神のダーツで魔王討伐RTA
おもいつき。もうありそう。
目が覚めると一面真っ白な世界だった。
〜こちらを向きなさい〜
今まで感じたことのない感覚で声が届いた。
その瞬間何もなかったはずの正面によく認識できないがとても美しい気がする女性と大小さまざまに区切られSSSからBの文字が振られた円盤があった。
「面倒ですので、質問が受け付けません。このダーツを投げて刺さった場所に沿ったスキルを与えるので、それで持って魔王を倒してきなさい。」
気が付くと手になんかすんごそうなダーツがあった。
有無を言わさぬ様子の女性に促され、気付いたら回転していた円盤に向かってダーツを投げた。
ダーツは素人が投げたとは思えない速度で……明後日の方向へ飛んでいった。
「言い忘れていましたが投げられるのは1回だけです。特別なスキル等ございませんが、健闘と勝利をお祈りいたします。それでは」
女性がそう言い切った瞬間、足元にちょうどいいサイズの穴が空き俺はどこかへと落ちていった。
「はぁ、あのダーツはどこまで飛んでいったのでしょうか……」
彼女のつぶやきは誰にも聞かれず、真っ白な空間へと溶けていった。
(……ルアップしました。レ……)
頭の中がうるさい。そう思いつつぼーっとしていたが延々と変な音は鳴り続けていた。
(……ルアップしました。レベルアップしました。レ……)
ふと、手になにか持っている感触があったので面倒だが確かめることにした。
手に持っていたのはスキルを決める時のダーツだった。
1つ異なる点があるとすればそれは、禍々しい赤黒い液体でデコレーションされている点だ。
「これ、確実になんか殺っちゃってるなぁ……」
さっきから聞こえてるこれは、いわゆるレベルアップ通知のようだ。だいぶんライトな制度の異世界みたいだ。
まあ、世界観がライトとは限らないのだが。
ダーツに強く意識を向けるとダーツの詳細について頭の中に思い浮かんできた。
雑にまとめるとこんな感じだ。
名称:神のダーツ
特性:自在、必中、必殺、貫通、帰還
どうやら、持てば自由自在に扱え、必ず当たり、必ず殺し、好きなだけ貫通し、戻ってくるらしい。
思い浮かんだのは特性:自在のおかげじゃないだろうか。
「下手なスキルよりやばいんじゃないかなこれ」
あまりにぶっ飛んでいることにひとりごとが漏らしながら、じゃあなんであの時パジェロは貰えなかったのかなどと考えていると、レベルアップ通知が終了していた。最後に「魔王討伐に成功しました。」と告げて。
どうやら円盤を外したダーツは行く予定の世界に飛んで行き、魔王に当たって帰ってきたようだ。
状況が把握でき少し落ち着いたので周囲を見まわしてみた。
辺り一面の草原で人工物の一つも見えない。
途方に暮れていると空から一枚の手紙が落ちてきた。
手紙にはこうあった。
魔王討伐の成功おめでとうございます。
記録は-5秒です。
神会会議の結果、故意ではなく事故なので討伐成功は認証。
ただし、参考記録扱いとなりました。あとは好きに生きてください。
以下 インシデント報告書速報版抜粋
スキル円盤を外れたダーツは転移のため接続されていた世界へ侵入。
侵入後投げられた状態のため必中効果が発動。
対象が指定されていなかったため「神の敵」である魔王をターゲティング。
数秒後魔王に到達、必殺効果が発動。討伐成功。
なお、ダーツに関しては神界においてはある程度真っ直ぐ飛ぶ以上の効果は無く、神界の物質が下界に直接顕現した結果、保有エネルギーにより効果が発生したものと思われる。
再発の防止と改善に努めることをここに誓います。
手紙からは好きに生きて良いこと、ダーツはこの世界のどこからでも対象を指定して投げるだけで必中し必殺できてしまうことぐらいしかわからなかった。
討伐が認証されなかったらどうなるのか、成功したら何があるのかとか何も分からなかった。
あと説明をちゃんとすることを誓え。
手紙を読んでいて馬鹿らしくなった俺は、レベルアップの影響か力が漲る身体が元気なうちに人里に向かうことにした。




