この世界は
「これ、美味しいね?」
ユウキは嬉しそうに手づかみで、唐揚げを頬張る。
食べきれないかと思ったが、意外にユウキはよく食べるらしい
「それは良かった」
「チアキ?あのね」
食べ終えた弁当箱を閉じてユウキは切り出した。
まだ俺は食べている最中だが、箸を置く
「さっきの、剣道の話」
「チアキは聞かないでって顔してた」
あぁ、そんな顔してたんだ俺
ユウキは続ける
「私、よくわかんないけど」
「教えてもいいよって思ったら教えて?」
ユウキはこれ以上無理に聞こうとはしてこない。
その事に安堵する
「……わかったよ」
「せっかく俺のこと知りたいと思って、聞いてくれたのに悪かった」
少女は言葉を探しながら、伝えようとする。
「いいよ、でも」
「私、居なくなっちゃうから、それまでに教えて」
「教えてもいいと思えるように、頑張るから」
努めて明るく振る舞う少女
だがその明るさが、今は痛々しい。
多分、俺は彼女に話す日は来ないだろう。
他の誰でもなく、この少女にだけは知られたくは無いのだ
どうしようもなく弱くて
どうしようもなく下らなくて
どうしようもなく薄っぺらい
不幸を気取って、傷付いたと喚き散らす
弱くて、醜い人間だと知られたくは無いから
だから俺は、その言葉に黙するしかなかった。
食べ終えたゴミを、空っぽのゴミ箱に捨てる。
クローゼットから多くない私服を取り出し、修学旅行以来出番のないトラベルバックに詰め込んだ。
ここに、もう用事はない
「じゃあ帰ろうか」
俺は、写真立てを伏せる。
ユウキはちらりとそれを見たが、もう何も訊いてはこなかった
……この世界は嘘と欺瞞で出来ている。
そんな日が来ることは無いと知りながら、嘘をつき
自分がどうしようもない人間だと知っていながら、騙すのだ




