亭主の不倫?
「奥さん、私と一緒に逃げてください。一からやり直しましょう」
「でっ、でも私には主人と子供が・・・・・・」
「関係ないですよあんなやつっ、自分だって今頃会社の若い娘とよろしくやってるんだ」
「えっ?そっ、そんなっ。私は騙されてたの?」
――女と男はどうなるのか、何も知らない旦那と子供たちは・・・・・・
次回最終回「そして夜空へ」
「はー、おもしろかった。あんな旦那なんか捨てるべきよね。だっておかしいわよ、若い娘とちゃらちゃらやって、奥さんが可愛そうだわ。そうよっ、いつだって男って勝手よ!」
ピ・ポ・パ・ポ・ピ・・・・・・プルップルーップルップルーッ
「はい、ありがとうございます、高山物産です」
「(この娘?)あっ、いつもお世話になっております、山倉の家内ですが、主人はおりますでしょうか?」
「はい、少々お待ちくださいませ」
「......もしもし?信子さん?」
寛治は何かあったのかドキドキしながら電話をとった。
「もしもし?あなたが会社の若い娘とちゃらちゃらやるっていうならこっちも考えがありますからねっ!」
信子は感情的に言い切った。
「ちょっ、ちょっとなんのこと?信子さん何かあったの?」
突然の事に何が何だか分からない寛治は動揺しながら聞いた。
もしかして、何かとんでもない事がばれたのか・・・・・・
「なっ、なんのことって・・・・・・え?ドラマ? 」
「もしもーし!もしもしっ?信子さん?」
「はいっ、はい」
「どうしたのさっ?」
「いえ、あのぅ、ドラマを見てまして、で、ちょっと興奮してしまった感じです」
信子は赤くなった頬に手を当てながら天を仰ぐ。
「あっ、あはははっ、またあのドラマ?夜空の恋人だっけ?そんなに面白いんだ」
何事かと驚いた寛治は安心して笑みがこぼれた。
「はい、あの、今日は早く帰ってくるんですか?」
信子は顔を赤くしながら聞いた。
「えっ?あぁ、今日は同僚の吉村君と一杯やって帰ろうかなと思ってね」
「はっ?なに?」
「いや、同僚のよ・・・・・・」
「えっ?なんですか?ちょっとおかしな事しか聞こえてきませんが」
「あっ、ああ、ど・う・りょ・う・のっ、吉村・・・・・・」
「はあっ?ちょっと分かりません。電波が乱れておるようですが、心の電波が」
「いや、でもたまには」
「約束破ったらどうなるんでしっけ?実家行きのタクシー手配しましょうか?えっ!」
「はっ、はい、一気に飲んで特急に乗ります」
「だーよね?」
門限が19時の寛治には浮気をするチャンスなどあるはずもなかった。
「それでいいんだよ、山倉君」
恐妻家の大先輩、松井部長は茶をすすりながら細い目を更に細める。
そんな部長の門限は18:30(夕食のお使いの時間含む)。
定年まで後5年、男は黙ってやるしかない。
やるしかないんだよ。