ?」

並んで歩いて、次のアトラクションへ向かう


落ちてしまうと分かっていれば怖くないなんて言うのは嘘だけど

それでも分かっていれば、心の持ちようはあって

せめて、その時まではこんなふうに笑い合いながら

最後の時、ちゃんと強がれるように練習しよう



もちろんその後の絶叫マシン巡りで、俺を写した写真たちは

どれも負けず劣らずひどい顔をしていて

ユウキに散々馬鹿にされたのは、言わないでおこう。

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