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白馬の王子様

投稿ミスで49部分50部分の順序が逆になってしまいました。


もしだったら読み直しも兼ねて、49部分から読んでいただけると幸いです

だから彼の言うことは、お互い様で

私だって彼に嘘をついて

このままで不幸で居たいから誤魔化して

それでも

知りたいと思ってしまったのだ。

どうして彼は私と居るのだろうと


チアキは泣いた。

理解されたいと、認めてほしいと

私と同じ気持ちを抱いて

それでも諦めないで、もがき続けていた。

彼は、それを何でもないと笑いながら話して

それでも諦めきれず泣いて

学校に行って、色々知ってるはずの彼も

答えを知らない事に安心した。

彼も私と一緒だった

私の言葉は、多分どうしようもなく安っぽくて

そんなふうに慰める必要なんてないって思ったけど

私は、言わずにはいられなかったのだ


私が、チアキの認められたかった人じゃ無いのは知っている。


誰でも良いなんて、思ってなかったのも解ってた


「私が認めてあげる」

彼がユウキって呼んでくれた

何が好きかを聞いてくれた

私の幸せを考えてくれた

半分にして、分けてくれた

優しく髪を洗ってくれた


そんな彼のように


私もそう言って

少しでも、返したいと思った。

私にくれた優しさも

私と居続ける強さも

もう、私には眩しすぎて、それを受け取るには何も無くて

彼と居続けることすら出来ないのだから。

これ以上チアキと一緒だと、私は終われなくなっちゃうから


だから、チアキから逃げた。


最初みたいに期待した

間違えないで欲しいと、ちゃんと私を見てほしいと

でもそれ以上に思ってしまう。

どうか、彼の抱いた幻想のまま

間違えて欲しいと


私を見ないで欲しい

――キレイじゃなくて何も無いから


私を知らないで欲しい

――チアキにだけは嫌われたく無いから


そんな、あべこべで不確かで

私すら分からない、これは何なんだろう?


その答えを知りたい気がする

でも、きっと知ってしまったら戻れない。


舞踏会に行ったシンデレラは幸せだったのだろうか?

私は、夢を見る事ができて幸せだと、幼い時に思った。


でも今はそう思えなくて

王子様と出会わなければ

魔法をかけられなければ

舞踏会なんて知らなければ

私と違う世界だと諦められれば


そんな夢さえ見なければ、良かったと後悔したに違いない。


私達は彼女の結末を知っているから

幸せだと勘違いしてるのだ


多分その時、シンデレラは人生で一番不幸だったに違いない。


そんな夢さえ、いつまでも見ていられないのだから。


だから、私はただの不幸な少女に戻ろう


あたりはいつの間にか、暗くなっていて

それだけの時間私は何をしていたのかと驚いてしまった。


ご飯を食べようと思っていたが、気分じゃなくなってやめた


私は辺りを見渡し探す。

こんな幸せな人達の中にも、私みたいなのが紛れている


チアキはクリスマスは大切な人と過ごす日だと言っていた


だから、探すまでもなくいると思う。

今までの飼い主達みたいな目をした人を私は見つけようとする。


それは、願うまでもなく簡単に見つかって

私は笑ってしまった

簡単に幸福になれないくせに

不幸にだけは、すぐなれるのだ

それでも、諦めないチアキはやっぱり強くて

私は弱いから、また悪意の中で横たわろう


コートの前ボタンを外し

出来るだけ胸元が見えるようにワンピースをずらす

大丈夫、いつものようにすればいい

チアキには見透かされてしまったけど

それだけは得意のはずだから

心を、表情を、言葉を、そのすべてを作って

こちらをチラチラと見ていた男に声を掛ける。

「ねぇ?貴方ひとり?」

男はニヤリと笑う

「私もひとりだから、何処かに私を連れて行って?」

そう言って、男の手を絡め取る

男は下卑た目をして、私じゃない誰かを見ているようで

「ツレが居るから三人になるぜ?」

どうでも良かった、今更何人でも変わらない

ニコリと笑い、男の耳元に顔を寄せる

「良いじゃない?私嫌いじゃないわ」


男はニヤつきながら、私の顔を見て

「オマエ泣くほど欲しいのかよ?それともクスリでもキメてんのか?」

そう言われて、私は驚く

泣いてる?そんなわけ無い

だって、私はいつも通りの普通をするのだから

悲しくも、嬉しくも無いのだ。

そんな私の頬を何かが伝う

何か言おうと、声を出そうとして

それは叶わなかった

今私は笑えているのだろうか?

どんな顔をしているのだろうか?

全く分からなくて

戸惑う私の肩を男が抱く

「前の男の事なんてすぐ忘れさせてやるよ?」

期待をにじませるような声で

「俺のはすげぇからな?」


あぁ良かった、勘違いしたみたいで

そうして、一緒に付いていこうと歩き出して


―遠くで叫び声が聞こえた

「ちょっと待ってください」


私は固まって動けなくなる

最初は、幻聴かと思った

だって私にガラスの靴は無くて、

ただの不幸なだけの嘘つきだから

それでもその足音は、だんだん近くなって、そして止まる


「あーすいません、大変申し上げにくいんですけど」


その声は、いつも自信無さげで


「ユウキの隣、優先席なんで退いてもらって良いですかね?」


言ってることは、良く分からなくて


それでも優しく私を呼ぶ

その声を聞き間違える筈が無いのだ。


私はゆっくりと後ろを振り返る


そこには白馬に乗った王子様はやっぱり居なくて




息を切らしたパーカー姿のチアキがそこに居た。






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