最後じゃない晩餐
レストランの前でタクシーを降りる。
もはやタクシー便利すぎて、駄目になっちゃいそう。
レストランの外観は、こじんまりとしてはいるが
パリ郊外に、ありそうな感じの良い雰囲気が漂っていた。
まぁパリ郊外に行ったこと無いけど
店名は、うん読めないわ
潔く諦めた。
首を傾げているユウキを見る、今日も相変わらず可愛いので、ファッションのポイントを解説したい。
今日のポイントは、なんと言ってもベレー帽
フランスと聞いて、悲しいがなベレー帽しか出てこなかった。
なんか芸術家とかよく被ってるし、あとは知ってる限りだとグリーンベレー位しか被ってるの見たことないよね、この帽子
大変よく似合ってます。
あとは、何かオーガニックなんとかな、トップスに今年流行の、パステルなんとかなスカートを組み合わせた……
要約すると、マネキンのそのまま買いました。
だって分かんないもん、何、森ガールって?モリゾーとキッコロのお友達?それとも、マグミラン大尉のほうかな?
「チアキ?お腹すいたよ?」
さいですか
下らない事を考えてたおかげで、緊張が多少解れた
店のドアを開け店内に入る。
「すいません、予約してた小暮ですけど」
燕尾服を着た、ウェイターさんに声を掛ける
にこやかな笑顔で
「17時よりご予約の小暮様ですね?お待ちしておりました」
ご飯時ではないというのに、店内は結構な数の客で賑わっていた。
クリスマス直前とあってか、ディナータイムの予約を取れなかった、俺みたいなのが来ているんだろう
別段、出てくる料理に違いは無いので何とも思わないけども
取り敢えず下調べした情報を整理する。
20代前半に人気で、ドレスコード無いけど本格的なコースとかも楽しめるんだとか、ディナータイムなんかは、ピアノとか弾いてるのも聞けちゃうらしい
全部雑誌の受け売りだけどね。
案内された席に座る。
「当店はコース料理とアラカルトどちらも楽しんで頂けるようにご用意させて頂いております」
アラカルトってなんだろ?
「食前にお飲み物はお持ちしますか?」
分厚い辞典みたいなの持ってこられた
その脇にソフトドリンクのメニューが書いてある冊子がある。
「んと、ジンジャエール二つで」
「はい、かしこまりました」
メニューを軽く見るが、料理名で内容を全く想像出来ない単語が並んでいた。
これは、プロに任せた方がよくない?
若鶏のクリスティアン、クリームソースを添えてとか書かれても
ロナウドしか出てこない
なに?ドリブル上手いの?
こういうとこで知ったかぶりすると、恥ずかしい思いをするのはよく知ってる、何回もやったからね
「ごめんなさい、全然分かんないんで、オススメのコースでお願いします」
こんな客にも慣れているのだろう、店員さんはにこやかに対応してくれる。
「かしこまりました」
料理を待つ間、暇だな
さすがにこの空気感でスマホを弄る度胸はない
肝心のユウキはさっきからテーブルの上に折られているナプキンに夢中だ。
後ろの席のカップルであろう男女の会話が漏れ聞こえてくる
「ていうか、前の席の二人あり得なくない?」
「本当、笑いそうだったわ」
そんなに面白いやつがいるのかと、辺りを見渡すが、近くの席には俺たちしかいない。
あぁなんか、間違えてたのかな?
いちいちそんな事を言われても、
もう何とも思わない、慣れてしまった。
後学のために、なにか間違いだったか教えてくれると嬉しいと思うくらいで
まぁ今後、こんなおしゃれな店来ること無いと思うけど。
「まず、ウェイターが椅子を引くのを待って椅子に座るんだよねー?」
ふむふむ、そうなのか
「折角持ってきたメニューにも目を通さないし」
「見もしないで、「わからないからオススメで」とかマジ引くよね?」
いや、通したけどロナウドしか居なかったんだって
後、俺の物真似するんじゃねぇよ、ちょっと似ててウザいわ
その後も、ああでもない、こうでもないと楽しそうに語っている
カップル
しまいには、「あの女の子の服、この前行った店のマネキン着てたわ」とか言い始めた。
取り敢えず、
俺のテーブルマナーがなってなかったのは良く分かった。
そして、それ以上に後ろの二人のマナーが終わってる事も。
…ちなみに、言っとくけど、店のマネキンはベレー被って無いからね?
そこんとこ勘違いしないで欲しい
リスペクトしてるし、インスパイアしてるけど
俺のオリジナルだから?




