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お気に入り登録が50件を超えて60件……

登録していただいた皆様、ありがとうございます!!


「部活?」

「あぁ、君は部活動をする気はないのか?」

「今のところやるつもりないです」

 放課後、職員室に呼ばれた浩明は、きっぱりと答えた。

「それは残念だな。星野は魔術師なんだから、魔術関係のクラブに入ったらどうだ?」

 青海高校のクラブ活動には魔術師育成を目的としたクラブの活動がさかんで、他の高校と一線を画しているものがある。

 普通科でありながら魔術師でもある浩明にとって悪い話ではない筈だ。しかし

「勧めてくれるのはありがたいんですけど、遠慮させてもらいます」

 やんわりとだが、はっきりと拒否する。

「どうして断るんだ。悪い話じゃないだろ?」

「ムダな努力はしたくないんですよ。魔術専攻科ばかりのそんな部に居場所なんか出来そうにないんで」

「耳が痛くなる話だな」

 橘が溜め息を漏らした。

 先日の食堂の一件以来、浩明の知名度は鰻登りの急上昇中である。魔術師のくせに普通科にいる変わり者から始まり、実は魔術師の振りをしている詐欺師、編入試験で魔術専攻科に入れないような事をしでかした落ちこぼれとか、経歴詐称の下準備の為など憶測による悪評がついて回っている。

 それに加えて、浩明の使う術式はコンバーターを使わない無詠唱式と知られれば確実に人体実験のモルモットだ。もっとも、そんな考えで近付いてくる人間には相応の対応をするだけであるが。

「それに、私生活が忙しいんでやる暇がないんですよ」

「そうか、ちょうど部活勧誘期間だったからどうかと思ったんだがな……

そういう事なら分かった。行けばいいぞ」

 一礼してから、職員室を出た。




「わーお、うっざい事になってるわ」

 靴を履き替えて外に出た第一声はそれだった。

 クラブ活動の勧誘は玄関から校門までの間で行われている。殆どの学生が必ず通るから当然であるが、それだけに、有能な新入生の周りには人だかりが出来るのは仕方ない。

 しかし、通路を塞がれるのは別問題である。部員確保に躍起になっている学生は周りが見えておらず、浩明の他にも迷惑している人達がいる。

 そして、複数人指名の中心人物は、

「やめてください。離して!」

 その全ての申し出を断るように拒否の動作をとり続けている。

 ―仕方ない

 浩明は、厄介事に自らクビを突っ込む自分に諦めのため息を漏らした。




「街灯に群がるヤブ蚊同然の皆さ~ん!

存在自体が邪魔ですから消えてくださ~い!」

 大きいとは言えないが声が痛烈な批判込みで響き渡った。

 人間というのは自分に向けられた罵詈雑言に対かしては地獄耳だ。一瞬にして出来た静寂がそれを物語っている。

 それまで、ドラフト強行指名の掴み合いをしていた人達は動きを止めて、声の主である浩明に視線を向けた。

 その視線をあびながら、浩明止まった集団の間を縫うように割って入っていく。

 人だかりのなかから、

「おい、あいつ普通科の星野だろ?」

「何しに来たんだよ?」

 聞こえてくるひそひそ声を無視して歩き続けて、人だかりの中心にいた指名相手の女子生徒の前で足を止めた。

「行くぞ」

「え、あ、あの?」

意図が分からない女子生徒は、どう声をかけていいのか分からずにいると、浩明はその腕を掴んでその場を離れようと歩き始めた。

「ちょっと待てや」

 しかし、すぐに呼び止められた。

 浩明の行動に対して、人だかりのなかのひとりが声をかけてきた。

「何勝手に連れていこうとしてんの?」

「そうだ、部員勧誘の邪魔すんなよ!」

 第一声をきっかけに人だかりから、浩明に向けて非難を浴びせ始めた。

 しかし、

「部員勧誘? 公開痴漢プレイの間違いじゃないっすか?」

 口の端を歪めて、意地悪く笑みを浮かべて反撃した。

「!!」

 思わぬ切り返しに全員が黙り込んだ。

「なかなかいい見せ物だったじゃないの。嫌がる彼女の体を集団で撫で回すって教育の現場でそんなモノが見れるとは思わなかったぜ……あぁ、もっとも」

 浩明が言葉を区切って、後ろにいる女子生徒を視線を向けて、全員の意識を女子生徒へと向けさせた。

「実は、このお嬢ちゃんが公衆の面前で辱めを受ける事に性的興奮する体質だと言うなら野暮な真似だった?」

 浩明の後ろに寄り添っている彼女の方を向いて目線で確認すると、顔を真っ赤にして全力で首を振って否定した。

「という事は……あぁ、残るはここにいる皆さんは、腐女子向け小説にしょっちゅう出てくる片思いの女の子を権力を傘に束縛し監禁して苛め倒し、ちょっと優しい顔して籠絡するドSタイプだって事か、それならさっさと自殺でもして、乙女ゲーにでもエロゲの主人公にでも転生すれば? 君達好みの「私の王子様」なんて妄想してるドM女相手に壁ドンでも床ドンやってハーレム作ってろ。乙女ゲーの中なら例え監禁しても愛だって押し通せるんでしょうからね」

「テメェ、黙って聞いてりゃ好き勝手言いやがって!」

 それまで言われるがままだった人だかりの中の一人、柔道着を着ているのだから柔道部の部員が浩明の胸ぐらを掴んできた。誰も彼を止めないのは、全員が浩明に対して、彼と同じ思いを抱いてるに違いない。

「まぁ落ち着きたまえ。お若いの」

 しかし、浩明は動揺する事なく柔道部員の腕を掴んで力を込める。

「あだだだ!!」

 途端に柔道部員の顔が苦悶に歪み、思わず掴んでいた手が離れた。

「ならば私とこのお嬢ちゃんを納得させる説明をしてくれないかな?」

「説明?」

 今度は女子サッカー部員が声を上げた。……部員勧誘の為とはいえみんなユニフォームを着ているのはご苦労な事だ。

「そう、このお嬢ちゃんの意志を無視してまで自分の部に引き入れようとする目的を説明をしてもらおうか?」

「!!」

 途端に困惑の視線が浩明に注がれる。なかには「ウソでしょ?」という声まで聞こえてきた。どうやらかなりの有名人のようだ。

「お前……、彼女が誰か知らないのかよ?」

「知らないねぇ、会った事のない人間の顔を知ってると思う……あぁ、なるほど」

 反論しかけて、納得の声をあげる。

「つまり、部のマスコットに仕立て上げるつもりだったわけだ。確かに見た目はかわいい部類にはいりそうだしね。中身はしらないけど」

 見定めるようにしてその女子生徒を見る。セミロングの髪型、幼さの残る風貌で、おどおどとしながらも事態を見守る姿は、守ってあげたくなる要素を過分にふくんでいる。

「彼女を餌に更に部員確保、なおかつ戦力として上手くいけば一石三鳥、彼女の商品価値を最大限に利用した戦略だね」

 どうやら図星だったらしく、みんな口を噤んだままで浩明から視線をそらしている。

「ちょうどいい、せっかくだから彼女の意見を聞こうじゃないか」

 後ろにいた女子生徒にみんなの視線を向けさせた。

「あ、あの」

 周囲から向けられた視線に戸惑いの声を挙げる。

「さてお嬢ちゃん、君はどのクラブに入るつもりだい? ここにいる全員に聞こえるように大きな声で言ってくれないかい」

「え、ええぇ!」

「はっきりと言ったほうがいいよ。それとも、入りたくもないクラブに無理矢理入れられて利用されたいなら話は別だけど?」

 おどおどしていた女子生徒だったが、浩明の言葉に周囲を一度見渡すと、

「ごめんなさい。私、魔法工学部に入るつもりなんです!」

 上半身を90度に折り曲げて謝った。

「どうやら答えが出たみたいっすね」

 「我が意を得たり」と肩を竦めて言った。

「おめでとう、これでこの一件は解決だ。それじゃあ失礼しますね」

 浩明としては問題は解決したから帰ろう。そのつもりであったが、

「おい待て!」

 どうやら簡単に帰してはくれないようだ。


早めの投稿を目指して頑張ってみました。

ひねくれ者が人助けするとただではすみません……

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