第11話 陽菜ちゃん
男は何もない草原に突っ立っていた。
男はとりあえず今の自分の状態について確認する。
服装は無地の白色Tシャツにジーパンと全くファッション性がなかった。
世界がリセットされたのを男は確信した。
「うあああああああああああああああああああああ!!!!」
男は声をあげて号泣する。
もう、マスターや女の子の記憶はリセットされているだろう。
だけど、この思い出だけは聞いていた通りリセットされていなかった。
男は泣いて泣いて声が枯れるまで泣いた。
ぴょんぴょんぴょん!
しばらく呆然としていると目の前にスライムが元気良く跳ねていた。
1年ほど前だろうか、飲み物をくれたスライムだった。
「飲み物くれてありがとな・・・君は覚えてないだろうけど」
男はそのスライム優しく撫でる。
ぴょんぴょんぴょん!
しばらく撫でていると、スライムはいつもと同じように跳ねてどこかへ消えていった。
スライムのおかげで少し気分が落ち着いた。
「うひょひょひょひょひょ~~!!」
今日はどの女の子をターゲットにしようかなぁ~?
あの子は前触ったしな~あの子にしようかなぁ~?
世界がリセットされたおかげで女の子のおっぱいを揉み揉みすることができた!
だけどそれは一回きりしか使えずわずか1~2秒揉み揉みするのが精一パイ!だった!
そして同じように変態扱いを受けて警戒されてしまう。
その度に女の子に頼んでまた世界をリセットする。
やっぱりだが、マスターや女の子に僕と関わった記憶はなかった。
リセット以降、僕はマスターと女の子に対しては最低限のやり取りしかしなかった。
・・・どうしても長く関わることができなかったのだ。
さて暗い気分を変えて、おっぱいを揉む方法について説明しよう!
僕のレベルが低すぎると女の子に上手く接触することができないので少しレベルアップの作業をしなければいけない。
上手く効率化して8時間に1回、僕はおっぱいもみもみタイムチャンスが巡ってくるのだ!
上手く行けばおっぱいに顔をうずめたりアプローチの仕方を変えて下から覗き込んでパンツを見ることもできた。
だが、それ以上の事ができない。
試しにおっぱいを揉まずに魔王を倒してみたが、どうがんばってもやっぱり揉めるおっぱいは1~2秒程度だった。
つまりどう工夫をこらしても一瞬しかエッチな事はできない。
何でもしていいのだったら無理矢理力ずくで女の子に乱暴する?
それはナンセンス!
僕は間違いなく幸せを満喫している!
僕は居酒屋を辞めて、英語の語学力を上手く駆使してかなり良い大学に進学した。
年齢は他の大学生に比べて一回り年上だったが、気にはしなかった。
険悪だった両親と和解することができ、友達も多くできた。
そして現実世界を絶対に怠らないようにしつつ、空いた時間はこうやっておっぱいもみもみに費やしている。
「おぉ~・・・いたいた!」
しばらく街を歩いてようやく見つけることができた。
今回のターゲットは金髪ツーサイドアップでピチピチのJKくらいの女の子だ!
そして彼女の姿はスク水黒ニーソ・・・恐らくこのキャラにこの服装を選択した人間は神の領域に達している。
「へーいそこの彼女ぉ~!」
「げっ・・・」
ナンパ師のようにその女の子に近づく。
今回もいつものように王道の方法でやろう。
あのスク水越しから分かるおっぱいとおっぱいの間に顔をおっぱいおっぱいしたい!
「はぁ・・・いよいよ、私が狙われるのね・・・」
「えっ?何か行ったかい?」
「い・・・いえ!何も!」
その金髪の子は何か言ってたが聞きそびれてしまった。
まぁ、大したことではないだろう!
「君ぃ~名前は何て言うんだい?」
「・・・陽菜です」
「そうか、そうか陽菜ちゃんかぁ~!」
陽菜ちゃんと色々話してみたいが僕の欲求を抑えることができない!
理性を抑えて感情を解き放つのだ!
「それじゃ~早速失礼して~」
「や・・・やだぁ・・・」
「おや?」
陽菜ちゃんは一歩後ろに引き下がった。
今まで数十人近くの女の子を揉み揉みしてきたが実行する前に距離を取られるのは初めてだった。
ちょっと調子に乗りすぎてしまったのだろうか?
「え~・・・ん~・・・」
おっぱい揉み揉みの前に拒否されてしまった・・・これを無理矢理実行するのは僕のポリシーに反する。
「じー・・・」
陽菜ちゃんはまるであの女の子なジト目の目線を送ってくる。
ああっ・・・これはこれで素晴らしい。
「はっ・・・ははは」
笑って誤魔化してみるが、陽菜ちゃんはジト目のままだった。
「今、私のおっぱいを揉もうとしたでしょ?」
「ええっ!?いや・・・その」
これはいつもの変態と罵られて逃げられるパターンか。
初めて失敗してしまったなぁ・・・次がんばろ。
だが、そんな予想に対して陽菜はちゃんは冷静だった。
「おっぱいを揉むだけで・・・満足なの?」
「えっ?」
ごくりっ
僕は思わず唾を飲んだ。
まさかこんな展開になろうとは思っても見なかったからだ。
「あっ・・・いや・・・君が考えているそういう意味じゃなくて・・・!」
陽菜ちゃん自分の言った意味を理解したのか、顔を真っ赤にさせた。
「見ず知らずの女の子のおっぱい揉み続ける事が君の人生の最終目標で良いのかって意味よ?だって、これゲームだからセーフだけど現実世界だったら犯罪でしょ?」
「えっ!?」
今まで関わってきたNPCは、人間と違いが分からないほどの会話はできるがメタな発言はしない。
試しにここはゲームの世界で現実世界は別にあると言ってみても笑われたり頭の心配をされるだけで終わる。
NPCの中でメタな発言をする例外なNPCはマスターとあの子だけだったのだ。
もしかして、この子も何か重要なキャラクターなのだろうか。
「つまりね、そんな器の小さい人間で終わらずにもっと大きな器になるべきだって言いたいのよ」
「う~ん・・・」
陽菜ちゃんの言っていることを考える。
確かに陽菜ちゃんの言うとおりだ。
僕は今の現状に満足して停滞してしまっている・・・
生きている限り、どんどん次のステップに昇り続けていかなければいけないのだ。
「もし、僕がもっと成長したら今以上のエロいことができるのだろうか・・・」
「君がどんなに成長してもやっぱり原動力はエロなのね・・・」
「う~ん・・・」
「君が成長したら出来るんじゃない?もっとエッチなこと・・・」
「本当に!?本当なんですか!?」
「えーい!がっつくな!また変態認定されたいのかー!」
「教えてくれ陽菜ちゃん!僕はもっと成長しなければいけない!」




