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下級生にとって、上級生のいる教室は敷居が高い。特に学科が違う学生同士だと扉一枚が限りなく高くなるものである。
浩明と凪はその壁を越えることなく、教室の近くの廊下で目当ての人物が出てくるのを待ち構える事にした。浩明としてはそんな敷居など関係なく授業終了と同時に乗り込む算段であったが、話す内容を聞いた凪が「被害は少ない方がいいでしょ」と、止めたのだ。
もっとも、相手が生徒会のメンバーという事もあり、騒動が起こる事前提でそう勧めるのだから、凪も浩明の扱いに慣れてきたようだ。
閑話休題、授業終了のチャイムの数分後、生徒達に交じって教室から出てきた目的の人物達が出てくるのを確認すると、浩明と凪は顔はその前に歩み寄り立ち止まった。
「ほ、星野君?」
目的の相手の一人である慶は思わぬ人物の登場に目を白黒させた。
「浩明!?」
「驚いた、君から話しかけてくるとは思わなかったよ」
一緒にいた、総一郎、康秀、明美も同様に驚いた様子だ。先日、あそこまで関わる事を拒んだ浩明から声をかけてきたのだから無理もない。
「会長、先日の事件について聞きたい事があるんですが、いいですか?」
「事件って……、雅ちゃんの?」
四人の反応を無視して話を進めると、慶は確認するようにに聞き返してきた。
「聞いた話によると、御令嬢は帰る途中、あなたの音楽プレイヤーが鞄の中に入っていた事に気付いて届けに行き、その途中で襲われた。そうですね」
「えぇ、私達が駆け付けた時にはもう……」
その時の光景を思い出し、苦い表情を浮かべた。あまり思い出したくない光景のはずだ。当然の反応だろう。
「なぜ、彼女はあなたの音楽プレイヤーが鞄の中にあったのを下校中に気付けたんでしょうかね」
「なぜって?」
質問の意味が分からず慶は聞き返すと、浩明は待っていたとばかりに口を開いた。
「いえ、帰り道に鞄を開けるという行為に違和感があったんですよ。普通なら、帰宅して鞄を開けてからはじめて気付くのではないかと思いましてね。それこそ寄り道をして喫茶店やファミレスに入るか、買い物をして買った商品を鞄に入れるか、もしくは…」
一旦、言葉を区切ると慶を見据えた。
「私物を入れた本人から連絡があった、例えば……そう、『音楽プレーヤーが見つからない。間違えて入れたかもしれないから、ちょっと確認してくれないか』と促した場合」
三人の表情が途端に強張った。
「な、何を証拠にそんな事を」
「でも、そう考えると納得できるのよね」
はぐらかそうとした慶の言葉を一蹴するように、凪が浩明の援護をする。
「証拠なら会長達がまだ持ってるはずですよ。この中に」
ブレザーのポケットから携帯端末を取り出して四人に見せるようにそれを指差すと、浩明の意図を凪が「そうか、履歴だ」と言葉にして口に出した。
「でも、履歴なんて簡単に削除出来るんじゃいの?」
しかし、浩明の仮説の問題点を慶が気付いて指摘すると、康秀も加わる。
「そ、そうだ。そんなものいくらでも弄くれるぞ」
「表面上は削除出来ても端末の中の記録は残ってるはずです。電話をかけていないというなら、このファイルをインストールしてもらえませんか」
康秀の言葉をピシャリと切り捨てると、全員に見せるように空間ディスプレイ上にファイルを表示する。
「端末内の履歴を取り出すファイルです。プライバシーの面で問題視されてますが、先輩方が何もやっていないというなら問題ないですよね?」
「身の潔白を証明するためにもやった方がいいですよ。でないと彼、もっとえげつない方法で追い詰めていきますよ」
「ちょっと落ち着け、星野と……」凪の方を見て言いよどむ。自分の名前を知らないのだろうと察した凪が「灯明寺です」と名乗ると「そうだ、灯明寺」と、明美が割って入った。
「いきなり現れて、意味の分からない事を聞いた挙句、『妙なファイルをインストールしろ』って、何がしたいんだ?」
「そうだよ。分かるように説明してくれないかな?」
明美と慶が説明を求めると、浩明はこのやり取りに周囲の人間が聞き耳を立てているのを確認してから「分かりました」と語り始めた。
「事件当日、何があったのか知りませんが、生徒会では作業効率が著しく低下、ありえないミスを連発して、夜九時に作業を切り上げたそうですね。」
「そうだが」
怪訝に総一朗が答えた。原因はお前の態度だろう、と言いかけたのを、すんでのところで抑えた。
「それも、自分の私物を間違えて友人の鞄に間違えて入れてしまう程に慌ただしく撤収したそうですね」
「だから、それが何だってんだよ」
確認するような浩明の言い回しに、今度は康秀が煙たそうに聞き返した。
「その入れ間違いが故意にやった行為だったとしたらどうですかね?」
「故意?」
明美が意図を問う。
「間違えた振りをして、違う鞄に自分の私物を入れる。そして下校途中に頃合いを見計らい電話をかけ、自分のところに来るように仕向け犯行に及んだ。話の内容からして、そう考えれば説明がつくんですがね」
「お前、真面目な顔してなんて事考えてるんだ」
仕草を交えての言動に、康秀が呆れた表情で全員の思った事を代弁した。
「では、事件当日、どうして彼女が気付いたのか話してもらえませんか。一緒だったお二人なら説明できますよね?」
「それは……」
総一朗が言い淀む。
「言えないって事は……星野の話が間違ってないって認めるんですね」
「会長がそんな事するわけないだろ!」
総一郎が凪に怒鳴り付けるように反論すると、今度は浩明が割って入る。
「確かに、そんな分かりやすい事をするとは考えにくいんですが、少なくとも会長のほうから確認を入れたのは間違っていないと思ってますよ。間違っているというのなら、天統雅が住宅地のど真ん中で意味もなく鞄を開けて中身を確認した理由を説明してくれませんか」
「もしくは、ファイルをインストールして履歴を見せてくれるだけでもいいですよ」
「さぁ、答えてもらえませんか」
浩明と凪による詰問に総一郎達は折れた。
「お前の言う通りだよ。会長の方から電話があって雅は会長に届けに行ったんだ」
事件当日、帰宅が遅くなった慶は、夕食を手早く済ませようと、総一郎達と別れてすぐにコンビニに寄り、会計を済ませて、ポケットに携帯端末を戻した際に、いつも一緒に入れていた音楽プレイヤーが無い事に気付いて、総一郎達に連絡したそうだ。
「そこで間違えて入れていた天統さんが、届けに行き、その最中に襲われたと……」
「ごめんなさい、私のせいで雅ちゃんがあんな事になってしまって、気が動転してしまって」
慶が浩明に頭を下げて謝る。
「それで、会長を宥めるつもりで『雅はたまたま気付いて届けにいった事にしよう』って決めたんだよ」
「成程、分かりました。」
「分かってくれたか?」
浩明の納得の声に総一郎が安堵の声を漏らす。捻くれ者の星野浩明だ、自分に敵意を持った受け取り方をしないでくれたのだから。しかし、それは浩明の次の言葉で呆気なく裏切られた。
「そういう事なら来週の生徒総会で解職請求しても、良心が痛まずに済みそうですね」
「解職請求?」
にやりと笑みを浮かべていった言葉に明美が声を上げた。
「こう見えて私、喧嘩の仕返しがえげつないってよく言われるんですよ」
「だよね」
凪が意味もなく同意する。
「浩明、お前、そんなことして本当に会長を辞めさせれると思っているのか?」
周りで聞いていた他の学生達も「そうだ、そうだ」と同意の声をあげてくる。中には「ふざけた事ぬかすとぶっ飛ばすぞ」と脅しをかけてくるのもちろほら聞こえてくる。
現生徒会長の大谷慶や所属している総一郎達の人気はかなり高く、解職請求をしても反対多数で請求が通る可能性は限りなく低い。浩明の行動は限りなく無駄な行動に近いと言っても過言ではない。
「無駄かどうかは、やってみなければ分かりませんよ。仮に反対多数でも、私の話の内容を聞いた先生方がどのような対応をしますかね?」
「何?」
「どういう意味だ?」
裏を含んだ言い回しに、総一郎と康秀が聞き返すと、浩明は淡々と、ギャラリーにも聞こえるように話し出した。
「生徒会のトップが起こした不祥事を隠蔽するだけでなく、無関係の赤の他人を犯人扱い、それも、妄信的に先輩方を慕う取り巻き達の前で目立つように尋問し名誉を著しく傷つけた。教育者が聞いたらどう思いますかね?」
総一郎達の顔に動揺が走った。星野浩明の目的が解職請求ではなく、この事件を公表する事によって自分達の処分を教師に求めるつもりだと。それも、口頭による注意等という温情措置ではない、厳しい措置だと。
「隠蔽に冤罪に名誉毀損、まさか無罪放免ではすまないよね~」
凪の言葉が総一郎達の動揺を煽る。
「灯明寺、そんなに煽るな」
お前が言うな! そう言われてもおかしくない浩明の言葉に誰からもツッコミが入らなかったのはギャラリーにも動揺していたからだろう。
「では、言いたい事はそれだけですので失礼します」
「ちょっと待て、君達はなんて事を考えてるんだ!」
一瞥だけして去ろうといち浩明と凪を、いち早く平静を取り戻した明美が止めにかかる。事件の当事者ではなく、傍観者だった事が誰よりも早く落ち着きを取り戻させたからだろう。
「橘先輩、今度は頭を下げてもムダですよ」
「…ッ!」
振り返り、冷徹に説得に応じるつもりはないと釘を刺す。
「浩明、お前、そんな事をしてどうするつもりだ?」
「どうするつもりって、皆さんの前で言いましたよね。売られたケンカは高額買い取りだって」
明美にかわってロを開いた総一郎に答える。それに対して康秀がまくし立てるようにわめいた。
「ケンカって、それがなんで会長の解職請求につながるんだよ!? やったのは俺達なんだから俺達にあたればいいだろ!?」
「だからこその解職請求ですよ。人に罪を擦り付けてまで庇った会長だからこそ効果は絶大だと思いましてね」
その姿を冷やかに蔑むように言いはなった。
「何を言ってるんだ! あの時、俺達は間違いなくお前を見たんだ。倒れている雅の傍に立っていたお前をな!」
「だと言うなら、事件が起きた時間、現場から数キロ離れたレストランで私と一緒に居た事はどう説明するんですか? どんな加速魔法使っても現場に駆け付けるなんて不可能ですよ」
断言した康秀の言い分に凪が言い返した。あの時、一緒にいた凪だからこその反論だ。
「そのアリバイだけどレストランの人間と口裏を合わせれば偽装できるんじゃないのか? アリバイをでっち上げて雅を襲う事だって可能だろうが」
それに負けじと総一郎が凪に指摘する。しかし、これが彼等に取って墓穴を掘ることとなった。
「ねぇ星野、先輩達、本気で言ってると思う?」
凪が引きつった顔で、浩明の横に寄り添うようにくっつくと、口元を隠し、総一朗達に見せつけるようにわざとらしく耳許に囁く。
「どうやら本気で言ってるみたいだよ」
それを受けて、浩明も呆れた様子で答える。
「おい、何が言いたいんだ!?」
二人の露骨な態度に、康秀が声を荒げる。周囲にいる総一郎達のクラスメイトも黙って浩明と凪を睨み付けている。その視線から、康秀と同様の感情を見せている。
「御嫡男殿は私が店にいた人間と口裏を合わせて、天統の御令嬢を襲った、つまり、『彼女が襲われていたであろう時間に店に居なかった』と言ってるんですね?」
「だから何が言いたいんだ!?」
再度、声を荒げた康秀を、明美が「落ち着け」と宥める。
「灯明寺、あのブログの写真ってなにで撮影したんだっけ?」
「確か……店長さんの携帯端末だった筈よ。撮った後、操作しながら「送信」って呟いてたもの」
当時の事を思い出しながら凪が答えた。それを聞いて総一郎と明美が口を開く。
「まさか、その店の店長の撮った写真がアリバイの証明になるとでも思ってるのか?」
「そんなもの、事前に用意していれば「ちょっと失礼」おい!」
言いかけて浩明に遮られる。突然、携帯端末で写真を撮ったからだ。
「いきなり何するんだ」
「いや、言っても分からなそうなので、目で見せた方が早いと思いましてね」
抗議の言葉を受け流しながら、端末を操作して、空間ディスプレイを立ち上げて見せるようにする。
「今、撮影した写真の情報です。携帯端末で撮影した写真にはサイズ、写真の種類、そして、撮影した日時と時間が記録されているんです。つまり、その写真が店長の携帯の中に残っていれば、いつ撮影されたか分かる。つまりその時間に店にいた証明になりますよね?」
二人は押し黙る。自分達が言った仮設を容易く否定されて言葉が出てこない。
「だからってその写真が……「あ、さっき店に電話をかけて確認したんだけど、店長さん、まだ写真消してないから保存を頼んでありますよ」っ!?」
代わりに明美が僅かに残った反論の余地を突くものの、言い終わる前に凪によって遮られる。
「あ、そうだ。これもあったか」
何かを思い出したように携帯端末を操作して、ある画像を表示する。何かに驚いた顔をしている男子生徒三人の写真だ
「これは?」
「レストランからの帰りに会ったストーカーです」
「ストーカー?」
浩明が見せたのは、あの時、挑発目的で撮影したストーカーこと、雅の取り巻き達の写真だった。
「なんか、『お前が雅様の兄妹だなんて認めない』って意味不明な事を喚いて、広域炎熱魔法を放ってきましたから、怖くなってすぐ逃げましたけどね」
「おいおい、そんな事があったのか?」
明美が頬を引きつらせる。
「ま、無実の証言を求めても素直に応じるとは思いませんけどね」
はき捨てるように呟いてから、画像を閉じる。
「さて、冤罪を証明する証拠も確保しましたので、あとは現生徒会を徹底的に糾弾する内容の書類を作成しとかないといけませんかね」
「あぁ、追い討ちってやつね」
「おいおい、この場合は『念には念を……』だろ」
そう言って凪のおでこを軽くつつくと、「あ、そうだった」と笑みをこぼした。
「では、言いたい事はそれだけですので、失礼しますよ」
「待って、星野君!」
「不祥事を隠蔽するような卑怯者と話すことなどこれ以上ありません。次は生徒総会で会いましょう」
これ以上ない批判を込めて、慶の言葉を遮り、凪を連れて立ち去ろうとすると、代わりに総一郎と康秀が前に出た。
「おい浩明、今のは言い過ぎだろ」
「提案したのは俺達なんだ、会長は関係ないだろ!」
「卑怯者」の一言で、彼等の我慢が限界に達したらしく、浩明を睨み付けて怒鳴りつけた。
「言い過ぎ? 本来ならば、隠蔽を提案された時点で、提案者を叱咤するべきを、我が身可愛さに提案に応じた事が今回の騒動の原因ですよ。そのような行為を取る人間が人に立つ資格などありませんよ!」
浩明から勢いよく発せられた怒号はギャラリーの口を一気にふさいだ。
「ひ、浩明、お前が疑われやすい行動を取っているからこうなったの間違いだろうが!」
しかし、くぐった修羅場の違いか、多少たじろぎながらも、総一郎は反撃に言い返すと、「ほぅ……」と浩明は腕を組んで構えた。改めて周りをみると、総一郎の意見に同意しているのがありありとみえる。生意気な普通科の浩明より、皆から慕われる生徒会役員の総一郎達の言葉とでは、信頼度が格段にちがうようだ。しかし、浩明はその雰囲気に呑まれる事なく堂々と構えていた。
「成程、確かに一理あります。最近多いんですよ。妄信的なあなた方の信者の皆さんが『雅様の敵』だの『落ちこぼれのくせに』だのと一方的に暴行を振るってくるものですからね。私もやむを得ず応戦していますが……、そうか、そう言う事か」
言いながら、何か納得したように自己完結で締めた。
「どうかしたの?」
凪が眉をひそめて聞いた。
「いえ、御当主殿と御嫡男殿が朝の校門の前で尋問するという、目立つ行動を取ったのか、ずっと気になっていたんですよ。なぜお二人は校門の前で待っていたんですか?」
「そ、それは……、いつ来るか分からなかったから、確実に通る校門の前で待っていただけだ」
いきなり質問を振られた康秀は、訳が分からないと言った感じで答えた。
「確かに、一理ありますが、今までのやり取りから本当の目的は別にあった。そう思えてきましてね」
「本当の目的?」
明美が聞き返すと、浩明が続けた。
「えぇ、あなた方が自分達の取り巻きを先導し、全員で嘘の自白を作るためだったんですよ」
「嘘の自白?」
「えぇ、実際にあった話ですが、『お前が犯人だろう』という先入観で責め立て、精神的苦痛を与え続け、嘘の自白をさせて、冤罪を認めさせる。それをやろうとしてたんですよね」
「お前、本気でそんな事を言ってるのか?」
軽蔑と哀れみを込めた目で総一郎達に睨み付けられる。
「貴方方の信者の前で『天統雅が星野浩明に襲われた』と言って糾弾させ、否定する余地を与えないようにして追い詰める、更に取り巻き達にも糾弾させるようにもっていかせ、精神的に追い込んでから救いの手を差し伸べる。そう仕組んだ筈が、実際は私に鉄壁のアリバイがあり、更にここにいる灯明寺が証人として出てきてしまいかえって裏目になってしまった」
「馬鹿馬鹿しくて聞いてられんな。この二人がそんな事する理由がないだろ」
呆れた口調で明美が聞いてくる。
「理由? 脳内妄想弟を私に押し付けてこようとする人間の考えなんて知りたくもありませんよ」
「なっ!」
切って捨てた浩明の言い分に、全員、言葉を失う。あくまで「赤の他人」のスタンスを維持するつもりのようだ。
「ですが、実際に会長の件で糾弾させるようもっていったのを見れば、ろくでもない理由があった事を証明してると思いますがね」
自論を証明するようにギャラリーを見渡すと、先程、総一郎達に便乗して浩明を攻め立てていた学生達が浩明から視線を逸らした。
「さて、どこか間違っているところがありましたか? 御当主殿に御嫡男殿」
腕を組み直して睨み付ける。指名された二人は何も言う事が出来ず、拳を強く握り締め、睨み付け返す事しか出来なかった。
「では、色々とやる事がありますので失礼します。灯明寺、行くぞ」
急に自分を呼ばれた凪は「え、えぇ……」と慌てたように応じて、踵を返して去ろうとする浩明についていこうとする。ギャラリー同様、浩明の言葉に呆気に取られていて、反応が遅れたのだ。
「…れ」
「ん?」
直後、ぽつりと聞こえた声に浩明と凪は歩くのをやめて振り返る。その刹那
「いい加減にしやがれえええ!」
浩明の左頬に康秀の拳がめり込まれた。