赤鷹のカエデ
よろしくお願い申し上げます。
sid カエデ (楓視点)
─── ピィーーーッヒョロロローーー
私達が歩く真上の空を優雅に、そして楽しそうに飛ぶ鷹のラウ。私と契約している魔獣で炎の魔法が使える。ラウの種族の特長は山で生きる性質で、今まで旅をして来た地は山が少なく森や林が多かった為、とても喜んで居ることが分かる。しかし、もう直ぐ新天地の国境だ。見知らぬ魔獣が近づいているとそれだけで駆除の命令が出る可能性も0じゃない。その為私はラウを呼び戻す。
─── ピィーーーーーッ
私が指笛を吹くとゆっくりと旋回して、私の手首の腕輪の上に乗る。
「ラウ?あまりハメを外さないでね?もう直ぐカルマの国境だから、攻撃されても文句言えないよ」
私が泣きそうな顔で語りかけると、ラウが反省をする声を発した。
『そうであった……。すまぬ主。』
─── か……かわいい!
あ…違う違う。
私の心配そうな顔を見て、しゅんとしたラウは心の底から反省している様だ。
ラウがあまりに落ち込んでいたので思わぬフォローが入った。
「そう言うなカエデ。ラウも久々の山越えで嬉しいんだろう」
アルギスのフォローにラウの体が若干揺れて、チラリとわたしの方を見たがあえて私は話を続けた。だって本当に心配なんだもの。幾ら魔法が使える魔獣だとしても不意を付かれて怪我したら悲しいじゃない。
「分かってるけど、心配なんだもの」
そう答えたらアルギスからは呆れ顔をされ、ラウは目を輝かせていた。
そんな私達を見て笑っていたセリアムが話に入って来た。
「クスクスッ……カエデはラウが大好きですからね」
「そうよ。ラウは私達の空の目だもの。ラウが居れば旅が凄い楽だもの」
セリアムの言葉にそんな事を返したら、ラウが体をくねっててれていた。……鷹って体くねれるんだ……。まぁラウが特殊なのかもしれないけどね。
ラウは言葉は何処ぞの武士?風で声は5歳位の男の子の声をしている。何とも個性がある子だ。私とラウが出会ったのはラウがまだ幼獣のころ。あの時、ラウに出会わなかったら今頃私は……。
「そうよ。ラウが居なければ今の私はなかったかもしれないもの……」
そう思わず口にしてた。アルギスやセリアムには聞こえてなかったみたいだからよかったけど、ラウには聞かれてしまったみたい。
ラウは頭を擦り付けてきたから。
『主。もう直ぐ国境を超えるだろ?町に着いたら山の依頼を受けて下され!それならばいいだろ?』
そう無邪気に言って私の気持ちを上げようとしてくれる。
「そうよ。うんうん。いいよ町に着いたらね」
本当にラウは私の宝物よ。アルギスやセリアム他に今は別行動をしている3人の仲間達は私にとって本当に勿体無い位の仲間よ。だから私は彼等の為にそして自分の為に冒険者をやるの。───── まぁラウのお願いは単に山を飛び回りたいってだけだろうけどね(笑)───── この旅が終わってもこんな風に付き合ってくれるかな。
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