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あらあらかしこ  作者: 麦飯とろろ
読者投稿怪談 掲載作品
11/14

テーマ:黒

 コンビニを出ると、傘立てに僕の傘がなかった。

 さしてきたのは、透明のビニール傘。

 でもそこにあるのは、黒い傘、一本だけ。

 振り返った店内には、退屈そうな店員しかいない。

 昨夜から降り続く雨はまだかなり強くて、濡れていくのはためらわれた。

 しかたなく僕は、一本だけ残っている傘を手にとった。物々交換だと思おう。

 傘は手開き式。こうもり傘とでもいうのか。穴もあいていなければ、骨も折れていない。ハンドルもシャフトも木製で、しゃれている。

 最初はもうけたような気がしていたが、すぐにいやになった。

 さして歩いてみると、この傘。ひどく重い。シャフトが肩に食い込んでくる。

 途中、ドラッグストアの前で僕は足を止めた。

 明るい店のネオンに照らされて、足下の水たまりに黒い傘をさした僕が(うつ)っている。

 その傘の上になにか、丸いような()()が乗っているように見えた。

 ロールシャッハテストのような不確かな影絵。

 香箱の猫。

 体育座りの人。

 頭が大きすぎるダルマ。

 うにうにと姿の定まらない影絵をにらむ僕の手の中で、傘の重さはいやます。

 店内から流れてくる冷房が背中をひやひやなでる。

 僕はゆっくりと傘を足下におろした。露先からしずくが流れ落ちる。

 黒い()()には、(まる)く転がる雨粒。

 ただ、それだけ。

 僕はゆっくりと傘をたたんで、店先の傘立てに押し込む。そしてドラッグストアに入り、百円のビニール傘を買った。

 店から出れば、相変わらずの雨。

 傘立てに黒い傘。

 僕はそれを見ないようにして、買ったばかりの傘をさして帰った。

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