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小暮千秋2

全国大会の組み合わせ表を睨む。


ほぼ、去年からメンバーの入れ替わりは無い

トーナメント表を見れば、正直反対ブロックでなくて良かったというところだろう。

如何に全国大会がレベルが高いとはいえ

やはりその中にも格が有る。

俺が、格上だと思っている相手は、ほぼ反対ブロックに散っていた。

机の上のパソコンで去年の大会、俺が対戦する可能性のある相手の試合全てを再生しながらイメージする。


よく、顧問には勝つための明確なビジョンを持てなんて言われるが、そんな事をイメージしたことは一度もない。

俺がいつもイメージするのは、負けないためのビジョン

相手が何が得意で、何が苦手なのか

どんな戦い方なら、負けないかそれをイメージするのだ。


いつも判定勝ちしかできない俺が

一本という得点を取ることのできない俺が勝つためには

如何に相手よりも積極性を見せて

如何に相手の刃を鈍らせ

有効打を取られない事


武道という概念から逸脱した小細工を弄して

相手を自分と同じ土俵まで引きずり降ろさなければ勝てない。


防具以外に竹刀を打ち込んでしまえば


思うように有効打を取れなければ


相手だって、中学生

些細なミスに怯え

うまくいかないことに苛立つのだ。


「ちぃーす」

ノックもせずに姉が部屋に入ってくる。

「姉貴、ノックくらいしろよ?」

パーマががった髪に、くりくりと大きい目

動物で例えるならリスって感じの

背の小さい合法ロリ

それが俺の姉、千早(ちはや)だった。


「なになに、真剣な顔でエロ動画でも視聴中だった?」


「そうだから、さっさと出てってくれない?」

面倒くさい事この上ない

適当な返事で、姉を追い払おうとする。

「動画じゃなくて、リアルがここにあるんだからこっち見ればいーでしょ?」

風呂上がりでタオル一枚の千早

「お前の裸に欲情出来るやつはストライクゾーンがデッドボールだろうが?」


出塁というか、もはや出頭だ。


「私の可愛い千秋ちゃんが冷たいよー」

「酷くない?ねぇ酷いよね?」


酷いのはお前だろ

人のコレクションコーナーに姉弟物と

ロリ物ばっか追加しやがって

お陰で、母親からの目線が凄まじいんだよ。

この前なんか直接

「ソレだけは勘弁してね」

なんて涙を浮かべながら言われたんだぞ?


小学校のプールの時、休みたくて欠席理由に「生理」って書いた時と同じくらい空気冷えてたからね?


恥の多い人生を送ってきました。

なんてモノローグ付ければ名作っぽくなるかな?


「もう全国大会近いのは知ってるけど、あんまり気負い過ぎないでね?」

急に、千早が真面目な顔をする。


しょうがなく、俺も真面目に返す。

「分かってるけど、負けたらこれまでの全てが無駄になるから、気負わないなんてのは無理な話だよ」


ここで負けたら、それこそ俺の全てを否定することになってしまう。

決して、褒められた戦い方じゃ無いのは理解している


誰もが納得できる強さで無い事も


ここまで勝ち進んで来た、それまでの相手の中に

どれだけ敗北を認めた選手が居ただろうか?


試合中に審判に抗議する者

苛立たしげに舌打ちする者

試合が終わった後に、礼すらなく立ち去った者

反則負けでも良いと、執拗に防具以外に打ち込む者


そのどれも決して褒められた事ではないけれど

俺と彼らの違いはルールに則っていたか、その違いでしか無いのだ。


弱いのに、諦めきれず、みっともなく、浅ましい。


自分がそんな人間だと、心の底から思っている。

だからこそ、勝利という絶対的な価値にしがみつくしか無くて

そんな事でしか、自分自身を肯定できない。

彼女と居て良い理由を見いだせない。


そんな俺を弱いと笑い、負けたと認められないというのなら

自分が特別だなんて幻想を

練習は裏切らないなんて綺麗事を

そんな奴にすら勝てなかったという事実を

お前達が弱かっただけという現実を


証明する為にも勝たなければ


もう、俺には何も無いのだ。




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