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こんばんシャッスです!
ちょっと難産でしたが無事出来ました。
後々の展開を考えると二転三転はお約束ですね
先に店から出て携帯端末を操作してニュースをチェックしつつ、凪は浩明の会計を済ませるのを待っていると
「ありがとうございました~」
店員の挨拶に送られて浩明は店から出てきた。
「待たせたか」
「別に。早くいきましょ」
二人で並んで足早に店から離れた。というのも
「店員さん、笑ってたわね」
「そりゃ、客商売なんだから笑顔で接客は普通だろ」
「いや、そうじゃなくてね」
あの後、浩明はペースを落とす事なく食べ続けて、終わりの頃には、料理を取りに行く姿が店員達のドン引きと失笑を誘った。
当の本人は、そんな視線を全く気にする事なく、デザートまで堪能して一言、「健康の為に腹八分目にしとくか」と言ったのだから始末が悪い。今度、大食いチャレンジをやってる店(賞金付き)に案内しようと凪は誓った。
「あの店、今頃は私達の話で持ちきりよ」
「目の覚めるほどの美男美女カップルがいた……てか?」
「あんた、その自信はどこからくるのよ」
呆れて浩明を見た。
「言いたい奴には言わせとけ。私のモットーだっ……いたたた」
反論しながら、浩明はお腹を押さえてうずくまった。
「あたたた……最後に食べたティラミスがヤバかったかな?」
「あんたねぇ、普通に食べ過ぎ……」
そう言いながらうずくまる浩明に肩を貸そうとしゃがもうとして、腕を掴まれ勢い良く引かれた。
「ちょっと何よ!?」
「静かに」
痛がる素振りから一転、冷静な口調で凪に言った。
「誰かにつけられてるみたいだね」
「は?」
小声で凪に説明をする
「つけられてるってどういう事よ?」
「店を出た所から一定距離をあけて尾行されてるみたいよ」
「えぇ!?」
「馬鹿! 相手さんに気付いたのがバレるだろが」
慌てて周囲を見渡そうとする凪の首に腕をまわして寄せた。
「ちょっと何すんのよ!?」
「いいから落ち着け」
頭が浩明の胸元に収まってしまい、その腕から脱出しようと顔を真っ赤にして抵抗する凪をなだめる。
「君、現在進行形でストーカーの被害に遭ってる?」
「はぁ? 何言ってんのよ。そんなのあるわけないでしょ」
「だろうね」
「だろうな……ってどういう意味よ!?」
「落ち着け、最初から分かってるわ。念の為の確認だ」
「念の為?」
浩明の返しに問い詰めようとする凪に、自分の考えを説明した。
「どうやら相手さん、私狙いのお客さんみたいだね」
「私狙いって……襲う気満々じゃないの!?」
「そういう事だろうね」
驚く凪の言葉に、後ろを確認してから答える。
「このタイミングだ、天統家の馬鹿連中の取り巻きが暴走して来たんだろ」
「暴走って、まぁ『元は兄弟でした』なんて分かれば、その位するでしょうね」
「本当に良い迷惑だ」
眉間に皺をよせて答えた。
「まぁいい、とりあえず私の合図でそこの角まで全力疾走して様子を見るぞ」
「その後は?」
「諦めればほっとくし、追いかけてきたら相応のお返しをしようじゃないの」
「うわぁー、えげつなーい」
プランを聞いて凪は苦笑する。この男の事だ。洒落にならない事をするはずだ。相手に同情してしまう。
「行くぞ」
「りょ~かい」
短く言った合図と同時に、二人は勢いよく走り出した。
角を曲がって直ぐに足を止めて壁に背中を預けて様子をうかがう。
「ヤバい、気付かれたぞ!」
「なんて野郎だ」
「追いかけるぞ」
困惑して慌てている様子が声で分かる。
「向こう、やる気満々みたいよ」
「わざわざ姿晒しに来るとは、馬鹿丸出しだねぇ……」
苦笑して腕を組んだ。
声から察するに最低三人はいるようだ。そばにいる凪を見る。
―巻き込むわけ……にはいかんな
相手の狙いが浩明にあるなら凪は無関係だ。巻き込むわけにはいかない。
「? どうしたの」
ずっと見続けていたので、気になったのか凪が聞いてきた。
「お前、巻き込まれたくなかったら離れてたほうがいいぞ」
「何言ってんのよ。もう巻き込まれてんじゃん」
浩明の言葉に笑みを溢して返してきた。余計な気遣いだったようだ。
「……怪我だけはするなよ」
「あら、心配してくれるの?」
「別に。ただ、君に怪我されると夕姉さんに何言われるか分からんからね」
足音のする方を見ながら答えた。
―照れ隠しの下手な男だ
凪は、自分の方を見ようとしない浩明を見ながら思った。
星野浩明は悪い言動が目立っているが、自分の問題に他人を巻き込むのを嫌い、困ってる人を見捨てられない男である。基本的にやられた時の報復や糾弾が過激すぎるために悪目立ちしているだけである。
―もう少しソフトに抑えればいいのに
そうすれば闇討ちされる事もないのに、と思ってしまう。
襲撃犯三人は目の前を走りさってから、いないのに気付いて振り返って待ち構える浩明と凪に驚く。
バレた時に備えて覆面をしていないのが素人丸出しだ。
「おい灯明寺、お前狙いのストーカーか?」
「はぁ? バカじゃないの」
浩明得意の煽りに凪も便乗する。
「違う……て事は私狙い!?」
―初手から酷すぎる!?
いきなりのホモ扱い、思わず顔が引きつった。
「しかも三人でって君達、私に何のプレイする予定だったの?」
「ちょっと待て!」
浩明はわざとらしく引きつった顔で後ずさっている。
「あぁ~、悪いんだけど、私、同性愛には寛容なほうだけど、こっちに押し付けるのは勘弁してくんない」
「だからホモじゃねぇ!」
通報しようとするのを襲撃犯達が否定している。それはそうだろう。ストーカー扱いのうえにホモなどというレッテルが広まれば自殺ものだ。
呆れる凪の目の前で、浩明は「珍しいゲイのストーカーだ」と挑発するように、携帯端末をカメラモードにしてシャッターを切っている。
「別に構わないだろ? どうせ闇討ちする予定だったみたいですからね」
「!?」
一頻りからかっていたのを一転、口角をつり上げた笑みで三人を睨み付けるようにして見据えた。
「灯明寺と別れて一人になってからって魂胆だったみたいだけど、生憎とこいつとは隣同士でね、諦めた方が身の為だよ」
一応の警告、しかし相手は逃げる気配がない。
「だいたい予想はつくけどさ、君達、天統家絡みのド鬼畜連中の取り巻きだろ?」
浩明の一言に三人の目付きが変わった。どうやら図星だったようだ。
「襲った理由は、私と天統家の連中との関係ってとこかな?」
この言葉に三人が嫌悪感に歪んだ顔で、浩明を見た。
「分かってるんなら話は早いぜ」
「認めねぇ……俺達は認めねぇぞ。貴様が総一郎様達の兄弟だなんてな!」
その言葉に浩明の表情が微かに眉をひそめた。
「なるほど……、それで闇討ちか。私を殺して存在を抹消したかったと……
随分と酔狂な事で」
それを悟られないようにして、口を開いた。
「別に認めなくていいですよ。あんな連中と兄弟だなんて思うだけで虫酸が走りますから」
「なんだと!」
「あれ? 認めなくていいって言ったのになんでキレてんの?」
「なんでって……さぁ?」
原因はその後言った言葉だろ、聞かれた凪は曖昧に返事しつつ、心の中で突っ込んだ。
「ま、あんな連中に心酔してる方々だ。まともな人間がいるなんて思うのが間違いか」
「この野郎、言わせておけば!」
襲撃犯の一人がコンバーターに魔力粒子を送り込み粒子変換を始めた。
「あっ、馬鹿!」
―それこそ星野浩明の思う壺だ
思わず漏れた凪の声と同時に放たれた炎が浩明に向けて放たれた。
視界が塞がれた瞬間、凪の体に衝撃が襲った。
「え、えぇ!?」
凪は何故、自分が浩明に抱えられているのか分からず、素っ頓狂な声を上げていた。
炎が放たれた瞬間、浩明はくるりとUターンして、後ろにいた凪をお姫様抱っこで抱えて着た道を全力で走っていた。
―どっか隠れられそうなとこは……
襲われたのは住宅地のど真ん中。そう簡単に隠れられそうな所はなさそうだ。
―仕方ない
一瞬の躊躇の後、電気の着いていない民家を見つけたらそこに隠れさせてもらおうと決め込んだ。
不法侵入だが緊急事態だ。もし誰かいても、事情を話せば分かってくれるはずだ。
決断してからの行動は迅速だった。
運良く明かりの灯っていない平屋建ての家が目に入った浩明は、悪いと思いつつもその家の門をくぐり、塀に隠れて様子をうかがった。
―うまく撒いたか
追いかけてくる様子がない事に、安堵して、凪を抱えたまま片膝をついてしゃがみ込み、安堵の溜息を吐いた。
「ねぇ」浩明の緊張が解けたのを察してから、凪が口を開いた。
「なんで逃げたのよ?」
凪の質問はもっともな疑問だった。
「君、どうして知ってたの?」
「は?」
凪の疑問に答える前に、聞き返した。
「襲われた理由が『天統兄妹の元兄弟』だって事だよ」
星野浩明が元は「天統浩明」だと知っているのは一族を除いて数えるほどしかいない。それが周知の事実として広まっていた事がおかしかった。
「あぁ、それならコレよ」
凪は携帯端末をローカルネットワークに接続して、ある記事を見せた。
「さっき、星野が会計中に、見てたら出てきたのよ」
そこには、「噂の転校生、天統家の隠し子か!?」とゴシップ記事さながらの見出しで、実は浩明は天統家の次男で、五年前の一大スキャンダルの発端だという事実が詳細に書かれたwebニュースのページが開かれていた。
「これは……」
「こんなん見れば襲いかかりたくも……もしかして情報をリークしたのが私だと思ってんの!?」
あらぬ疑いを掛けられたと思い、浩明を睨み付ける。
「馬鹿な事言ってんじゃないの。問題はこっちだ」
その疑いの視線を一蹴してwebニュースを見るよう促した。
「ここ、妙だと思わない?」
「何が?」
浩明が見ていた所を凪も目を通した。
「このニュース、五時に配信されてるだろ」
「まぁ……見れば分かるわよ」
それのどこがおかしいのだろうと、凪は配信時間を見ながら思案する。
「生徒会室に行ったのは四時過ぎ、鉢合わせしてあの馬鹿が「兄弟」だって言ったのが四時半、いくらなんでもニュースとして配信されるのが早過ぎないか?」
「確かにそうだけど、それがどうかしたの?」
執筆速度が速い人なら不可能ではない筈だ。凪は聞き返した。
「こんな記事、配信したらどうなると思う?」
「そりゃ、彼等のファンは何をやらかすか……さっきみたいな人達も出てくるわよね」
「そう、まるで彼等を煽るのが目的としか思えない記事、つまりはこの情報をリークした人は私を出汁に使おうとしてるんじゃないかと思ってね」
「はぁ……深読みしすぎじゃないの」
逃げた理由を察して楽観的に返した。
「だってこの記事、私には取材も掲載許可も取ってないんだよ」
「うわぁ……」
この一言に、凪も浩明が逃げた理由に納得した。
「で、これからどうするつもり?」
「そうだな……」、言いかけた時、ガサッと言う音に二人は身を強張らせた。
見つかった!?
そう思った瞬間、
「あの……どちら様でしょうか?」
二人は密談に夢中になっていて忘れていた。
逃げ込んだのが他人の民家であることを。そして、電気が灯いていないからって、その家に住人が居ないのは自分たちの思い込みである事を。
その家の住人であろう老夫婦に声を掛けられた二人は、「どうも……」と同時に愛想笑いで返した。
いつも感想をくれる皆様、ありがとうございます。
王道過ぎてもあれだし、邪道過ぎるのも不快になるのではと内心ヒヤヒヤです。
二次創作の行き過ぎたアンチ物の作品のように収拾がつかなくならないように頑張っていきます!!




