第2話 退屈な夢
まず初めに男の目の前に映る景色は何もない草原。
今の主流のVRMMOは初めにキャラクターのカスタマイズができたり職業が選択できたりする。
だがこのゲームにそのような選択はなく、いきなりフィールドに飛ばされた。
男はこのゲームに対しての第一印象は、不親切で手抜きなゲームだということ。
新規プレイヤーをがっつりとゲームに引き込むため、チュートリアルは親切丁寧に行われるのが普通だがそれが始まる気配がない。
男はとりあえず今の自分の状態について確認する。
服装は無地の白色Tシャツにジーパンと全くファッション性がなかった。
鏡がないので自分の顔が正確には分からないが手で顔を触ってみた限り恐らく現実の自分と変わらないだろう。
男はゲームの世界くらいイケメンになりたいものだと小さくため息をついた。
他のゲームでは性別は必ず現実と一致させなければいけないと法律で厳しく規制されているが、見た目なら変えることができる。
だがこのゲームは他の人間と接触することはないオフラインゲーム。
見えないし見られる事がないのならわざわざ見た目を変える必要はないのだろう。
男はとりあえず道なりにまっすぐ足を進めた。
しばらく歩くと一匹のスライムが現れた。
男は少し疑問に思う。
今まで数々のゲームをプレイしてきたが、ゲームに敵としてモンスターが出てくるゲームにはほぼ確実にスライムがいた。
そういったスライムは大体、青色で少しドローっとした誰もがイメージするスライムだ。
だが、男の目の前にいるスライムはサッカーボールくらいの大きさの水色で透き通っていてとても綺麗だった。
まるで子供の頃に遊んでいた綺麗なビー玉を大きくしたようなスライムだった。
チュートリアルに使うにはもったいないレアモンスターみたいな雰囲気を出しているなと男は思った。
そのスライムはぴょんぴょんぴょんと勢い良く跳ねる。
そしてスライムは男に向かってゆっくりと跳ねながら体当たりをしてきた。
男は武器として右手に持たされているひのきの棒を使って迫ってくるスライムを迎撃する。
色々やってきたゲームの知識と技術を使ってスライムを簡単に迎撃することができた。
叩かれたスライムはコロコロと転がって男と距離が離れる。
そしてスライムはまたその場でしばらく跳ね、その後ぺこっとお辞儀みたいな動作をとって元気良く跳ねながらどこかへ行った。
そして男にわずかな経験値とお金が入手できたと伝える為に、目の前に画面が表示された。
ここらのシステムはそこ等の量産型ゲームと大した違いはなかった。
男はまた道なりに足を進めた。
ゲームを開始して10時間程たった。
食事も休憩もせずにこのゲームをやった感想は"普通"だった。
街に到着してクエストを行いモンスターを狩ったり、お使いをしてお金を得る作業を繰り返した。
システム的にもストーリー的にもありふれた王道RPGだったのだ。
ただ、他のゲームとは違い街の人達は全てNPCでありそこに魂はない。
モンスターの戦闘も剣や魔法を使って戦うのだがありふれた戦闘システムで淡々と行う。
このゲームに特徴と言える特徴がないのだ。
全てが"テンプレ"で全てが"王道"で全てが"少し古い"
良く言うと、小学生がやる初めてのゲームにうってつけのゲーム。
悪く言うと、ゲーマーにとっては何もかも物足りないゲーム。
クソゲーには必ずプレイヤーを嘲笑させたり、または怒らせるクソな要素があるがこのゲームにはそれすらもない。
では、何もない所謂"ゲー無"なのかと言われるとそうでもない。
しっかりと作りこみはされており手が抜かれているという感じはしなかった。
クソゲーレビューをする為において一番レビューしにくいタイプだったのだ。