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プロローグ

 「おや~?てっきり全部始末していると思ったのだけど、こんなところに生きてる奴がいるじゃないか」

 耳を疑うような場違いな嬉々とした声が聞こえる。女の声だ。まるで誰かに言い聞かせているようであるが、この場に言い聞かせる者など、一人を除いて、いるはずもなかった。

 重く閉じられている瞼を開けようとしたものの、視界は細く、一向に開かなかった。目を開ける力さえ残っていないようだった。

 ――くそっ…………。

 そのことが、消えていく魂の奥底に感情と記憶とともに落ちたはずの自分の無力さに対する瞋意を蘇らせる。瞋意の炎はわずかに残った意識を掻き上げた。

 「ほ~。坊や、悔しいかい?」

 ぼやけた僅かな視界に女の顔が入った。いや、女の顔らしきものだろうか。それが人の顔だと認識できるかできないぐらいに輪郭がふやけていた。しかし、発せられた声だけは鮮明に知覚できた。まるで直接脳に声を流し込まれているようだった。それは妖艶でありながら、どこか心を落ち着かせる声だった。瞋意の炎が萎んでゆくのがありありとわかった。

 ――誰なんだ?

 心を読むこの者は一体誰なのかという疑問が瞋意に代わって頭の中を満たしていった。

 「ふふっ。私はノエル・ロロノア・ルネッサ。ノエルと呼んでくれていい。死の匂いがぷんぷんするこんなところに何故女がいるか不思議かい?教えてもいいけれど、取引はどうかい?」

 視界はぼやけているはずなのに、玩具を手に入れた子供のような笑みを浮かべたノエルの顔が脳裏に浮かんだ。

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