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昼休憩中に投稿します。

あぁ……ネタは出来ても書ける時間が限られるのって辛いっすね~

「『魔術専攻科の学生とトラブルは起こすな』と言っただろうが!」

「『向こうから何かしてこない限り起こす気はありませんよ』と言いましたが?」

 回転椅子に背を預けて足を組み、橘は呆れるように浩明を見た。

 放課後、職員室では橘と浩明の主張が飛び交っていた。

 放課後、事情を聞くために始まった話し合いは、僅か数分で「やったやらないの水掛け論」になり始めていた。

「反省する気はないと言うんだな?」

「先に仕掛けてきたのは向こう。これは正当防衛です!」

 橘先生に言い切ったと同時に、胸倉を掴んで顔を自分のへ引き寄せた。とっさの反応が出来なかった浩明の前に、形の整った顔が至近距離で写った。

 遠巻きから、様子をうかがっていた教師や、学生達が息を飲んだのが分かった。

口元を歪め睨み付けていた橘先生に、浩明が睨み返した所で、橘先生はふっと力を抜き、口元の歪みを解いてから、笑みを浮かべ、浩明にしか聞こえないように「よくやった」と言ってから、掴んでいた胸元を離して解放した。

 何事もなかった事に、周囲から安堵のため息が聞こえてきた。

「先生?」

「いや、すまないな。あまりにも爽快な話だったのでな」

 切れ長の目で浩明を見ながら、橘はイタズラが成功した子供のような笑みを浮かべた。

「魔術専攻科の奴ら、実力主義にかこつけて色々と好き勝手をするのが多くてな、連中にはいい薬になっただろうよ」

「先生、教師がそんな事を言ってもいいんですか?」

「実力主義を謳っておきながら、格下扱いしている人間に返り討ちにされて、文句をいってくる奴の言う事なんか相手する必要なんかないわよ」

 橘は、浩明の問いにばっさりと切り捨てた。

「処分とかは?」

「悪い事はしてないんだろ」

「魔術専攻科の方から抗議とか来ませんでしたか?」

「それは山ほど抗議の電話が……と言いたいんだがね、どうやら現場に生徒会の人間が居合わせたらしくて、君の弁護をしてくれたそうだ」

 ―あの、仲裁してきた子か

 昼のやり取りから思い当たる女子生徒を思い浮かべた。

「ま、そんな事は置いといて、星野、お前は魔術師だったんだな」

「まぁ、そうなりますですけど」

 いきなり話題を変えられた事に、慌てて思い浮かべていた顔を頭の中から追い出して答えた。

「どうして普通科に入ったんだ?

私の見立てでも、君は魔術専攻科の上位に匹敵する実力だと思うんだがね」

 橘は、真意を見定めるように目を細めて聞いた。

「……前に言いましたが、私のやりたい事が普通科でなら出来るからですよ」

「そうか、分かった。もう行けばいいぞ」

「なにがやりたいのか聞かないんですか?」

 橘が、あまりにもあっさりと納得してしまったので、思わず聞いた。

「まぁ、ヤバい事じゃない限り、自由を奪うような事はしないわよ」

「そうですか」

 納得すると、浩明は橘に一礼して、職員室を出た。




 浩明の自宅は一階でケーキ屋を経営する予定の店舗兼用住宅である。

 浩明の叔父である英二は、引っ越しを決めてから常々、「引っ越したら、本業の傍ら、ケーキ屋を開く恋人の手伝いをしたい」と言っていた。というのも、遠距離恋愛中の彼女がケーキ職人として独立する為、一緒に店をやりたいそうだ。

 その為、二人の引っ越しは、開店準備も併用する事になり、未だに引っ越し作業が片付いていても、開店準備が片付いていないのだ。 帰宅して、未だに開店準備中の店内へと入った。

「おぅヒロ、帰ってきたか」

 ショーケースを磨いていた英二に「ただいま」と返すと


「ヒロ君、お帰りなさい」

 厨房の奥から、コックコートに身を包んだ美しい女性が、浩明に気付いて出てきた。

「夕姉さん、来てたんですか?」

「えぇ、開店前に機械の試運転と試作を兼ねてね」

 「夕姉さん」と呼ばれた女性こと、雨田夕あめだ ゆうさんは、遠距離恋愛中だった英二の恋人で、今回の浩明達の引っ越しをきっかけに独立を決め、英二とケーキ屋をする事にした件の女性だ。


 しかし、この夕さん、ケーキよりも日本酒が好きという筋金入りの辛党なのだ。

 おまけに自他共に認める酒豪で、酒に関するエピソードは数知れず、大学時代に飲み比べで店の酒を飲み尽くし、近所の居酒屋からブラックリスト入りしていたとか、働いていたケーキ屋の親睦会で従業員全員を飲み潰して、翌日、店を臨時休業にしてしまったなど、酒に関しては凄まじい人なのだ。

「そんな人が何故ケーキ職人をやってるんですか?」と言う疑問を、夕さんにぶつけたところ、

「私って居酒屋とかやったら、自分で飲んで店を潰しそうなのよね。だから、あまりお酒と縁がないケーキ職人になったのよ」と、豪快な答えを返してきた事がある。なんとも末恐ろしい話だ。と言うかケーキにも酒は使う筈じゃ……という疑問もあったが、本人がそう言っているのだから、浩明はそう思っておく事にしている。

「着替えたらいらっしゃい。もうすぐ、ケーキが焼けるからね」

 泡立て器とボウルを見せながら、さながら天使の微笑みに匹敵するような笑顔につられて、照れるように笑みを浮かべて、浩明は夕に「はい」と答えてから、部屋へと向かった。


お姉さん的存在のキャラクター出してみましたがいかがだったでしょうか?

感想待ってます。

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