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マイホームへようこそ

アパートから出て、バスに乗る。

ユウキには昨日買った、茶色のコートを着せた

俺は、ベンチコートを羽織っている。


歩いてもいけない距離ではないが、わざわざ歩いていこうと思うほど近くはない。

特に、何を話すでもなく4つほどバス停を過ぎて、降りた


バス停からは5分ほど歩くことになる。

「もうお昼だから、なんか買って家で食べよう」

「いいよー」


家に着くまでに有るのは、コンビニかアゲラー本舗位しかない。

昨日、アヤメが頼んでいたのを聞いていたからか、唐揚げの気分だった。


弁当を二つ頼み、ユウキの所へ戻る。

「それはなに?」

「唐揚げ、鶏の肉を揚げた食べ物だよ」

この説明、全然美味しそうに聞こえない。

リポーターのような語彙力は望みすぎでも、もう少し何かあると思う。

「俺は好きだから、ユウキにも食べてみて欲しいかな」

「わかった」

歩きながらユウキは俺に言った

「またあとで、名前決めようね」


「はいよ」

そうこうしてるうちに、家に着いた。


ごく普通の2階建ての建て売り住宅、それが小暮千秋の家である

…特に解説すること無いな


鍵を取り出しドアを開ける。

雑多に靴が並ぶ玄関が俺達を出迎えた。

「散らかっててごめんね、普段あんまり人来ないからさ」

「別に平気」

靴を脱ぎ、そのまま2階に上がっていく。


慣れた手つきで自分の部屋に入った

学習机の上にはノートパソコン、あとは折り畳みのベットと、小さいコタツ

本棚には、漫画や小説が並んでいる。

定番のエロ本なんかは、ソーシャルな時代ですから

パソコンの中だ

これで、母親の

あいうえお順どころか、ジャンル分けまでされる整理の魔の手から逃れたと思っていたのに、

起動したら、フォルダ分けされてたのはつい最近の話

何なんだろうね?嫌がらせ?



「特に面白いもんないでしょ?」

がっかりしたと思って、ユウキに聞いてみる

「ん?そんなことないよ」

「チアキの匂いがする」

慌ててゴミ箱を見るが、空だった。

心臓が飛び出るかと思ったわ


コタツの電源を入れる

「ごはん温めてくるから、適当にくつろいでて」

そう言い残し、部屋を後にした。

レンジで温めている間

適当なコップを見繕い、お茶を入れる。


家に誰かくるって経験が、家庭訪問ぐらいしか無いから比較しづらいけど、人生で一番緊張してるまである。


深呼吸を一つ

暖め終わった、弁当を持って部屋に戻る


部屋に戻ると、ユウキは写真入れとにらめっこしていた。


その写真入れの中身に思い当たった俺は苦い顔をしてしまう。

「チアキ?なにこれ」

中学時代優勝した剣道大会、その写真だった。


「昔、剣道やってたとき撮った写真だよ」


「そうなの?チアキ強かったの?」

「どうだろうね?」

自嘲気味に言い捨てる。


ユウキは無邪気な顔で言う

「じゃあ見せて」と


…止めて欲しい

考えるより先に、言葉が出る

何度繰り返したのだろう、この言葉を


「ごめんね、もうやってないんだ剣道」

俺がその時どんな顔をしていたのかわからない


悲しそうな顔でユウキは聞く

「悲しいの?」


「悲しくはない」


「じゃあ、苦しいの?」

「分かんないよ」


「悲しいのかも、苦しいのかも分かんない」


それ以上言葉を続ける気は起きなかった。


ユウキは紅い目で俺を見続ける。

堪えきれずに俺は目をそらし

「ご飯、冷めるから食べよう?」

そう言った。



俺は忌々しく写真立てを睨み付ける


こんな思いをするなら、自分のプライドのために、少女にそんな顔をさせるくらいなら


いくらでもいい、こんな記憶売ってしまえば良かった。


そう思った。











書いてて思ったんですけど、皆さんアゲラー本舗ってお店知ってるんですかね?

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