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ようやくヒロイン登場です。

小悪魔系を目指してますがどうでしょうか?

「じゃましてるわよ」

ネクタイをほどきながら部屋に入ると、浩明の使っているベッドに横になり、同じく浩明の本に目を向けていた少女の声が浩明を迎えた。

「灯明時、また来てたのか?」

 主である浩明の部屋を我が物顔で入り浸っている少女。名前を灯明寺とうみょうじ なぎ、浩明と同じ青海高校の学生だ。ただ、浩明が普通科であるのに対して、彼女は魔術専攻科に属している。彼女には、家が隣同士なのだが、浩明が『普通科』だと言う事にあまり関心がなく、よく浩明の部屋に入り浸っているというある意味、警戒心ゼロの少女だ。

「しょうがないでしょ。紙で出来た本なんて、みんな持ってないんだから」

 電子書籍が主流となった現代、紙で出来た書籍との比率は7対3にまで逆転した。電子書籍は店まで行かずとも自宅で端末からダウンロードすれば購入出来るという利便性や、紙を使わなくていいので、環境問題やコスト的にも一役買っているのが理由になっているのだろう。しかし、古き良き物や本当に良いものを好む、いわゆる「こだわる」人間も多く、紙で書かれた本の人気も根強い。

「お前、また窓から入ったんだな?」

「いいじゃない、そっちの方が近いんだから」

 ちなみに凪が浩明の部屋に入るルートは「屋根づたいに窓から」という不法侵入コースだ。それならば鍵を掛けとけばいいのだが、あえて掛けないのは浩明もまんざらではないという事だろう。

「屋根飛び越える時にスカートの中、見えるぞ」

「なに、見たいの?」

「見るか、馬鹿」

 小悪魔のように笑みを浮かべ、履いているミニスカートの裾をすっと持ち上げる仕草を見せられ、視線を反らした。

「あら残念」

「何が残念なんだか……」

 上着のブレザーを脱ぎ、椅子にかけながらぼやく。カッターシャツのボタンに手を掛けたところではっとして手を止めた。

「着替えてんだから後ろ向いてろ」

「別にいいじゃない。それに、そういう台詞は女の子が言うものっぶ?」

 言い終わる前に、浩明の着ていたブレザーを投げて、凪の視界を塞いだ。

「こっちが気にするんだよ」

「なによ、つまんないなぁ」

 仕方なく後ろを向いて本を開いた。

 二人きりの部屋に若い男女。そしてベッドに横になった女の子の側で着替える自分。

実際は着替える所を見られたくないだけだが、端から見ればかなり危ないシチュエーションだ。ベルトを緩める音が室内に響く。

「これ、立場が逆だったらヤバくない?」

「その時は、『これ、なんてラノベ?』って突っ込んでやるよ」

 茶化してくるのを適当にあしらいながら、ズボンを履き替え、ワイシャツを脱ぎ、部屋着のシャツに着替えた。

「もう大丈夫だぞ?」

「は~い」

 間の抜けた返事をしてから、凪が顔をこちらに戻し、横によけていたブレザーを返して、再び本に目を向けた。

「あんたって妙な所で細かいわね。別に着替えくらい見られたって構わないんじゃないの?」

「お前なぁ……」

 制服をハンガーにかけながらぼやいた。

「それにしても、今日はどうしたの? 随分と遅かったじゃない」

 泥沼になりそうなのを察してか、凪は話題を変えた。

「職員室で呼び出された。『昼の事で話がある』ってな」

「あぁ……なるほど」

 それだけで納得したのか、凪が読んでいた本を閉じて、浩明の方を向いた。

「魔術科の方で噂になってたわよ。『普通科にとんでもない魔術師がいる』ってね」

「なんだ、もうそんなに広がってるのか?」

「学内のローカルネットワークを通じて、一部始終が収められた動画付きでね」

 携帯端末を取り出して、保存していた動画を空間ディスプレイに再生させて見せた。

「スゴいわね。キック一発ですっかり有名人よ」

「そんな有名人はサッカー選手だけにしてくれ」

 動画を見ながら感心する凪に呆れて言った。

 ちなみに浩明はプロ野球ファンなのであしからず。

「思いのほか、ばれるのが早かったな」

 自分が蹴りを放つ瞬間を見直しながら、思わず呟いた。



ドアをノックする音と、夕の自分を呼ぶ声に、凪の携帯端末を操作しながら浩明は答えた。

「ヒロ君、飲み物は……あら、凪ちゃん」

「あ、夕さん、おじゃましてます」

 用件を切り出す前に、凪に気付いて、二人は挨拶を交わした。

「『来るときは玄関から来なさい』っていつも言ってるでしょ」

「いやぁ、こっちからの方が慣れてるんですよ」

 窓を指差して凪は言った。

 凪が窓から入り慣れているのには理由がある。彼女は浩明と英二が引っ越す前から、この部屋を利用していたからだ。 話は浩明達が下見に来た時に遡る。





次は、回想編になります。

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