千葉なのに東京ランド
朝起きたときに目の前にあったのはユウキの顔で
少し驚いたように彼女は瞬きをして
「おはよう?」
そんな彼女の疑問系なモーニングコールで目が覚めた
昨晩寝るのが遅かったから
寝坊したかと時計を見れば、10時前で
いつもよりはよっぽど早い起床だったが
向かう場所を考えると、正直遅かったと思う
ユウキは既に着替えを済ませていて
「どう、可愛いかな?」
上目遣いで俺に聞いてくる。
その、上目遣い殺傷性が高すぎだろ
ナチュラルボーン童貞キラーかよ?
もはや、生物兵器禁止条約に違反してるまであるからね?
そんなことを考えながら
何を着ても可愛いからと言いかけて
デートの為にその中から自分で選んでくれた事
そんな事実に気が付いた
「うん、可愛いよ」
そんな恥ずかしい事を面と向かって言うのは俺のポリシーに反するけど、シャーペンの芯くらいのそんな物は容易に折れて
思わず口を滑らせてしまった。
可愛いは正義だから、しょうがないね
ユウキは恥ずかしそうに笑い
「よかった」
もう、俺駄目になりそうだわ
俺は、恥ずかしさをごまかすように
「因みに下着は?」
…誤魔化し方下手くそかよ、俺
そんな俺のセクハラにユウキはモジモジして
「見たいの?」
そんな事を聞いてきた
もはや、お互いの裸を見た仲だというのに
何を今更と思うかも知れないが、そういう奴は解ってない
恥じらいのない下着なんてただの布切れだ
そこに羞恥心というスパイスが加わってこそ
……話し始めると長くなりそうだからやめとこう
「いや冗談だよ」
そう言ってパジャマ代わりのスウェットを脱ぎ始める。
ユウキの準備が済んでいるならもう出掛けなければ
「私、外で待ってるから」
慌ててユウキは寝室から出ていってしまう。
一人寝室に取り残された俺は
「……なんだか調子狂うな」
そんなことを呟いてしまった。
服を選びながら考える
ユウキの微妙な違和感ばかりが目についてしまって
それがいい事なのか、悪いことなのかは分からないけれども
それでも、ユウキの心情に変化があったという事だけは分かった。
手早く着替えを済ませて玄関を出て、外で待っていたユウキに声を掛ける
「じゃあ向かうとしますか?」
ユウキは首を傾げて
「何処に?」
「みんな大好き某有名テーマパーク」
色々考えた結果、そこに行くことに決めた
初デートで行くと、別れるとかそんなジンクスを聞いたことがあるけれど
そんなジンクスに頼るまでもなく後二日で俺とユウキは別れてしまうのだ、別にどうってこと無いだろう。
隣を歩きながら
「何があるの?」
そんなことを聞いてくる
「色々あるから、多分楽しいと思うよ」
というか、そこにしか無いから行くんだけどね?
最初にそれを言われたときからずっと考えてはいた
唯一、ユウキが欲しがった
「ガラスの靴」
それをプレゼントする舞台はそこしか思いつかなかったのだ。
だから、俺が今からやることは多分
とても陳腐でキザっぽくて見るに耐えない寸劇だと思うけれど
せっかく嘘の上に成り立っている関係なんだから
一回くらいそんな、ドラマティックな事をやっても良いんじゃないかと思う
「だから、楽しみにしてていいよ?」
そんな俺の言葉にユウキは浮かない顔をして
「わかった」
そんな返事が帰ってくる
些細な違和感に、俺は耐え続けられるのだろうかと
そんな事を考えてしまった




