表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/78

夜は更けて、初めての

俺達は風呂からあがり、着替えを済ませた。

もう一緒に風呂に入るのも慣れたもので

何も言わずも、ユウキはタオルで体を隠してくれるし

俺は、彼女の髪を洗うのが上手くなった。

そんな風に慣れて、知って緩やかに忘れるのだ

それが当たり前だなんて勘違いするのだ。


彼女と同じベットに入り、また同じ様な朝が来ると


そんな、勘違いするのだ。


最初はなんだか分からなかった

俺はまだ眠りから完全に覚めてはなくて

目は暗闇に慣れていない


レースカーテンの隙間からわずかに照らす月明かりに目が慣れた時に、俺は目の前の光景を飲み込み切れなかった。


俺の眼前には、パジャマどころか下着すら纏っていないユウキが覆いかぶさっていた。


彼女の紅い目が、月明かりに照らされ妖しく光る

「起きちゃった?」

そんな事を、俺の耳元で彼女は囁く。

俺は枕元にある調光スイッチを触ろうと、手を動かすと

彼女の指が優しく俺の手を絡め取り、それを許さない。

「明るいと恥ずかしいから駄目」

俺の顔の前に、彼女の控えめな胸がある。

「…初めて?」

彼女は何とは言わないが、ここまであからさまなら言われるまでもなく分かる。

「…そうだよ」

くだらない見栄をはる余裕すら無かった。

彼女は笑い

「寝てるときに、始めてしまおうと思ったけど」

「せっかく初めてなら、ちゃんと分かるように」

「優しく教えてあげる」

そんな言葉を囁くのだ。

やっと頭が追いついてきて、そんな言葉の意味を理解して

体が反応してしまう。

ゆっくりと体重をかけて、俺が逃げられないようにして

言葉で、仕草で俺を絡め取って、思考を奪う


彼女は俺のズボンに手をかける。

「いっぱいして?、飽きるくらい」

「それで全部私に頂戴?」

彼女は、自分のお腹を撫でる

「ここはずっと空っぽのままだから」


「せめて、貴方で満たして?」

そんな言葉に、俺はもう抑えきれなかった。


その感情をありのまま

隠すことなく彼女にぶつける。























「…嘘をつくんだったら、最後までちゃんとつけよ」


自分が思ってるより、その言葉は冷たく

乾いた空気を震わす。


俺が、もう少し愚かだったならば

彼女の言葉を信じられれば

そんなことを気づかないフリをできれば


今のままを続けられたかも知れない。


それでも、ユウキは

「いつかちゃんと聞いてね」

そんな事を願うように言ったのだ。


「残念だけど、そんな事を期待して、望んだこともあったけど」

思春期男子なんてそんなことばっかり考えてる

それでも笑っている彼女の目は


俺を見ていなくて


彼女は俺を、チアキと呼ばなくて


紅い瞳は、涙をこらえていて

 

そんな事に気がついてしまった俺は

この先を続けられない


そんな下心なんかよりも


「俺が欲しいなら、いつもみたいに俺の目を見て」

「ちゃんとチアキって名前を呼んで」

「そして、ちゃんと笑ってくれよ」


そんなふうに、彼女といたいと

確かに俺は願ったのだ


俺が嘘つきだからわかってしまった

そんなふうに生きてきたから気づいた


その言葉は決して俺に向けられてはいないと


それは、誰でもいいのだと


分かってしまったのから


思ったまま、口にしてしまう

物語を終わらせてしまうような言葉だと知っていても


それでも止めることはできず、声になってしまう。


「俺の事、勘違いしてるなら教えてやるよ」

全ての始まりの真実を

それが、今までの全てを嘘に変えてしまうのだとしても


「なんで、お前を幸せにするなんて依頼を俺が受けたと思う?」

彼女は考える事すらしないで即答する

「わからないわ」

そんなの簡単だ



「不幸だったら、何も無い俺でも、幸せに出来ると思ったからだ」

この物語の始まりはただの自己満足で

同情でも、憐れみでもなくて

ただ、何もない俺でも、誰かを幸せに出来るなんて

そんなくだらない証明のために彼女を使おうとした。


俺は何に憤っているんだろう?

自分だろうか?

それとも彼女?

あるいは神様なのだろうか?

それすらわからないまま俺は声を荒げる

ずっと隠して言わずにいた

考えない様にしていた想いをぶつける。

「俺には、そんな簡単なことも出来なかったみたいで」

「そんな俺しか頼る人が居なくて」

「王子様なんかじゃなくて」

「本当に残念だったな?」


「それが、俺だよ」

「小暮千秋って人間だよ」


始まりが嘘ならば、積み上げられたそれらは

たとえ本当の想いが

紛れのない真実があったとしても嘘なのだろうか?


彼女への想いも

見続けていた時間も

ただ無意味で空虚なものに姿を変えるのだろうか?


その答えは、俺にも分からない。


堪えきれなくなった俺は

何も言わない彼女を振り払い、逃げるように寝室を後にする。

彼女には、ここ以外居場所はなくて、

それだけは奪いたく無いから

ドアを飛び出す。



追いかけることも出来ず

独り残された彼女の目から涙が落ちた。

「どうして、私に夢を見せるんだろう」


私は彼に、求めたのだ

この世界が生きていく価値もない、下らない残酷な世界で

そんな世界に生きていく位なら

死んでしまったほうが良いって

そんな証明を彼に求めたのだ。


誰にも大切にされないって

そんな今まで通りの普通を求めたのに

どうして彼は、悲しい目をして傷付きながら

それでも

「そんなのは嘘だなんて」

言うのだろう。


涙は止まることなく、シーツを濡らす。


もう私のそばには、涙を止めてくれる人は

ー 優しい嘘つきはもう居ないのだ





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ