待ち合わせ
「いってきま〜す。」今日は“あの子”と会う日だった
「行ってらっしゃい、ところでお昼はどうする?」
「う〜ん…、どっかで食べてくるからいいよ。じゃあ」
親もこのことを知っているので、特に何も言ってはこない
「今日はいい日だな。」そして歩き始める
二十分くらい歩ったところで、足を止める
「公園……か」
誰もいない公園に、吸い寄せられるように入って行き、噴水の淵に腰を下ろす
「久しぶりだな。」“はい、お久しぶりです。”
「俺、ここに来るのがずっと怖かったんだ。」“そうですか…”
「ここは、お前に初めて会った場所で、お前と最後に別れた場所だからな。」
“私はずっと会いたかったですよ?会いに来てくれるのを待っていましたから。”
「そういえば、俺ってまだお前に『返事』言ってなかったよな。」“えぇ……”
「俺、やっぱりお前のこと好きだったんだ。今なら言えるのに、一年前にいえなかったなんてな……。
バカだよ、俺。離れ離れになって気付くなんてさ。こんな俺の事なんか嫌いになっていいんだぞ。」
“そんなことないですよ、とても嬉しいです。”
「………………。」“どうかしたんですか?”
「うん、そろそろ行くか。」“はい!”
商店街に来たところで、顔見知りに会った
「あら、奇遇ね。こんなところで会うなんて。」「ああ、そうだな。」“お姉ちゃん!”
「考えることは同じって事かしら?」「ああそのようだ。凄い偶然だな、ホント。」
「それにしても、なんだか楽しそうじゃない。まるでデートを楽しんでる顔よ。」
「な〜に言ってんだよ。」“お姉ちゃん…そんな(ポッ)……。”
「ふふっ、冗談よ。でも、本当にイイ顔してるわ。少なくとも、ここ最近ではね。」
「そんなに浮かれているように見えたか?」
「浮かれているというよりは、まるで『肩の荷が降りた』って感じだったわ。」
「そうか……」
「まあ、ここで立ち話もなんだしどうせ行く先は同じでしょ?私は花でも買ってくるから、あなたは『あれ』でも買ってきてちょうだい。」
「了解。」“はい、では行きましょう。”
「ここの店も久しぶりだな。」“そうですか?”
「お使い頼まれた時以来だから、半年振りってとこかな〜。」
「いらっしゃいませ。」
「あっ、おじさんイチゴ大福1パックね。」
「はい毎度あり〜。」
「お前はこれが好きだったよな。」“はい、大好物です。”
「二日に一度は食ってたからな。太らないか心配だったよ。」
“そっ、そんなことありません!!”
「おっ、向こうも来たみたいだし行くとするか。」“あっ、待ってくださいよ〜。”
「待ったかしら?」「いいや、全然。」“私たちもさっききたばかりです。”
「じゃあ、行きましょうか。」「そうだな……」“なんだか楽しいですね。”
そして、目的地に着いた
「また……来てやったぞ。」「ほんと、あなたは幸せ者だったわね。」“そうですか?”
「だって、今でも貴方の事を好きでいてくれる人がいるんだもの。羨ましいわ……」
「なんちゅう事を言うんだお前は!!」“そうですよ、恥ずかしいですよ〜”
「あら、そんなこと言っていいの?まだあなたには言ってなかったけど、あの子は妊娠してたのよ。」
「なに〜〜〜!!」“え〜〜〜!!”「そ…そんなまさか……。でもあの時は……」
「あら?冗談だったんだけど、覚えがあるようね。」
「は、はめやがったな〜!!」「人の妹を食べちゃった人には言われたくないわね。」「くっ!!」
“お姉ちゃん……”
「でも、ほんとこんなイイ人を残して逝っちゃうなんて、あの子も罪な女よね。」
「ああ、そうだな。おかげで、未だに彼女が出来ないよ。」
「自信過剰もいいとこね。」
「そうか?肝心の振り向いて欲しい奴には、なかなか振り向いてもらえないんだけどな。」
「そう?」「ああ、いつまで『妹』に気兼ねしてるんだか…。それとも、まだ気にしてるのか?」
「そういう訳じゃないのよ。ただ、気持ちの整理がつかなくてね。」「ふ〜ん」
「私、あの子に何もしてやれなかったんだもの。命が長くないって分かった時から、私はすべて諦めちゃったの。あの子は、残された時間を必死に生きようとしたのにね……。あなたがあの子に魅かれたのも当然ね。」「まあな。でもあいつも気付いてたんだぞ、お前の気持ちは。」
「え!?」
「これ、あいつが死ぬ少し前に、俺に渡した手紙だ。自分がもし死んだら、お前に渡してくれってさ。
まあ、遺書ってやつだな。ちなみにこっちは俺の分。」
そういってポケットから手紙を取り出す
「中身はアイツらしい、最後までみんなの幸せのことが書いてあったよ。自分が死んでも立ち止まらずに、前に進み続けて欲しいってさ。お前のにはなんて書いてあるんだ?」
封筒を開け、中の手紙を取り出す
「ええ……」涙が……溢れてくる。
止まらない。どうしよう。
「ほんと、あの子らしいわね。最後まで……私には幸せになれって。……自分のことは気にするなって。 誰も悪くない、自分が悪いんだって……、私あの子にひどいことしたのに……ね…。許してくれるって……。」
「そうか……よかったな。他にはなかったか?」
「ん…秘密よ。」「なんだそりゃ。」「ふふふっ」「はははっ」“クスクスッ”
久しぶりに笑った。二人で…三人で笑った。一年前、三人で初めて出会った頃のように。
その声は空に吸い込まれていくようだ
「ねえ、もう少し……待っててくれるかしら?」
「ああ、いつまでも待ってるぜ。だけど、待たせすぎるなよ。」
「分かってるわ。ただ、もう少し気持ちに整理をつけたいの。あの子の気持ちともう一度向き合って、今度は後悔しないように。」
「ああ。そのときは聞かせてくれよ?もう不安でしょうがないんだ。」
「とか何とか言って、本当は自信あるんでしょ?」
「そんなはず無いだろ。俺はこう見えても臆病なんだ。」
「じゃあ、その反対側のポケットに隠してるのは何かしら?」「何のことかな?」
「とぼけてもダメよ。それは…」
「べつに、君にあげるとは限らないぜ。これは元々こいつにあげる物だったし。」
静かに石碑を見つめる
「一年前に渡しそびれたものだけど、何を今さらって怒ったりしないかな?」
「大丈夫よ、あの子だもの。」
「そうだな。遅れて悪かった、誕生日プレゼントだ受け取ってくれ。」
“わあ!!薬指にピッタリ。ありがとうございます、ずっと大切にしますね。”
「きっと喜んでるわね、あの子。」「ああ、きっとな。」
あいつとはたった一ヶ月程度の付き合いだったが、俺にとってかけがいのない人になっていた。それは今でも同じだ
でも、あいつは今はもう俺の隣にいない
今、俺の隣には…
「じゃあ行くか。」「ええ。どこに行く?」
「そうだな… とりあえず、おまえの指の大きさ教えてくれないか?」
「はぁ?」「買うときに困るだろ?」
「たく、自信過剰もいいとこよ。あの子の好きだったお店にでも行く?」
「あの店か?」「そうよ、たまには私も奢ってもらいたいし。いいでしょ?」
「仕方ない、行くとするか。ただしおかわり禁止だ。」
「あの子みたいに言わないで頂戴。私はそこまでがめつくないわ。」
「さあ、どうだか。」そして駆け出す
「あっ、こら、待ちなさ〜い!」
その時、ポケットから手紙が落ちた
下のほうにはこう書かれていた
“お姉ちゃん。私の分まで、あの人と二人で幸せになってください。”
と。
〜Fin〜
うわ〜!!書いた自分でも恥ずかしい文章ですね。
名前がないのは、皆さんに自分の好きな名前を想像してもらいたかったからです。
そのせいか、思ったよりもいい文章になったと思います。