60話 温泉旅行
中間考査のテストが終わり、テストが僕達の手元に戻ってきた。僕の成績はなんとか学年17位と前回よりも良い成績で終わった。芽衣は学年ベスト3になった。さすが芽衣だ。瑛太は学年30位と健闘している。
蓮はまたダル先生に職員室へ連行されていった。まず赤点で間違いないだろう。咲良、悠、莉子は平均点以上だったと上機嫌だった。
瑞希は色々あったにも拘わらず、学年トップの成績を維持している。お姉ちゃんズの皆もそれぞれに成績が伸びたと大喜びだ。
中間テストが終わった、その週の土日に、お姉ちゃんズと温泉街に旅行にいくことに決まった。つまり今日(土曜日)なんだけど、旅行にいくことになった。電車で4時間ほど行った温泉街への旅行だ。
朝早くに駅で待ち合わせをした僕と瑞希とお姉ちゃんズは、温泉街までの切符を買い、電車に乗る。電車も2回乗り換えて、温泉街に着いたころにはお昼を少し回っていた。
駅を降りて温泉街までタクシーに乗って20分、目的の温泉街に到着する。
温泉街の中を通る大通りには、ホテルや民宿が30件ほど並んでいた。大通りの裏手には川が流れていて風景がきれいだ。もうすぐ紅葉に入ってくる頃なのだろう。温泉街の木々たちはほんのりと赤く色図いてきている。
僕達は予約している旅館へチェックインを済ませる。僕達の泊まる部屋は6人部屋で大部屋だった。そこで僕は気が付いた。この旅館き決めて予約をした美咲姉ちゃんに問いかける。
「美咲姉ちゃん、僕の部屋がないんだけど」
「何言ってんのよ。蒼ちゃんはお姉ちゃん達と同じ部屋よ。当たり前じゃないの」
美咲姉ちゃんに”何、当たり前のことを聞いてるの”という視線を向けられるが、僕としては納得できない。僕も一応、男子なんですけど、普通、部屋を別々にしてくれてもいいと思う。
既に6人部屋で予約してしまているので、部屋の変更はできない。僕はため息をついて諦めた。時間も昼頃なので、僕達は旅館から外へ出て外食をすることにした。
温泉街を歩いていると、老舗のようなお蕎麦屋があった。僕達はこの店と決めて、お蕎麦屋に入る。結構、品数の多い。僕は肉そばを頼む。楓姉ちゃんと瑞希は山菜そばを頼んだ。美咲姉ちゃんと恵梨香姉ちゃんは天ぷらそばだ。凛姉ちゃんはざるそばを頼んで、楓姉ちゃんはニシンそばを頼んだ。
料理が運ばれた順に僕達はそばを食べていく。とても上手い。僕はおつゆまで全部飲み干した。恵梨香姉ちゃんは豪快に食べている。凛姉ちゃんは上品に食べ、楓姉ちゃんは小さい口でゆっくりと味わって食べていた。
楓姉ちゃんも食べ終わったので、僕達は支払いをすませて、お蕎麦屋を出る。そして土産屋を見て回る。せっかく皆で旅行に来たんだから、皆の記念になるお土産を買おうということになり、皆でお土産を見て回る。
あまり大きなお土産は、家の中で放置になると恵梨香姉ちゃんが言い、凛姉ちゃんがスマホに付けられるストラップがいいと提案したので、皆でストラップを見る。
僕は1人で店の奥を色々と見ていると、きれいなかんざしがあった。日頃、お姉ちゃん達にはお世話になっている。何かお返しをしたいと思っていた僕は皆に内緒でお姉ちゃん達のためにかんざしを人数分買った。
そして店の中を物色していると天然べっ甲でできた、きれいな柄の入った櫛を見つけた。瑞希に買ってあげたら喜ぶかなと思って、内緒で櫛を買った。櫛は髪飾りと組みになっていたので、結構な値段だったけど、瑞希のためと思って奮発した。
僕がお姉ちゃん達のところへ戻ると可愛い猫のストラップを瑞希が買ってくれていた。皆とお揃いだ。さっそく皆でスマホにストラップをつける。皆、笑顔がいっぱいだ。
僕達はお土産屋を数店見てまわってから、自分達の宿へ帰った。
「やっぱり温泉街に来たからには、温泉に何回も入らなきゃね」
恵梨香姉ちゃんが温泉に入る用意をしている。
「僕は男湯だから先に行くね」と言って僕は温泉に向かった。すると旅館の方が男湯の前に「只今、清掃中」という札を立てている。
「男湯は今入れないんですか?」と聞くと旅館の方が屈めていた腰を伸ばして僕を見る。
「今、男湯は清掃中です。女湯に入ってください。今は誰も入っていませんし、のれんを男湯にしておきますから、女性の方が入ってくることはないですよ」
そう言って、のれんを男湯にしてくれた。
僕は脱衣所で服を脱いで、裸になって1人、大浴場へ入っていく。そして頭と体を洗って、温泉に浸かった。とても気持ち良いお湯だ。どんな効用があるんだろう。体の芯から温まる。
僕はタオルを湯舟の縁に置いて両手を広げて、大満足で目を伏せて温泉を満喫していた。
「ガラガラ」
大浴場の扉が開けられる音がして振り返ると、瑞希と目が合った。それに楓姉ちゃん、凛姉ちゃん、美咲姉ちゃん、恵梨香姉ちゃんと目が合う。全員がタオルも持ったまま固まっている。全員、全裸だ。僕の目に、全員の裸体が焼き付いた。
「キャーーーーー!」
僕は慌てて湯舟の縁に置いてあったタオルで股間を隠す。どうなってるんだ。のれんも男湯に変えてあったはずなのに、なぜ瑞希達が入ってくるんだ。僕は考えている間も瑞希達から目を放すことができない。特に楓姉ちゃんのプロポーションは凄すぎる。スタイルがいいのに胸がロケットで、胸が上を向いている。
「蒼のばかー」
瑞希が慌てて、湯舟に入ってくると僕の目をタオルで覆い隠して、目隠しをする。
「どういうことなのか説明してくれるかな、どうして蒼ちゃんが女湯に入ってるのかな」
凛姉ちゃんの声が響く。
「男湯が清掃中で、旅館の方が女湯に入ってくれって言われて、のれんを男湯に交換してくれたんだよ。だから安心してお湯に浸かってたんだ。瑞希はのれんを確認しなかったのかい?」
「私だってのれんくらい確認したわよ。きちんと赤ののれんに入ったもの」
この旅館ののれんの色は男湯も女湯も朱色です。のれんを確認しないで皆で入ってきたんだね。それだと僕は悪くない。被害者なのは僕だ。
「ここののれんは男湯も女湯も文字が変わっているだけで、のれんの色は赤だったよ。確認しなかったの?」
恵梨香姉ちゃんの声が聞こえる。
「だって、どこでものれんは男湯は青色、女湯は赤って決まってるじゃない。両方、赤色なんて聞いたことないわよ」
美咲姉ちゃんが叫ぶ。
「今、外を確認してきたけど、蒼ちゃんの言う通りよ。男湯って朱色のれんに書かれてたわ。私達が間違って入ってきたのよ」
楓姉ちゃんがクスクスと笑う。
「温泉に入っていたのが、蒼ちゃんだけで良かったね。どうせ入っているのは蒼ちゃんだけだし、一緒に入っちゃってもいいよね。蒼ちゃん目隠しされているし」
お姉ちゃん達は「そうだね」と言い合って、一向に出て行く様子がない。むしろ湯舟の中へ皆、入って来ているようだ。目隠しされているので、何も見えない。これって拷問じゃないの。
「絶対に目隠しは取ったらダメなんだからね」と瑞希が言って、僕にもたれかかる。反対側からも誰かがもたれかかってきた。そして「私は誰でしょう?」と聞いてくる。声でわかる。その鼻にかかった甘い声、そのおっとり感、楓姉ちゃんだ。それに僕と体を密着しているから、楓姉ちゃんの半端でない胸が僕の体に当たってる。間違いようがない。
「楓姉ちゃんです」
「蒼ちゃん、大当たりー」
楓姉ちゃんが嬉しそうに僕の体に寄り添ってくる。それを見たのだろう。瑞希も負けじと僕に密着する。ダメだ。下半身が暴走モードへ変身した。お湯から出られない。
「楓、やっぱり胸大きくなってるじゃん」
「やめてよ、美咲も恵梨香も胸を揉まないで」
恵梨香姉ちゃんと美咲姉ちゃんが楓姉ちゃんの胸を揉んでいるみたいだ。想像するだけでエッチだ。目隠しをされているので見えない。これは本当に拷問だ。僕だって・・・・・・見たいです。
堪らなくなった僕は立ち上がて、目隠しをされたまま、湯舟から逃げようと歩いた。すると瑞希が僕の下半身にすがりつく。
「蒼、せっかく一緒に温泉に入ってるのに逃げちゃダメ」
瑞希の手が滑って、僕の腰に巻いているタオルを掴む。そのまま引っ張られた。タオルがハラリと落ちる。
「キャーーーーー!」
僕は目隠しをされたまま、必死でタオルを探す。しかしタオルは見つからない。僕は体を回転させてタオルを探す。僕の暴走モードが全開でお姉ちゃん達の視界に入る。
「キャーーーーー!」
誰かがタオルを僕の股間に直接、押しつけた。僕は咄嗟にタオルごと、その誰かの手も一緒に股間を押える。
「蒼、私、蒼の、触っちゃってる。触っちゃってるよー」
瑞希だ。他のお姉ちゃん達でなくて良かった。僕はタオルから瑞希の手を放して、タオルを腰に巻く。しかしタオルがテントのように盛り上がっているのだろう。
お姉ちゃん達の悲鳴は続く。不幸だ。
近くで「私、蒼の、触っちゃた。触っちゃた、握っちゃた」と何回も呟く声が聞こえてくる。瑞希は今はパニック状態で使い物にならないらしい。そのことを大きな声で言わないでほしい。1番、恥ずかしいのは僕だから。
僕の手を持って、誰かが誘導してくれる。誰だかわからないけど、ありがとうございます。
「早く、蒼ちゃん、温泉から出よう、もう大変なことなってるよ」
凛姉ちゃんだ。僕は凛姉ちゃんに誘導されて、大浴場を出て、脱衣所へ向かう。
脱衣所を出たところで、僕は目隠しを外す。すぐに浴衣に着替えて、着替えをもって、出入口へ向かう。
大浴場の出入り口には、やはり朱色ののれんがかかっていて、白文字で男と書かれていた。このまま放置しておくと、訳を知らない男性が大浴場に入って、瑞希達の裸を見られる恐れがある。
僕はのれんを女湯に架け替えて、自分達の泊まっている部屋へ駆け戻った。