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オールイン

店の外に出てしまえばパーカ一枚の俺は極寒で

ユウキよりも先に死んでしまいそうだった

マジで上着持ってくればよかった。

帰り道、歩きながらユウキは思い出したように俺に聞く

「そういえばどうやって私を見つけたの?」

あぁ、それ聞いちゃうんだ?


俺たちは赤い糸で繋がってるから何処にいても分かる、とか

そんな事を言えたら格好いいのかも知れないけど

多分俺が笑いながら言ったら、間違いなくヤバイ

完全にGPSかなんか埋め込んでるでしょ、ソレ

その問の答えは、わざわざユウキに話すほど、劇的な事でなくて

思い当たった所を片っ端から走って回るという

泥臭くて、頭悪い方法で

挙げ句に、居場所を知ってた人が居たなんて

そんな物語にするには、あまりにもつまらない話だから

いつか暇なときにでも思い返すとして

詳細は控えよう。

「ガラスの靴すら落ちてないから」

「必死こいて探し回ってたら見つかった」

「それだけだよ」


ユウキは少し笑って、それから意を決したように

「チアキは後悔しない?」

「私のお願いに付き合う事に」

「どんなに頑張っても、私は居なくなって」

「もうこれ以上何もあげられないよ?」

そう俺に問う。

多分それは、お互いの最終確認で



「後悔しないかなんて、そんな事分からないけど」

「ユウキは残りの二日、俺と過ごしていいの?」


ユウキは俺を見て一言だけ

「いいよ」

そんな諦めているのか

期待しているのかも分からない声音で返事を返す


言葉にすれば、もう引き返せない。


「だから、私が死ぬまでよろしくね?チアキ」

そう笑った。


もう引き返せないというのなら

神はサイコロを振らないと言うのなら

俺がそれをしなければならない

持てるすべてをBETする

破滅に向かうギャンブルを始めよう


息を吸い込み、ユウキを見据えて俺は言う

「明日デートしようか?」


ユウキは足を止めて

目を見開いて固まっている

永遠とも思える時間が流れて

その間、俺の動悸は収まらなくて

「いいよ?」

その声を聞いたときに、やっと握り続けていた拳が緩む

「何処へ行くの?」


残念ながらプランしかない、もうずっと前から決めていた

「それは明日のお楽しみってことで」

ユウキはニコニコしながら

「分かった、期待してるね?」

しれっと上がったハードルから目を逸らし

俺は、恥ずかしさをごまかすように先を急ぐ

振り返ればゆっくりとユウキはついてきていて

「…………さま」

そんな声が聞こえた気がした


――いつか辞書で引いたハッピーエンド、その言葉を思い返す

「物語の最後が都合よくめでたく終わること」

そこには嘘をついてはいけないとも

人を騙してはいけないとも書いてはいなかった。

だから不幸なユウキにも、そして不幸な俺でも

都合よく、めでたく

この関係を終わらせられる筈だと言い聞かせ

いい加減この気持ちに向き合おうと

不確かで、曖昧に揺らぎそうになる、そんな物を根拠にして

また間違えよう









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