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第6話 変化

男はゆっくりと時間をかけて今の状況を整理する。

本当に目の前にいるのはNPCなのだろうかと。

本当に触れることができるのだろうかと。


男は確認をしたかった、確証を得たかった。

男はNPCと自称するマスターに話しかけた。


「すいません・・・ちょっと試したいことがあるのでいいですか?」

「おう、なんだい?」

「では・・・失礼して」


男はマスタの手をぎゅっと握った。

やはり、触った感触が確かにそこにはあった。

間違いない、触れることができるのだ。


「いや・・・試すって言われてもなぁ・・・?」

「えっ?」

「いやぁ~こんな所で恋人繋ぎはちょっとなぁ~?噂になっちまうよ?」


マスターは顔を赤くして恥ずかしそうにしていた。

そして男は自分が一体何をしているかについて気付く。


「ああっ・・・すいません!すいません!すいません!」

「悔い改めて。でもこれで俺がホモじゃないってことは証明されたよなぁ?」

「えっ・・・あ、はい!」


男はついに確信した。

このゲーム「夢」はクソゲーなんかではないと言うことを。

むしろ、男達が求めていた理想がここにあると言うことを。

このゲームはおっぱいに触れることができるのだと言うことを。


男はこのゲームで起きた全てのことを受け入れることに決めた。

このゲームではおっぱいに触れることができて、人間と変わらない会話ができるNPCがいて、オフラインで他のプレイヤーからの視線を気にすることなく自由にプレイができる。

なら、おっぱいを触るために男に出来る事はなんだろうか

どうすればおっぱいにおっぱいが出来るのだろうか


「それじゃあな!まぁ、ゆっくりとくつろいで行ってくれ!」


マスターは他の客の相手をしようと移動しようとする。


「ちょっと待ってください!もう少し話をしたいんだ!」

「お前ホモか!(歓喜)」

「違います!・・・えーっとあの、その」


聞きたいことは山ほどある中、男は何を一番聞きたいのかを必死に考える。

そうして、男は一つの結論を出した。


「またおっぱいに触るためにはどうすれば良いですか!?」

「お前ノンケかよぉ!?(驚愕)」

「違います!・・・って、違いません、ノンケです。で、どうすれば良いですか!?触りにいこうと思っても逃げられちゃうんです!」

「初めは大人しそうだと思ったがなんというか随分アグレッシブな奴だなぁお前」

「で、どうすれば!」

「まぁまぁ、落ち着けって!え~っと、まず逃げられるのは当然だろう?変態なんだから」

「あっ・・・はい」

「つまり変態と思われている間は逃げら続けるって訳だ。魔王とか討伐しても英雄であると同時に変態と思われ続けられるだろうからストーリーをクリアしたっておっぱいには触れないとは思うな」

「そうですか・・・」


魔王を討伐すれば状況が変わると男は思っていたがどうやらそう上手くいく訳ではないと少し落胆した。

しかし、その絶望よりも希望の方が今は大きいと考えていた。

情報を得られる絶好のチャンスを今目の前にしている為だ。


「なら、どうやれば良いのでしょうか・・・」

「あー・・・そうだなぁ。俺は一つはその方法を知ってるぞ?」

「なっ・・・教えてください!!」


男は立ち上がり今まで出したことがないと思うくらいの大声を出してしまった。

周囲の客からの目線を感じ恥ずかしくなって席に座る。

相手はNPC・・・敬語なんて使う必要もないし、例え今ここで裸踊りをしたって恥ずかしがる必要はないのだがあまりのも現実と変わらないリアルさに恥ずかしさを抑えることができない。


「でもなぁ~・・・タダで教えてくれって言われてもなぁ?」

「お金、ですか。今手持ちに持っている有り金は全部で10万ゴールドくらいです。それで教えてくれないでしょうか?足りないならばもっとモンスターを狩ってきます。いかがでしょうか?」

「いやいや・・・そんなデータでしかない物もらってもなぁ?」


いくら人間と変わらない会話ができるNPCとは言え、身も蓋もない事をマスターから言われてしまう。

ここではお金対して価値がないのだろうか、それともこのマスターがNPCの中では特別なのだろうか・・・男は普段は使うことのない脳をフル回転させる。


「今さ、この酒場は俺一人でやっていて人手が足りてねぇんだよ」

「・・・それを僕が手伝えば良いってことですか?」


おっぱいを触ることができる情報の見返りはよくゲームあるようなクエストだった。


「いいや、ただ単に手伝うってだけじゃあダメだな!」

「・・・えっ・・・?」

「お兄さんが酒場の店員になってここの売り上げを上げるんだよ!俺が認めるまでな!」

「ええっ・・・?」


今までやってきたゲームのクエストは物を運んだり討伐したりと分かりやすいクエスト内容だが、マスターの依頼内容はとても曖昧なクエストだった。


「多分ダラダラやっても売り上げなんてそうそう上がらないし、売り上げなんてすぐに上がるものじゃない。かなり長い間大変な思いをすると思うがどうだ?」

「・・・」


男はこのクエストの本質が見えなかった。

これはクエストというよりサブストーリーか何かなんだろうかと考える。

だが、それだとおっぱいを触ること自体がサブストーリーに入っていることになる。

それだと最早、神ゲーを超えた神の中の神ゲーと言うことになる。

いや、そんなはずはない・・・上手く説明はできないが、これは何かのバグでそのままNPCのアドリブでここまで展開が進んでしまっていると男は考えた。


マスターの喋り方からしてこのクエストはとても大変だと言う事はひしひしと伝わってきた。

普段だったら絶対にこんなめんどくさいことはしやしない。

現実でも、ゲームでも逃げに逃げを続けてきた男は絶対にこんなクエストは受注しない。

だが、男には・・・美少女のおっぱいを触りたいと言う欲求があった。

全ての事から逃げてきた男だが、おっぱいからは逃げたくなかった。

例えどんな目に合おうともおっぱいだけとは向き合いたかった。

おっぱい!おっぱい!おっぱい!


男は決意した。


「そのクエスト、受けさせてください」


男は人生で初めて自分の意思を強く持って決意した。

男はついに自分から変わろうと決意したのだ。

おっぱいのために。


「ほぅ」


マスターは男の決意を目の前にしてニヤリとした。

まるで、こうなって欲しいと前々から目論んでいたかのように。

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