金平糖
ビルと国道に囲まれ、駆け回るスペースすらなく、申し訳程度にひょろ長い木が数本植えられた小さな児童公園。
すでに人の影はない。
その根方にぽつりと置かれたベンチに私は座った。ひどく軋む。
ぼんやりと周囲が暮れていくのを眺めながら、溜息をついた。
S町の公園に子供の幽霊が出るという話を深夜ラジオで偶然聴いたのが先月のこと。まさかという思いと、もしかしてという思いが、結局、私をここに連れてきた。
夕闇は更に濃くなる。国道を走る自動車のヘッドライトすらここには届かない。
やはり帰ろうかと腰を上げたとき、滑り台の下でうずくまっているその子に気づいた。泣いているのか、膝に額をおしあてている。
私は近づいた。
幼い少女。まだ幼稚園くらいか。
心臓が無闇に踊る。まさかそんなはずはない。私の呼びかけはみっともないほどうわずった。
少女はゆるゆると首をもたげる。
間違いなく妹だった。
二十年たった今でも忘れられない顔。その目は暗い。穴のようだ。
私はポケットから出した小袋を、妹の目の前で逆さにふった。さらさらと色とりどりの金平糖が零れていく。
暗い目に光りが灯り、少女は手を差し出した。
さらさらさららと零れる金平糖。
あの日。野球の約束をしていた私は、この公園に妹を置き去りにした。帰りに金平糖でも買ってきてやるから待ってろと言い捨てて。
妹は一人で遊びながら私を待ち、なんのはずみか滑り台の上から落ちて死んでしまった。たった四歳だった。
そして、待っていた。二十年もずっとここにひとりで。
無心で受け止める少女はいつしか消えていた。
私の足元に無数のそれらが落ちている。
さらさら、さらら、さらさら。
金平糖を風が吹き散らし、どこかへと連れ去って行った。




