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昼休みにシャッスです!

ユニークアクセスが一万を超えました

皆様に感謝です。

「さてと……」

 胸の前で腕を交差させて魔力粒子を集める。

 逃げないとは思うが(相手はどう見ても逃げれるような状態ではないなのだが)一応の処置として、集めた魔力粒子を鎖状に形成し、二人を拘束した。

 ただ、切り裂かれたブレザーへの意趣返しを込めて、鎖は首から下を足まで隙間なく縛り付けておいた。もちろん見せしめも込みだ。

「さて、お巡りさんに電話と」

「た、頼む! それだけはやめてくれ!!」

「お願いだ、許してくれ!」

 携帯端末を操作している横で喚き声が聞こえるが無視だ。

 ―今更、遅いんだよ

 同情の余地はない。自業自得だ。

 そう結論付けて携帯端末の通話モードにして電話番号を打ち込む。

「その位にしてくれないか?」

「誰だ?」

 通話ボタンを押す手前で呼び止められて、操作を中断した。

 呼びかけた声の先には、二人の人物が立っていた。

 凛とした切れ長の瞳、くっきりとした顔立ち、腰までのポニーテールの女子生徒と、その後ろに男子生徒が付き従うように立っている。

 付き添いはともかく、女子生徒は有名人だと分かる。雰囲気が全く違うからだ。

「どうなってるんだ? 入ってきていた話と全然違うんだが」

「どうやらそのようですね」

 付き添っていた男子生徒に確認する。

「風紀委員の橘明美「たちばなあけみ)だ。誰か話を聞かせてくれないか?」

 右腕に付けた腕章を見せ、全体に向けて声をかける。

 ―今頃のご到着かよ

 遅い登場に呆れて思わず溜め息がこぼれた。もう少し早く来れば余計な見せ物(自分の魔法)を見せずにすんだのに。

「助けてくれぇ!」

「あいつが先に手を出してきたんだ!」

 二人の登場に渡りに船と、ここぞとばかりに柔道部員と剣道部員が明美に助けを求めだした。「自分達は悪くない」と被害者を装った身勝手極まりない主張を喚いている。ここまでくると哀れを通り越して同情すら覚えてくる。

「ちょっと黙っていてくれないかな?」

 橘が睨み付けると、喚いていた二人は顔を恐怖にひきつらせて黙り込んだ。

「あぁ言っているが間違いないか?」

「どうぞ、お好きに受け取ってくださいな」

「なに?」

「どういう意味だ!」

 浩明の投げやりな回答に橘は眉をひそめた。付き添いの男子生徒は敵意を込めて睨み付けてくる。人目がなかったら胸ぐらを掴んでくる勢いだ。

「どういう意味か説明してもらおうかな?」

「どういう意味って……、『随分とタイミングよく出てきたっすね』って聞いた方がいいですか?」

「……なんだ分かっていたのか」

 浩明の返しに、睨み付けていた風紀委員が警戒を解いて苦笑した。

「だって、グルグル巻きに拘束されて許しを請う二人の側で電話をかける途中の私に『その位にしてくれないか?』って声をかけてきましたよね?」

「それが何か?」

「そんな異常な光景を見れば、普通なら『何やってんだ』って声をかけるべきだと思ったんですよ」

「なるほど……、君は頭もキレるようだな」

「ただの推理小説マニアなだけですよ」

 賞賛に、浩明はおどけて返した。

「あ、あの……どういう意味ですか?」

 助けた女子生徒にはこのやり取りの意味が分かっていないようだ。

「つまり、この人は最初から見てたって事だよ」

「見てた?」

「そ、君が捕まっていたところから、私がこの二人を締め上げるまでの一部始終をね。つまり、あの二人がどんなに喚いて無実を訴えても全くの無駄って事」

「えぇ!?」

 さっきの事を思い出したようで、赤面して驚いている。初々しい反応だ。

 一方、最後の望みが絶たれ、完全に追い詰められた柔道部員と剣道部員は顔を真っ青にしている。哀れな事だ。

「おいおい、誤解してもらっては困るな。私達が見てたのは、君がそこにいる二人に切られたところからだ」

 後ろにいた男子生徒が頷いて明美の言葉を肯定する。その言葉に女子生徒は安堵の溜め息を漏らしていた。

「それならなんで早く出てきてくれなかったんですか?」

「決まってるだろ、君の魔術師としての実力を見たかったからよ」

「風紀を守る風紀委員がそんな理由で!?」

 橘の口ぶりに呆れてしまう。

「すまない、噂の魔術師君の魔法が見れるチャンスだと思ったら、つい……な」

「わお、清々し過ぎるな」

 苦笑まじりに呆れて腕を竦めた。

「怒ったか?」

「いえ、そこまではっきり言われると怒るよりも呆れましたよ」

 ―あの馬鹿にも見習ってほしいくらいだ

 人ごみのなかにまじっていた顔見知りを思い浮かべて溜め息をついた。

「で、その風紀委員の橘さんが、何の用ですか?

私は今からこの二人を警察に通報するところなんですけど」

 茶化し終えたところで用件を切り出した。と言っても大体は予想がつく。形式儀礼のようなものだ。

「それだ、今回の一件、なかった事にしてくれないか?」 

「それはまた……、都合のいい要求っすね」

「虫がいいのは分かっている。彼らには風紀委員会から厳罰な処分を下すから、事件沙汰にするのだけはやめてくれないか?」

「悪いんですけどその要求は聞けないっすね。ここまでやられてるんですからね」

 大きく切り裂かれた制服を見せる。ネクタイ、シャツなど、上半身に着ていたものは全てに被害が行き渡って素肌が晒されて、風通しが良くなり過ぎて肌寒いくらいだ。

「確かに彼等がやった事は許される事ではない。だが事件沙汰になると他の部員、いや、みんなに迷惑がかかるんだ」

「それで私に納得しろと?」

「頼む、このとおりだ」

 人だかりからざわめきが起こった。橘が浩明に頭をさげたのが衝撃的だったようだ。

「解せないねぇ。この二人に無関係の君がそこまでするの?」

 縛り上げてある二人を親指で指差した。

「彼等の為なんかじゃない、巻き込まれたみんなの為だ」

「みんな? 両方の部員達の為かい」

 遠巻きに見ている柔道部と剣道部の部員達を見た。

「いや、ここにいる全てのクラブのみんなにだ」

「全てってどういう意味だ?」

 意味が分からず聞き返す。

「うちの高校の理事長は自由主義だがルール違反には厳格でね。新聞沙汰になれば『全てのクラブ活動の自粛』なんて事もありえるんだ」

「つまり、連帯責任か……」

 飴と鞭の使い方がうまい事で、心のなかで感心して舌を巻いた。

「こちらとしても穏便に済ませたいんだ。頼む」

 再び頭を下げた。

 しょうがない。真摯な彼女の頼みに対応を決めた浩明は遅れた事への意趣返しを兼ねて口を開いた。

「そんな都合のいい頼みをタダでは、むしが良すぎるんじゃないですか?」

「何?」

 態度を一転、怪訝な顔して頭をあげた。明らかに敵意を向けた目だ。

「利益のない取引には応じたくないって事ですよ」

「何が望みだ?」

 はっきりとした口調に怒りが籠もっている。

「そうっすね……、制服を一着いただきましょうか」

「制服?」

 予想とは違った要求に思わず声が半オクターブあがった。

「まさかこの格好で街中を歩けとでも?」

「あ……あぁ、なるほど、これはうっかりしてた」

 浩明の言った事の意味を察して怒りを解いた。

「分かった。制服に関しては……そうだな、柔道部と剣道部の部費から出させよう。顧問には私から話を通す。いいな?」

 両方の部の部員達に確認すると、頷いて了解した。

「では、この一件はこれで終わりだ。おい、二人を連れて……すまないんだが、この拘束を解いてやってくれないか?」

 橘の頼みに「了解」と短く返事すると、魔力供給を止めて術式を解除した。

 解放された二人は実力の差を見せつけられ、返り討ちされたのだ。おまけに風紀委員の目の前で暴れれるわけもなく、浩明を睨み付けながら、男子生徒に腕を拘束されて連れていかれた。


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