愛してるって言ってみて(超短編)
「何かしゃべってみて」
「あ」
「ちがう、そうじゃなくって」
「なあに?」
「たとえば、好き、とか」
「じゃ、好き」
「う~ん、じゃ、が邪魔なんだけど」
「わかった」
「言ってみて」
「好き」
「うん、結構いいかも」
「好き」
「うん、さっきよりいいね」
「好き好き好き好き」
「あははは、すごくいい」
男は、聴覚だけで、結構グッとくるみたいだ。
「じゃあ、今度、わたしの番」
「なに?」
「愛してるよ、って言ってみて」
「え~」
「なによ、え~って」
「愛してるって、言いにくくない?」
「いいから、言ってみて」
「......ううう、恥ずかしくて言えない、」
「いいから、ほら」
「あ、あいしてる、よ」
「なんか、演技くさい」
男には、「愛してる」は、ちょっと重過ぎる。