表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/72

視点変更の描写、うまくできてるか心配です。

 天統雅を含めたギャラリーは、目の前で起きた事を現実だと認めるのに、どの位の時間が要した掛だろうか。

 普通科の学生が魔術専攻科の学生を蹴り飛ばしただけなら、「まぐれ」で片付いたかもしれない、魔法を発動させ、その足に炎を纏わせていたという光景に言葉を失っていた。


「言っただろ。見た目で判断すると痛いめにあうぞ……て聞こえちゃいないか」

 目の前の男は、左足に纏わせていた炎の残り火を手で払ってから、制服が横一直線に焼き切れ、巻き込まれたテーブルに背をもたれ掛かるようにして、白目をむいて気を失っている男その2に向けて、ポケットの中からコンバーターを見せるように取り出した。

「あなた……、魔術師なの?」

「そうだけど」

雅の問いかけに、男は、コンバーターをポケットに戻しながら、さも当然にしれっと答えた。

「魔術師がなんで普通科なんかにいるのよ?」

 魔術師が魔術師育成の名門、青海高校に編入しながら、普通科に編入している事に、雅は驚きを隠せなかった。

「なんで……って言われても、『魔術師は魔術専攻科に入れ』なんてルールはなかったんでね」

 

 満足か、と言わんばかりに男は答えてから、

「じゃあ、後片付けはお願いしますよ」

 まわれ右をして、彼は雅に背を向けながら左手を軽く振って、その場を去ろうと歩き出した。

「ちょっと待ちなさい!」

 二、三歩歩き始めた所で、雅は彼を呼び止めると、彼は心底、面倒臭そうに顔だけ向けてきた。

「何だ? ナンパか」

「違うわよ。どうしてこうなったのか説明しなさい!」

 顔を赤らめて否定し、まくし立てるように説明を求めた。

「どうして……って、食事してたら絡んできて、適当にあしらったら逆ギレして襲いかかってきたんですよ。嘘だと思うんでしたら、あそこの監視カメラに映ってるんじゃないですか?

怖い魔術師に絡まれるかわいそうな私と、それを肴に楽しそうに食事している観客がよ」

 食堂に設置されている監視カメラを指差してから答えて、「それじゃ、後片付けはお願いしますよ」そう言って、何事もなかったかのように食堂から去って行った。




 とんでもないモノを見てしまった。

 雅が来てからの一部始終を見て、まず思ったのはその一言に尽きた。

「食堂で魔術専攻科の学生と普通科の学生が騒ぎを起きている」、そう聞いて駆け付けてみれば、胸ぐらを掴まれて、今まさに殴られかかっていたのだ。しかし、殴られかかっていた男の行動を見て、雅は驚愕した。

 胸ぐらを掴まれて、殴られかかっているのに、男は余裕をうかがわせて笑みすら浮かべて煽り、最終的に襲いかかってきた二人を返り討ちにしてしまったのだから。それも魔法を使っての反撃なのだから驚いても仕方がない。

 「落ちこぼれで有名な普通科の学生のなかに実は魔術師がいました」など青海高校の歴史上、前代未聞の大事件である。

 しかし、それ以上に雅を驚かせたのは件の中心人物の男にあった。

 似ていたのだ。かつて私達、家族と一族で天統家から追い出したもうひとりの兄に瓜二つだったのからだ。

 実力主義の天統家のなかで、もうひとりの兄は落ちこぼれだった。魔術師としての才能が全くなかったのだ。どれだけ努力しても魔力はゼロ、体術もダメ、成績は良いのだが顔は並み。その為に付けられたレッテルは、「母親の胎内に出来た総一郎の残り滓で、雅の肥料」と言われ続けてきたのだ。

 やがて兄は、周囲から向けられる蔑みと軽蔑、同年代の一族からのいじめを受け続けて、引きこもり、顔から表情すらなくなっていった。そして十歳の時、私達のささいな一言により、彼は叔父に引き取られ天統家を出て行った。

 ―これはただちにお兄様に報告しなければ

 雅はそばにいた学生に、鼻血を出し続けている男子学生と胸元を焼かれた男子学生を保健室に連れて行くように指示をして食堂をあとにした。

 


 生徒会室は一般生徒にとって不可侵領域である。普段、取り巻きに囲まれている総一郎達は専ら昼食はここでとっている。

「普通科に魔術師!」

「それが、あの浩明!?」

 雅からの報告を受けて、生徒会室で昼食をとっていた総一郎と康秀、このみは思わず叫んだ。康秀にいたっては雅の報告を聞いた途端、飲んでいたお茶を吹き出したほどだった。

「名前は名乗りませんでしたが、あの顔立ちは間違いないですわ」

「雅ちゃん、そういう妄想は原稿用紙に書いて出版社に送ったほうがいいよ」

「そうそう、芥川賞も夢じゃ……って送るか!」

 このみへのノリツッコミという名の制裁(鼻骨に裏拳)を済ませた。

「冗談はさておき、一度、調べてみる必要がありそうだな」

「調べてどうするの?」

 康秀の言葉に、鼻をさすりながらこのみが聞き返した。

「もし、浩明君だったとして、どうするの?」

「!」

 再びの問いかけに、総一郎達は黙り込んだ。

「会いに行けるの? あんなに酷い事をしてきた私達が?」

 自分達に会う権利があるのか……、このみの言葉が、総一郎達の心に重くのしかかった。

ここから、どう絡ませるか……

思案のしどころです。

浩明にヒロインというかパートナーを考えてますが、どうなるかな……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ