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恋人という

バスの中でも、電車の中でも

俺とユウキは何処かよそよそしくて

どうすれば良いのかよく分からないまま、電車を乗り継ぎ

気がつけば、舞浜駅に着いていた。

駅は終業式を迎え、休みに入った学生達で溢れかえっていて

俺はユウキに手を差し伸べる

「多分、中はこれより混んでるから」

「はぐれないように繋ごう?」

それでもユウキは何も喋らず

俺の手は行き場を失ったままだった。

「ここまで連れて来といて、なんだけど」

「もしかして、あんまり来たくなかった?」

そんなことを聞いて、諦めて手を引っ込める

ユウキは首をふるふると振って

「楽しみにしてたよ?」

じゃあ何で、なんて

そんなことを言いかけて

何を聞いたらいいか分からなくなって、やめた。

「じゃあ、中入ろうか」

改札へ向けて人の海に飛び込む

もうすでに昼過ぎで

多分、この混雑では乗り物も一個か二個が限界だろう


それでも、園内を歩いてるだけでもいいだろうと

一日で回りきれないくらい楽しいはずだと

そう思って、選んだはずなのに

今はどうやって夜まで時間を潰そうかと、そんな事ばかり考えてしまう。

チケット売り場も混雑していて、げんなりする


「ちょっとここで待っててくれる?」

俺の言葉にユウキは頷き、ベンチに腰を下ろす

俺はほっと息をついて列に並び、特に意味もなくスマホを眺める


どうやら、初デートでここに来ると別れるというジンクスは本当らしい

しかも、とびきり強くて、抗えないそんな類の物で


俺は一人でチケットを買いに行けて安心してしまった

話す事を考えなくていいと喜んでしまったのだ


俺はぼんやりと眺めていたスマホをしまい

前に並ぶ学生服で手をつなぐカップルを見て考える

多分彼らは幸せなのだろうな、と

周りには溢れるほど人が居て、

それなのに、そんな誰よりも自分たちが一番幸せだと

疑う事なく信じている

そんなふうに見えて

少し前の俺だったらそんなものは嘘だと

喚き立てていたであろうそれを見て

今は何よりも、ただ羨ましかった。


彼らは初々しくて

だから、まだお互いを知らないだけかもしれないけれども

理想を押し付け合うだけの、そんな歪な関係かもしれないけど

それでも二人共、今が幸せだと言えるのなら

それ以上があるのだろうか?

俺と比べるまでも無いだろう

だって俺はこの関係を誰と比較せずとも、幸福とは思ってなくて

こんな所で一人取り残されていて

それは彼女もおんなじで


俺が欺瞞と嘲る偽物にすら、なれずにいるのに


俺が告白していたら、それになれたのだろうか?

あの時、彼女を受け入れていれば良かったのだろうか?

―― 三億円なんて最初から要らないと言っていれば変わったのだろうか


いつの間にか、前のカップルは居なくなっていて目の前にはチケット売り場の窓口があって

にこやかな笑みをたたえるキャストさんに

何枚ですか?そんな事を聞かれる


大人一枚と高校生一枚で

そう言いかけて、虚しくなる

チケットすらも違うのかと、そんな事を思ってしまう。

「大人二枚で」

だから嘘をついた

今はただ宙に浮いたままで名前もないこの関係が

せめて出るときには俺達二人が

この関係に同じ名前を付けられるように

ジンクスに負けないための願掛けとして

それくらいは嘘を付いても良いかなと思った。




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