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新木場からおはシャッスです!
何故に新木場かは察して頂けると嬉しいです。
今年最後の投稿(予定)はラッキースケベ到来です!
あまりにも主人公が痛すぎる……
自分の体が揺らされている感覚に、心地よいまどろみがさめようとしていた。
そしてとどめとばかりに頬を軽く叩かれながら
「お嬢ちゃん、お嬢ちゃん」
と、自分が呼ばれている事に意識が徐々に現実に戻されていった。
寝起きの良い凪は、家族に起こされる事が殆どない。まして自分が「お嬢ちゃん」と呼ばれる事など皆無に等しい。自分ががそう呼ばれている事に気付くのに寝起きの頭ではどうしても数分はかかる。
「もう~、せっかくの休みなんだから……」
寝ぼけ眼を擦りながら声のする方を見ると、しゃがんで自分と同じ目線にいる見ず知らずの男の子と、その男の子の後ろから男性と女性二人の三人が、自分を覗き込むように見ている。
「ちょっと、あんた達誰よ? 人の部屋に勝手に入って……」
「その台詞、そっくりそのまま聞き返していいかな?」
「はぁ?」
安眠を邪魔された事にムッとした口調で聞いてきた質問に対して、呆れたような笑みで質問を返してきた。後ろにいる三人も失笑している。
―この男は何を言ってるんだ?
寝起きでまともに思考が追いつかない凪だったが、意識がはっきりとしていくうちに、周囲を見回しながら自分の状況を確認していくと、凪は息をのみ、頬が一気に真っ赤に染まっていった。
―やっちゃった!
女性が異性に見られたくないものひとつに、自分の寝顔がある。 気心の知れた友人でも恥ずかしいのだが、見ず知らずの男性に見られたものなら、「穴があったら入りたい」どころではない。自業自得とはいえ年頃の凪には耐えられない事であり、自制心を無くすには十分であった。
そんなパニックを起こした彼女がまず取った行動は
「いやあああぁぁぁ!!」
目の前にいた男の子の頬に平手打ちだった。
「おっと」
思わず声を漏らして、後ろにのけぞり、少女の平手打ちから逃れた。
―見誤ったな
座敷童どころかとんだじゃじゃ馬だ
寝顔を堪能させてもらった報酬が「ビンタ一発」とはいくらなんでも割に合わなさ過ぎる。宥めようと声を掛けようとした浩明の目に映ったのは、少女の左腕にはめられていたコンバーターだった。しかも術式変換を始めた、発動まで後僅かの状態。とっさに後ろにさがり、三人を庇うように構えた。
―逃げなきゃ!
平手打ちがよけられてのけぞった隙に、コンバーターに魔力粒子を送り込み術式変換を行う。三人に危害を加えるつもりはない。ここから離れる僅かな時間が得られればそれでいい。
相手の男の子が、私がコンバーターを起動させた事に気付き、下がって私の魔法に対して構えた。
「術式起動!」
チャンスとばかりに凪は魔法を発動させた。
発動するのは閃光魔法、その名の通り強烈な光による目眩ましを目的とした魔法だ。魔力粒子の変換量によって光の調整ができ、場合によっては失明させる事も可能である。今回は、時間稼ぎが目的なので、すぐには視力が戻らないように調整する。
―ごめんなさい
目の前の三人には届かないだろうが、心の中で謝ってから閃光魔術を発動させると同時に入ってきた窓へと体を向け、足を踏み出したところで視界が反転した。
分の悪い賭ではないが、逃げる方にヤマを張っていて良かった……と浩明は目の前の少女を取り押さえてから息を吐いた。
コンバーターを起動した時点で、彼女の取ろうとしている手段は逃げるか徹底抗戦に絞られる。魔術師か分からない実力未知数の四人を相手にするか、逃げるかと聞かれたら間違いなく後者を選択する筈だ。逃げるのも問題があるとは思うが、それはこの際、横に置いておくとして、少女の術式起動に対して浩明が取るべき行動は逃走ルートを塞ぐ事だ。
何の魔術を発動させるか分からないが、少女が術式発動を行うと同時に、少女と窓の間の直線を塞げば取り押さえるのは容易である。
浩明と少女までの間合いは約1m、少女から窓までが1m50cm、少女に悟られないように身体強化魔術を発動させ、浩明に向けられていた右手に意識を集中させて構える。
少女が目を瞑ると同時に素早く少女の逃走経路をふさぐように窓に背を向けて構えた。
しかし、この時、浩明は致命的なミスをふたつ犯した。ひとつは少女が発動させる魔術の内容まで把握しておらず、炸裂閃光魔法で視界を一時的に失い、結果自分の触れた感覚だけで取り押さえにいってしまった事、もうひとつは、その結果どんなオチに見舞われるか考えていなかった事。そう、浩明の右手は、捕まえるために押し倒した少女の左胸のやわらかいものを押さえていた。
凪はどうしていいか分からなかった。
炸裂閃光魔法は両刃の剣とも言われている。発動させた強烈な光は一方だけではなく全方位を照らすため、発動させた術者自身をも巻き込んでしまうからだ。
光から視界を守ために一瞬の間だけ目を瞑った瞬間に、まさか逃走経路が塞がれ、逃げられないように押し倒されていた事に加え、更に左胸まで押さえつけられているのだから。
結果的に押し倒した件の人物は、凪の胸から揉んでいた手を離して、感触を確かめるように指を二~三度動かすのをまじまじと見てからから一言、
「その胸、本物だったんだ……」
頬を真っ赤にして、目の前の男の子の左頬に思い切り平手打ちをいれた。
回想編は次で終わる予定です。
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