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47_断罪












 皇宮へ到着した3人は状況確認をしたかったが、3日後に再度登城するように命じられた。





 3人は再度登城すると、謁見の間へ兵士によって案内される。


 

 謁見の間にはすでに皇帝、皇太子、宰相、他忠臣の面々が揃い話を始めていたようだが、

3人の入室と共に謁見室の中はしんと静寂に包まれた。



 玉座の前まで歩みを進める3人をじっと皆見つめるものの、殺気は特に感じられない。




 「跪礼(きれい)は不要だ。面を上げなさい」


 玉座のすぐそばまでたどり着くと3人は頭を垂れるが、皇帝の言葉に3人は慎重に面を上げた。




 「チェリーナ・エンハンス。いや、魔法使いよ。此度は帝都全体を毒で汚染されてしまったというのに迅速な対応と情報共有、そして浄化活動まで行い、帝国を危機から救ってくれたこと心から感謝する。」




 「皇帝陛下。勿体ないお言葉でございます。

 私は女神様より授かった力を正しく行使するため、責務として当然の事をしたまでです。毒による被害者は無事なのでしょうか」




 「亡くなった者も数多くいたが、そなたが尽力してくれた後は死亡者の報告は一切入っていない。1週間は様子を見るが、治療を希望する者もいないからもう安心だろう。そなたには何か褒美を授けたいのだが、何か望みはあるか?」




 「勿体ないお言葉です。もし可能でしたら2つお願いしたいことがございます。」




 

 「――2つ?申してみよ。」


 チェリーナの言葉に一瞬皇帝は目を見開いたがすぐに機嫌よく笑った。





「1つは今回罪を犯した者たちへの断罪する権限をいただきたいのです。」



 「断罪をしたいのか?!帝国を危険に晒した者たちの罪は軽いものにはできない。令嬢にその責任を負う覚悟があるのか?」


 


 「覚悟の上でございます。断罪する権限がいかに大きな責任を負う事か理解した上でお任せ頂きたいのです。」




 「・・・・簡単に了承することはできないが、今から首謀者をここへ連れてくる。そこでどのような断罪をするかでそのまま任せるか判断するでもよいか?」

 皇帝はしばし逡巡している様子ではあったが、曇りなきチェリーナの眼に信じてみたいと受け入れることができた。





 「それで構いません。」





 「よろしい。ではあと1つは?」




 「あと1つは、私が2名の仲間と共にアルダナ森林含め帝国の治安、慈善活動に積極的に関わる権利をいただきたいのです。」



 「・・・それは褒美と言えるのか?――こちらが頼みたいような内容だが?」



 「私の力は女神様の祝福により(もたら)されたものです。この力は帝国の民を守ることに使うべきものです。ただ、私一人では不安なので、今まで共に力を合わせてきた仲間たちと、これからも帝国を守りたいのです。」




 「良いだろう。その仲間と申す者たちは誰だ?」



 「――申し上げます。ヴィンセント・ヨーゲンバレン、オーウェン・エンハンス、そしてマライセル一族の者たちです。」

 チェリーナの言葉にヴィンセントもオーウェンも思わずチェリーナを見つめる。


 彼女は凛とした表情で、堂々と皇帝に希望を述る。2人はチェリーナとの絆にじわりと心が熱くなるのを感じていた。



 

 「成程、よろしい。では未来の夫と兄と、共に国を守りたいと申すのだな?」



 「左様でございます。」

 チェリーナは狼狽えることなくきっぱりと返答する。




 「ヴィンセント・ヨーゲンバレンは帝国騎士統括ではあるが、そなたと出歩いていようとも職務は真っ当できるだろう?どうだ?ヴィンセントよ。」

 にやりと笑いながら皇帝はヴィンセントを見る。




 「はっ。帝国騎士団をまとめつつ、魔法使いを全力で支えて参ります!」

 ヴィンセントははっきりと意思を示し、その意思の強さは彼の眼差しで証明されていた。





 「オーウェン・エンハンスも皇太子の側近候補ではあったが、今後も皇太子を支えてくれるのであれば認めよう。どうかな?」



 「私はこれまで同様皇太子殿下のお力になれるよう尽力致します。そして命を懸けて魔法使いを守ることをお許しください。」

 オーウェンの瞳にも揺るぎない意思の強さが現れていた。




 「よろしい。では2名をチェリーナ・エンハンスの仲間兼護衛として認めよう。マライセル一族は私の許しなど必要はないだろう。好きにしたらよい。」




 「ありがとうございます。」

 チェリーナは微笑み皇帝に頭を垂れた。




 「よし。では宰相罪人を呼び寄せよ!」




 「仰せのままに」

 皇帝の命令で宰相は部下にすぐに指示をだし、すぐに罪人たちは連れてこられた。







 「皇帝陛下。罪人が到着いたしましたので入室させます。よろしいでしょうか?」




 「通すがよい」




 謁見の間の扉が開かれると拘束され連れてこられたのは第2皇子、ゼリス・アルガン、他16名の第2皇子に雇われた者たちであった。



 皆食事をまともに取れていないのかやつれてはいるようであったが、特に第2皇子の殺気はこれまで同様凄まじい。



 罪人を連れてきた兵士たちが、罪人たちを跪かせるといよいよ断罪が始まる。






 「それでは魔法使いよ。そなたがまずどのように断罪すべきか私に申してみよ。」




 「承知いたしました。


 私は罪人全員の過去を奪い、一から帝国民として私が預かりたいと思います。」

 チェリーナの言葉に皆騒然とする。




 しかし、皇帝陛下が手を上げるとピタッと声は止み、静寂が謁見の間を支配する。




 「――どういうことだ?」

 皇帝は怪訝な面持ちでチェリーナの説明を求めた。




 「私は精神干渉系の魔法も扱うことができます。ですので、記憶を全て消し去り精神を赤子からやり直させようと思うのです。

 罪人たちは無能なわけでなく、様々な環境での育ち方で歪んでしまった可能性がございます。


 私が全て記憶を消した後に、マライセルの者たちの手で正しく厳しく育て上げ、いずれ帝国の役に立てるように育て上げたいと思うのです。」



 「・・・・そんなことが可能なのか?」



 「お任せください。―――ただ、もし環境を変えても歪んだ精神しか育たないと判断した場合は、幾度となく記憶を消してやり直させます。

 その場合、精神干渉系の魔法を何度も行使しますので、体への負担は大きく、繰り返した最後は廃人となる可能性は高いです。


 ですので、あくまで更生の機会を与えると同時に、確実に争いの目を摘み取るというものです。

 殺せば遺恨が少なからず残ります。生きて償う事こそ苦しい道ではありますが、光もあるのです。


 どうか私にお任せいただけないでしょうか。今すぐ魔法で記憶を消して御覧に入れましょう。」




 「な?!!私は第2皇子だ!!記憶を消すなど・・・マライセルの下に就くなど!!絶対にあり得ぬ!!」



 「黙れっ!よいだろう。であればケヴィン・ヨーゲンバレンの記憶を今すぐ消してみせよ。」




 「承知いたしました。」

 皇帝陛下の許可を得るとチェリーナは第2皇子の前に歩み寄った。手をかざす必要すらなかったが、皇帝へのアプローチとして敢えて手をかざし、魔法を発動させる。




 「いやだ!!いやだ!嫌だ!!やめ・・・ろ・・」


 柔らかい光が第2皇子を包み込むと、暴れていた第2皇子はすうっと意識を手放し兵士に抱き留められた。



 周りの者たちは目の前で見せられた魔法に目を疑っているのか動揺しているのがよくわかる。

 他の罪人たちも顔面蒼白でブルブルと震えあがっている。




 「ケヴィンを起こせ!!」




 皇帝の言葉により兵士によってケヴィンは起こされると、そこには言葉もしゃべれぬ大きな赤ん坊が座り込んでいた。





 「――皇帝陛下。この者の名前はいかがいたしましょうか?」




 「・・・・・私が付けても構わぬのか?」

 チェリーナの問いに皇帝の瞳は揺れた。

 たとえ悪事を働いた罪人であっても、愛し合う皇后とのあいだに生まれた唯一の子供であった。皇帝が我が子を愛していないはずなどない。




 「はい。是非お願いいたします。これから皇位継承権を剥奪されたとしても、皇帝陛下のお子に変りございませんので。」





 「――ではその赤ん坊をアルヴィンと名付ける。―――・・・感謝する」

 皇帝の瞳はほんの一瞬だけ悲し気な表情を見せた後に居住まいを正し表情を戻した。 




 「アルヴィン。貴方はこれから私たちの仲間ですよ。」

 チェリーナが優しく微笑みながらアルヴィンの頭を撫でてやると、「あー!うー!」と無邪気に笑う大人の赤ん坊なアルヴィンがいた。





 「素晴らしい更生の機会を与えてくれる魔法使いに感謝すると良い!残りの罪人たちの名づけは魔法使いに任せよう。

 すでに罪の証拠も揃っているのだ。この断罪は過去に例を見ぬ平和的なものとなった!

 帝国を救った魔法使いが自ら断罪したのだ。帝国民で納得せぬものはおらぬであろう!以上だ!」




皇帝陛下が去ったのち、チェリーナはローリーに念話で話をしてマライセル一族の数10名を登城させた。


 そしてローリーの指示の元、チェリーナの魔法により大人の赤ん坊となった罪人たちをエルネイ領の基地に連れ帰るのだった。




 





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