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レベル?100だぜ。……二進数に直せば。  作者: 枇杷
第一章 キチとの遭遇
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第一話 終末戦争を超えて

初投稿です。

 雨が激しく窓を打っている。

 それはまるで世界が叫んでいるようだった。

 俺に、世界を救ってくれ、と。


 俺は世界の情勢を把握すべく、テレビを観ていた。


 『台風18号は間もなく愛知三重に上陸すると思われ、既に避難を済ませている住民の方も……』


 ふむ。

 ここ、愛知県一宮市も危ないかもしれないな。

 と、今度は家の外からなにやら聞こえてきた。


 『愛知県全域に……避難勧告が……発令されました……。お伝えします……愛知県全域に……避難勧告が……発令されました……』


 とうとうここにも手が及んできたってわけか。

 一体どれくらいの状況なんだろう。

 道路が川になってたりするんだろうか。


「マザー、俺ちょっと川の様子見に行ってくるよ。……マザー?」


 返事がない。

 と思ったら今日は仕事が遅くなるっていってたな。

 まあいい、行ってくるとするか。



 



 幸い、道路はまだ冠水していなかった。

 俺は傘をさし、堤防へと向かった。

 川は俺が危惧した通り、激しい濁流となっていた。


「そうか、俺は終末戦争(ラグナロク)を止められなかったのか……」


 ふと、そんな声が漏れてしまう。

 いや諦めてはいけない。

 俺が神とコンタクトを取れればまだ望みはある。


 いやしかしすごい流れだな……。

 もうちょっと近くで見てみよう。

 堤防から少し降り、川縁の石に足をかける。

 ここならよく見えそうだ。

 

 そう思った時だった。


「ぬわっ!!」


 足を滑らせた。

 迫りくる波はやけにスローに見えた。

 結局俺は、奮闘むなしく終末戦争で華々しく命を散らしてしまった。


 ——かに思われた。



 ★☆★☆



 目覚めると森だった。

 木が生い茂り、森の独特の匂いがする。


 「あれ、ここは……」


 確か俺は終末戦争(ラグナロク)を止めようとして、荒れ狂う水流に自ら飛び込んだんだったな。

 なのにどうして森にいる?

 一宮から下流の地域に森なんてあったっけ?


 一人で悩んでいると、目の端に何か生き物が映った。

 ウサギだ。

 いや、ウサギか? 二足歩行してるんだけど。

 さらに言えば服を来てずきんをかぶっている。

 野いちごを摘んで、バスケットに入れているようだ。

 シルヴァ◯アファミリーみたいだ。


 さすが一宮、不思議な街だ。


 さて、そろそろ動かないと。

 雨はもう止んだようで今は快晴だ。

 とりあえず、誰かに電話を借りよう。


 俺は歩いた。

 歩いた。

 さらに歩いた。

 だが森から出られない。

 どうなってんの……。

 考えられるのは、俺を恐れた何者かが幻術をかけたか、森が広いかだ。


「おそらく前者だな」


 ま、これほど大規模な幻術だ。いずれ自然に解けるだろう。

 俺は世界トップクラスの魔術師であると自負している。

 学校の友人にも『そうだな。お前なら三十路にもなれば立派な魔法使いになれるよ。ププッ!』と言われているのだ。

 ちなみに今は17歳だ。


 と、ここで俺の耳の鼓膜が特徴的に揺れた。

 何かが走ってくるような。そんな音だ。

 なんとなく音の方を目指していると、すぐに道が見つかった。

 道、というか草木の生えていない帯状の地面、といったほうが正しいけど。


「おお! ……って、え? 馬車?」


 近づいてくる音の正体は馬車だった。

 なんとなく俺は条件反射的に草陰に隠れた。

 馬車は俺がいる近くで止まった。

 俺に気づいたのかと思ったが、どうやら違うようだ。


「捨てるやつはどれだ?」

「これだな。これは街までもたねえ」

「チッ、こっちは金払って仕入れたってのによぉ」


 男の声が聞こえてくる。

 その後、馬車から出てきた男の一人が何か荷物を森に投げ入れた。

 そして声をかける間もなく走り去っていった。


 不法投棄とはな。

 奴らめ、法を犯したか。

 それよりも着目すべきは、今捨てた荷物が街まで持たないってことはここから街まで結構距離あるってことだよな。


 そして今更ながら認めないといけないことがある。

 

「ここ、一宮じゃないわ」

 

 サバイバルしなきゃいけないっぽい。

 でも大丈夫、俺は無人島へ行くシミュレーションなら授業中に何度もした。そしてその全てで生き延びているのだ。


 まずは食料の確保だな。

 さっき捨てられた荷物はたぶん生鮮食品なんだろう。

 日持ちしないみたいなこと言ってたし。貰っておこう。


 だが、捨てられた荷物の方へ行ってみるとそれは食べ物ではなかった。

 食べ物などではなく、


「……これは」


          ——人だった。

 

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