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59話 バレちゃった!!

 僕と瑞希はリビングで正座をさせられていた。目の前にはお姉ちゃんズが腕組みをして立っている。先頭の美咲姉ちゃんの目が怒りで燃えている。



「瑞希の部屋があって、瑞希の洗濯物があって、ペアの食器があって、ベッドに瑞希の残り香がプンプンしてたわ。確か、蒼ちゃん、独り暮らしのはずよね。これをどう説明してくれるのかしら」



 僕と瑞希は観念して、全てをお姉ちゃんズに話すことにした。僕が転校してから、瑞希の家の雅之おじさんと瑞枝おばさんにお世話になっていた事、そして、瑞希がその頃から寝泊まりをするようになっていたことを説明する。



 凛姉ちゃんの眉がピクピクと動いているが、まだ無言のままだ。



 明日香と父さんの墓地で再会して、明日香を引き取ることになった事、明日香が瑞希の家でお世話になることになり、瑞希の両親が、僕の家で瑞希と同棲することを許したこと。それから学校にも皆にも黙って、同棲生活を続けていたことを話した。



 美咲姉ちゃんが冷たい目で僕達を見る。



「私達にも黙って、2人で同棲生活をしていたってわけね。付き合う前から何やってんのよ。順番がおかしいのよ。あんた達、わかってんの」



 確かに順番がおかしいです。申し訳ございません。凛姉ちゃんが厳しい顔で口を開く。



「同棲しているだけならまだいい。毎日、蒼ちゃんのベッドで一緒に寝ていたっていうことはどういうことかな? もしかするともう既に、2人は一線を越えてると考えてもいいのかな?」


「それはないです。絶対にしてません。僕が瑞希に抱っこされていただけです。最近まで瑞希のことを恋している自分に気づいていなかったから、隣のお姉ちゃんに抱っこされている気持ちで、気軽な気持ちで一緒に寝ていました。だからそれはないです」



 僕は必死に凛姉ちゃんに訴えた。凛姉ちゃんは無言で僕を観察している。信じていないようだ。当たり前だよね。



「瑞希はどうだったの? 蒼ちゃんは初恋の君だったよね。蒼ちゃんに恋してるのに我慢していたの?」



 楓姉ちゃんが優しい口調で瑞希に聞く。瑞希は顔を耳まで真っ赤にして、頬が熟したりんごのようになった。そして涙目になり、顔を手で覆う。



 恵梨香姉ちゃんが呆れた顔をして、楓姉ちゃんの顔を見る。



「そんなこと瑞希に言えっていうの。それは楓、あまりにも酷いよ。瑞希は蒼ちゃんが襲ってくるのを待ってたに決まってるじゃないの」



 僕は慌てて瑞希を見る。瑞希は両手で顔を覆ったまま、首の横に振ってイヤイヤをしている。



 美咲姉ちゃんが頬を膨らませた顔で、僕を見る。



「蒼ちゃんも瑞希のことを好きって、今なら自覚があるんでしょう。好きな女の子が隣で寝てるのよ。我慢してたの? 我慢できたの?」



 これは答えていいだろうか。黙っていたほうが僕のためのような気がする。ここは黙っていよう。



「・・・・・・」



 恵梨香姉ちゃんが呆れた顔をして美咲姉ちゃんの顔を見る。



「蒼ちゃんも年頃の男の子よ。普通なら、そういうことに興味津々な年頃よ。必死に我慢してたに決まってるじゃん。目の前に大好きな女の子がいるのよ。その子が無防備で寝てるのよ。男だったら襲いたいに決まってるじゃん」



 恵梨香姉ちゃん、皆が僕を変な目で見てるよ。誤解を生むようなフォローはやめて。それフォローになってないから。僕を追い詰めてるだけだから。



「確かに大好きな瑞希と寝てました。でも、スケベなことは考えてなかった。だって瑞希に抱かれていると気持ちよくて、すぐに眠っちゃうから、僕のほうが先に寝ちゃうから、そんなことを考える余裕もなかったです」



 美咲姉ちゃんは大きくため息をついた。



「まだ、一線は越えてなかったようで良かったわ。瑞希の両親はこのことを知ってるの?」



 瑞希はコクリと頷く。



「早く孫の顔が見たいって言われてる」



 お姉ちゃんズは全員、額に手を当てて、首を横に振った。その気持ちは僕にも十分にわかる。



 楓姉ちゃんが爆弾発言を投下した。



「いつ頃、赤ちゃんを作る予定なの?」



 はぁ、楓姉ちゃん、そんなこと嬉しそうに聞かないで。何を想像してるの。高校生でパパになるなんてイヤだよ。



 恵梨香姉ちゃんが楓姉ちゃんの頭をポンと叩く。



「楓、今、赤ちゃん可愛いだろうなって単純に思って口に出したと思うけど、その前にすることしないと赤ちゃんは産まれないのよ。わかってる?」



 楓姉ちゃんの顔が急に真っ赤になった。そこまで考えていなかったみたいだ。楓姉ちゃん、天然過ぎるよ。



 凛姉ちゃんが僕を指差して、真剣な目で見つめる。



「瑞希のご両親が許したとしても、私達が許しません。蒼ちゃん、瑞希。絶対にそんなことしてはダメよ。蒼ちゃんが大学生になったら、私達も許してあげる。それまでは、2人共、どんなことがあっても我慢しなさい」




「「はい」」




 それから後にお姉ちゃんズで話し合いが行われ、毎日1人は必ず監視のために僕の家に来ることになった。土日は休日だから、お姉ちゃんズも休みたいと言い出して監視はなくなった。



 こうして、平日は必ずお姉ちゃんズの1人が瑞希の部屋に泊まることになった。瑞希の部屋のベッドが使われていなかったからだ。



 しかし、お姉ちゃんズは僕達2人を引き裂くようなことはしたくないと言って、一緒に寝ることは許してくれた。瑞希の部屋と僕の部屋の間の壁は薄いから、変なことをすればすぐにバレるし、お姉ちゃん達が僕の部屋に飛び込んで来るということになった。



 瑞希は僕と離ればなれで寝ないといけないと覚悟していたらしく、お姉ちゃん達の意見を聞いた時に涙を流して皆に感謝をして僕を抱きしめて号泣した。



 お姉ちゃん達は、自分達の食器や衣類も僕の家に置いておくと言い始めて、瑞希の隣にある、今は使っていない客室がお姉ちゃんズの部屋となることになった。



 色々なことが決められていた。ずいぶんと時間が経って、日が沈んでからずいぶん経った。



「あー、家に帰るのがイヤになって来たな。面倒くさくなってきたなー」



 恵梨香姉ちゃんが伸びをしながら、そんなことを言う。すると美咲姉ちゃんがニヤリと笑った。



「私はもう、お母さんに連絡して、今日は瑞希の家に泊まるって言ってあるから大丈夫よ」



 僕、そんなこと聞いてないよ。それにこの家に布団の予備は1つしかないからね。



 楓姉ちゃんが僕の頭をポンポンと優しく叩く。



「今日は蒼ちゃんと一緒の家で寝るなんて嬉しいね。今日だけは楓姉ちゃんと一緒に寝ようか」



 瑞希が必死の顔で駆け寄ってきて、僕の体を抱いて、楓姉ちゃんがから距離を取る。



「楓、それだけはダメ。蒼は私の大切な人なの。とらないでー!」



 楓姉ちゃんがちょっぴり残念な顔をしている。本気だったのか。



 凛姉ちゃんはスマホを取り出して、自分の両親に、今日は瑞希の家に泊まると連絡をしていた。恵梨香姉ちゃんも自分の家に連絡をしている。楓姉ちゃんもスマホを取り出した。全員で僕の家に泊まる気だ。



 瑞希が自分の家に連絡して、雅之おじさんと瑞枝おばさんに、今日は蒼の家に友達が集まって泊まると説明をしている。そして布団を貸してくれるように頼んでいた。返事はOKだ。



 スーパーへ僕、恵梨香姉ちゃん、凛姉ちゃんが夕飯の買い出しに行った。凛姉ちゃんは夕飯の担当で、恵梨香姉ちゃんがお菓子の担当だ。そして僕は荷物持ちになった。



 僕達がスーパーから帰ってくると、さっそく瑞希と楓姉ちゃんが夕飯の用意を始めた。2人の料理の腕は絶品だから、安心して任せていられる。



 お姉ちゃん達は瑞希の部屋に1人づつ消えていくと、私服に着替えて戻ってきた。楓姉ちゃんだけ胸がパツンパツンで今にも弾けそうだ。瑞希も胸は大きいはずなのに、楓姉ちゃん、どれだけ胸が大きいんだよ。



 僕、美咲姉ちゃん、恵梨香姉ちゃん、凛姉ちゃんで隣の瑞希の家に行って、布団を借りてきた。すると何を思ったのか、明日香も手伝ってくれて、僕の家まで布団を運んでくれた。



 しかし、明日香はそのまま家に帰れなくなった。お姉ちゃんズは僕に似ていて、それで中学生美少女の明日香のことを一目見て気に入ってしまった。明日香は皆から抱きしめられたり、ナデナデされたり、頬にキスをされたり、明日香は涙目になり、僕に助けを求めているが、お姉ちゃん達の暴走を僕が止められるはずがない。



 それに明日香が居たほうが、僕が玩具にされなくてすむ。ここは犠牲になってもらおう。明日香ごめんね。



 今日の夕飯はハンバーグカレーだった。皆で「いただきます」と言って、食べていく。さすが瑞希と楓姉ちゃんだ。すごく美味しい。僕はおかわりをした。恵梨香姉ちゃんと美咲姉ちゃんもおかわりをしている。



 皆で順番にお風呂に入ることになった。人数が多いから2人1組でお風呂に入ることにする。僕が一番最後だ。明日香は楓姉ちゃんに気に入られて抱き着かれている。



 2人1組でお風呂に入っていると、風呂場から「キャーーー!」という美咲姉ちゃんの声が聞こえる。美咲姉ちゃんと一緒にお風呂に入っていたのは瑞希だ。



 美咲姉ちゃんがバスタオル1枚巻いた姿で飛び出してきた。



「瑞希、瑞希の胸元にいっぱいキスマークがー」



 お姉ちゃんズは慌てて、風呂場に集合した。しまった。瑞希の鎖骨や胸元にキスマークを付けたんだった。見つかった。ヤバい。



 瑞希と美咲姉ちゃんが着替えて、風呂場からあがってきた。美咲姉ちゃんの顔が真っ赤だ。耳まで赤くなってる。



 僕と瑞希は正座をさせられた。僕達は遊びでキスマークを付けて、お互いのモノの証と言って遊んでいたことを正直に話した。凛姉ちゃんは僕の首に貼られていたファンデーションテープを発見し、勢いよくそれを剥がした。




「キャーーーー!」




 お姉ちゃんズから、奇声があがる。



 僕の首には10以上のキスマークがあったからだ。



 お姉ちゃん達は呆れた顔で瑞希の顔を見ている。瑞希は両手で顔を覆って俯いている。



 凛姉ちゃんに「こんな危険な遊びはやめなさい。こんなことをしてたら止められなくなるわよ」と説教された。



 しかし、僕のキスマークを見て、一番驚いていたのはお姉ちゃん達ではなかった。明日香がバッチリ見ていた。明日香は「蒼お兄ちゃん、不潔ー」と言って家を飛び出していった。瑞希の家に戻ったんだろう。



 しばらくすると、雅之おじさんと瑞枝おばさんがニコニコと嬉しそうにやってきた。明日香は2人の後ろに隠れている。



 2人は「やっとその気になってきたみたいだな」「早くお孫ちゃんの顔が見えるわね」と大喜びしていた。



 雅之おじさんと瑞枝おばんさんは、お姉ちゃん達に正座をさせられて、説教をされている姿を僕は黙って見ているしかなかった。雅之おじさんと瑞枝おばんさんは十分に反省して家に帰っていった。



 それから後は夜中までお姉ちゃん達のおしゃべり大会が繰り広げられ、それに参加した明日香は次の日に中学を休むことになった。

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