7_冷徹令嬢はパートナーをゲットしました!
「どうぞこちらにおかけになって。相談や商談の時に使っている部屋です。」
「ありがとう。」
室内は店内の3分の2ほどの広さだが、テーブルとイスが4脚置いてあるだけのシンプルな部屋だった。
「店内は見なくて大丈夫ですか?」
「入ってきたら気づきますから大丈夫ですよ。」
女性はにっこり微笑むと紅茶の用意をもって椅子に腰かけ、ベールを脱いだ。
ベールを脱いだ彼女は、年齢はわからないが20世以上の女性の様だ。深いモスグリーンの胸元までの髪の毛。瞳は吸い込まれそうなアメジストのような瞳、唇はぽってりとしており、睫毛もふさふさでとても色っぽい容姿をしている。体格も出る所はしっかり主張しているので絶壁のようなチェリーナはとても羨ましいと感じる。
「初めまして。私から名乗ってよろしいのかしら?」
「・・私はチェリーナ・エンハンス。エンハンス公爵家の娘です。貴女のお名前を教えてくださるかしら?」
「ありがとうございます。私はローリー・マライセルと申します。公爵令嬢に見合うようなおもてなしはできませんけれど良ければお茶をどうぞ。今日はどのような石の話をご希望ですか?」
ローリーは貴族の挨拶を守ってくれたが、普通であればこのような市内の路地裏の店でそこまで畏まる必要もないような気はした。しかし、それなりの話になる・・という事なのだろうか。
「ありがとう。いただくわ。――この店に売っている貴石には力が宿るとのことでしたので、帝国の女神の授けた石のように、もしかしたら同じ力が付込められているのかと思ったの。どうかしら?」
チェリーナはあくまで世間一般の皆の知っている話題で入って様子を見ることにした。
「ありませんよ。そのような力。魔法を付与できる者がいなければ不可能ですから。」
(――魔法!!やはりこの石には魔法が付与できる?!)
「まあ、魔法という力を削の石には込めることもできるのですか?」
「はい。可能です。女神の授けた石と貴石は同じ種類の石ですから。」
ローリーは隠すことはないかのように魔法の話を返してくれる。
「マライセルさんは、魔法を付与できないの?」
「ふふ。マライセルなんて呼ばずにローリーと呼んでくださいな。――私は魔法は使えませんよ。伝道者ですから。」
「伝道者?それはどんな人の事をいうのですか?ローリーさん。」
「ローリーで良いですよ。伝道者っていうのは、女神の創造の力を感じ事ができる一族の呼び名ですね。魔法使いが世に現れた時に補佐するために、昔から帝国の元で魔法使いを探し、見つかったら仕えて補助してきたんです。私はその一人です。」
「魔法使いを補助する方なんですか・・あの・・・私にそのような大切なことを教えてしまって良いのかしら?。」
「えぇ。問題ないですよ。貴女が魔法使いだと存じていますから。」
「!!!!!」
突然自身の正体がバレたことにチェリーナは焦りを隠せなかったが、ローリーは気にもせず話を続ける。
「先ほどもお伝えした通りです。私にはオーラが見えるんです。魔力のオーラがね。」
「魔力のオーラ?・・・まさか・・この炎が見える?!」
「はい。見えてますよ。今は綺麗な明るいオレンジでとても濃い色なので物凄い魔力を持っているんですね。」
「・・本当に見えるんですね・・そうです。私の魔力はとても多いと思います。だから、持て余していて、石に魔力を込められたら他の誰かのために役立てられるかと思ったんです。それでここに来ました。」
「ふふ。流石魔法使いですね。」
「?――それはどういう事ですか?」
「魔法使いは、心の優しい人がなれると言い伝えられているんですよ。ただ優しいだけじゃダメなんですけどね?それでも、優しい人であることは第一条件のようなものらしいんです。女神が人々に魔力を分け与えたのは、ただ困っていたからじゃなくて、人々が自分を犠牲にしても他者を救いたいと願うような心優しい人たちだったかららしいんです。」
「・・・素敵なお話ですね・・」
「・・そうですね。私にはそんな自己犠牲無理ですが、その位のやさしさを持っているという事なんでしょうね。
それで、お嬢様は魔力を石に込めてどうしたいんですか?」
「・・どうするか・・ですか。――まだ決めていませんが、困っている方に渡してあげたいとは思いますね。」
「それは優しいお考えですね。・・ただ先日も言いましたが、ただ渡すだけだとどの力は災いにもなりかねないと思いますよ?」
「――大いなる力には大いなる責任という・・話ですか?」
「そうです。人々は感嘆に願いが叶う石を手に入れれば楽をして堕落するでしょう。楽をさせることが人々の幸せなのではありません。
目的を持ち、自らが使うことに責任をもって使えなければ毒にしかなりません。」
「・・そうですね・・でも今の私はまだ未熟で視野が狭いので今の私では魔力を石に付与してもその取扱いは悩ましいわ・・」
「ふふ。だから私がいるんですよ。
お嬢様。私とパートナーになりませんか?あなたをサポートして、魔力の石を流通させるパイプを私が担いますよ!」
「――パートナー・・元々私をサポートしてくれるんじゃないんですか?」
「勿論サポートはしますよ?ただ、伝道者は私だけじゃないので、私がお嬢様のパートナーになれば常に私が相談役というわけです!」
「専属契約をしたいという事かしら?」
「お話が早くて助かりますわ。はい。私を専属にして下さい。」
「そうですね・・・・・わかりました。であれば、専属を任せられるか、まず私を試しにサポートしてもらえるかしら。今から一度石に魔力を込めてみたいわ。」
「承知いたしました。では丁度よいものを持ってきますわ!少々おまちになって。」
ローリーは立ち上がり店頭からいくつか石をもって戻ってきた。
「このあたりの石なんて良いんじゃないかしら?小さくて、そんなに魔力は入らないと思うから、魔力を使っても一回くらいで底をつくと思うわ。」
「やってみましょう。入れることはできると思うけれど、加減ができるかが不安だわ。」
「そうですね。石は沢山あるので感覚で覚えてもらっても良いんですけど、一回に魔法で使う魔力をイメージできたら早いですね。」
「一回分のイメージ・・・多分できる気がするわ。やってみましょう。」
チェリーナは石を一つ掌に乗せると、一回に使う魔力のイメージをしてその力を石に込めたいと祈った。
すると石がオレンジ色に淡く光り成功したようだった。
「――やったわ!」
しかし、その瞬間ぴしっと石はひび割れ使い物にならなくなってしまった。
「!!!・・割れてしまったわ」
「力が多かったんでしょうね。もう少し減らせますか?」
「えぇ。もう一度やってみましょう!!」
先程は一回浮く時の魔力量をイメージしたのだが、それが大きすぎたのであれば、火をつけるくらいの魔力量にすることにした。
今度は石は少しオレンジ色に光っている程度だったが、割れることはなかった。
「・・成功・・したのかしら?」
「そうですね。もう少し込めても良さそうですが、最初でこれなら上出来ですよ!魔力コントロール上手なんですね!」
「毎日特訓しているので!」
「・・・特訓?いつからですか?」
「半年と少しかしら。体力が元々なかったから、体力トレーニングしながら今も毎日特訓はしているの。」
「・・・凄いですね・・・誰にも教わらずに半年程でここまで独学で魔力コントロールまでしてしまうなんて・・」
ローリーは驚愕したが、チェリーナはそれがどんなに凄いことなのかは知る由もなかった。
「・・では魔力の込められた石が本当に使えるか試してみましょうか!
ローリーはそう告げると左手に石を握り右手をティーカップにかざした。
――すると、ティーカップの中の紅茶が凍ってしまった。
「!!・・・・これは成功?で良いのかしら?」
「はい。成功しました。私はこの紅茶を凍らせたいと祈ったので。」
(――すごい!!本当に魔法が使えない人でも魔法が使えたわ!!)
「今回は誰もけがをしたり具合が悪かったわけではないので、癒しや回復としては使いませんでしたが、生活魔法もこれなら使えるかもしれませんね。
それでも最初は癒しという目的で人々には石を渡していった方が良いでしょうね。」
「そうですね!後は色々ルールも決めた方が良さそうですし・・」
ローリーの言葉に今後の目的が定まってきた気がした。
「私はパートナーとしてお役にたてそうかしら?石の収集も、販売経路や渡し方は私がお役に立てると思いますよ?」
「えぇ。是非お願いしたいわ!よろしくね!ローリー」
「こちらそ。素敵な魔法使いのお嬢様にお仕えできて光栄ですわ!」
二人はこれから先の明るい未来に微笑み合うのだった。




