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45_帝都の混乱









 「許されない・・・私を臣籍降下だと?!・・・私の有能さが理解できないクズどもは死ねばよい。


――私とチェリーナだけで良いのだ!毒にまみれて死ぬがいい!!


ふふふ・・・はは・・・ははははははははは!!!」




 扉の前まで聞こえる第2皇子の狂言に、ドアの前で見張りをしていた衛兵たちは顔を青くさせていた。




 第2皇子の自室での発言は皇帝、皇太子に報告されていたが、謹慎処分を下されていたこともあり油断があったのだろう。


 ――狂言と片付けられ、すぐに真意の追及を受けることはなかった。






***





 チェリーナとヴィンセントの婚約が内定した日の夕刻頃、急に帝都中で原因不明の嘔吐と下痢に苦しみ、死亡する民が急増していると皇宮に連絡が入った。





 嘔吐と下痢の症状がはやり始めたあたりでチェリーナは昼頃には毒の気配を感じ取っていた。


 あり得ないことに、帝都中の水に毒反応を感じられた為であった。


 至るところで毒を感知したことで、恐らく広範囲の毒攻撃を何者かによって引き起こされたのだと察する。


 しかしあまりにも範囲が広く、大元がどこか定めることができなかった。





 チェリーナは被害を少しでも少なくするために、直ぐに家族とエンハンスに仕える使用人含む人々に状況を報告し、その家族たちが苦しむことがないように、早急に公爵邸に避難するように指示を飛ばした。


 間に合わない人々も多かったが、それでも飲む量が少なかったため、すぐに魔法で解毒することができて事なきを得ていた。



 チェリーナは一番毒反応の強い場所を確認する必要があった。


 なるべく早く対処できるように皇宮へもヴィンセントを通して状況の報告を急いだ。




 『チェリーナ!恐らくこれは謀反に違いない。オーウェンと離れず気を付けてくれ!!』

 ヴィンセントは事態の重大さを確信し、チェリーナの身を案じずにいられない。



 『わかったわ。一人では立ち回らない。貴方も気を付けてね?』



 『わかったよチェリーナ!何かわかればすぐ教えてくれ!』




 ヴィンセントに皇宮の対応を任せると、チェリーナはオーウェンと共に帝都の地図を引っ張り出して毒を撒くとしたらどこが適切なのか調べることにした。



 エンハンス公爵 (タウンハウス)では、チェリーナが大きな樽をいくつも魔法で創り出し、その中に入れた毒水を浄化して飲み水を用意した。



 その様子を見た使用人たちは感嘆の声を漏らし、魔法使いの存在に歓喜していた。




 早急に対処できることを済ませる間に、オーウェンはローリーに連絡を取り、毒による謀反が発生したことを共有していた。






 『今、チェリーナが我が(タウンハウス)にて保護した人々に浄化した水を配れるように用意してくれている。

 ――そっちは何かわかったか?』


 


 『実は今朝部下から連絡が入って、ゼリス・アルガンの手の者が帝都内に配水される配水池の数か所で発見されて、捕縛したと連絡があったの。

まさか毒を撒いているなんて思わなかったからまだ毒に関しての尋問はしていないけれど、今から早急に吐かせるわ!』



 『配水池だと?!・・・まさか大元を汚染させたというのか?!』



 『恐らくそういう事ではないかしら。まだそのことは尋問できていないから断言はできませんが、配水池を訪れるなど不振極まりない行動ですから、ほぼ間違いないのではと思います。』




 『――わかった。詳しいことは都度念話するから返答できる状況ではいて欲しい。あと、癒しの貴石(パワーストーン)であれば、毒被害にあった人々の治癒にも役立つだろう。

 今ヴィンセントが皇宮で指示を出しているから、皇宮にありったけの癒しの(パワーストーン)を届けてもらえるか?』 



 『承知致しました。すぐに対応しましょう。皆さまもお気をつけて!念のためそちらに預かっていたチェリーナ様の回復用の貴石(パワーストーン)も部下に届けさせますね!』




 『助かる!もうすでに人々の目にもチェリーナが魔法使いであることは知られている。だから隠れて動く必要はもうない!兎に角迅速に頼む!』


 オーウェンはローリーとの念話を終えるとすぐにチェリーナに報告をした。



 「―――やはり大元はすでに毒で汚染されてしまっていたんですね。

 お兄様。帝都の配水池は何か所あるのでしょうか?」





 「帝都の配水池は2か所しかない。1つは皇宮用。もう1つが帝都内全域用だ。」



 「2か所ですか・・・皇宮の被害はまだ出ていないのですか?」


 「あぁ。どうやら先に帝都全域に回る大きな配水池を選んだようだ。帝都の東、この位置に配水池はあるはずだ!」




 「わかりました!では今すぐ参りましょう!お兄様も来ていただけますか?」



 「勿論だ。一人でなんて行かせない!」


 2人は頷き合うと透過することなく手をつないで飛空魔法で目的地へと急ぐ。




 2人を見送る人々は、神々しい2人の姿に「聖女様が現れた!!」「女神様の使いだ!!」と歓喜し、飛び去る2人を見送るのだった。








 ***




 「ここが配水池?!」


 いくつかの池が存在しており、透明な水からは濃度の濃い毒を感じられる。




 「・・俺には普通の配水池だが・・・やはりここが汚染されているのか?」



 「はい・・・間違いないです。全ての池から非常に強い毒反応を感じますわ。」



 「かなり大きな池だが・・全て浄化するつもりか?」



 「当然です!この位できなければ帝都を救うことなどできません!

 ・・・恐らく後で必要になるでしょうから、ここはすぐに浄化致します!」


 上空からチェリーナは池に向かい片手をかざす。



 ぽうっとかざした手が光ったと思うと全ての池から暖かい灯の光が浮かび上がる。



 「す・・・凄いな・・・美しい・・」



 その光景はとても幻想的で、水面を反射して更に温かい光は眩しく輝いていた。



 ――――はぁ・・はぁ・・




 「――チェリーナ!大丈夫か?!」



 ふらつくチェリーナの肩を支えると、チェリーナは自身を回復用貴石(パワーストーン)で回復させた。



 「・・・少し毒の濃度が濃過ぎたようです・・でももう大丈夫ですが、念のため皇宮用の配水池も確認していきましょう!」




 「わかったよ。皇宮用はこのもう少し北側に位置しているはずだ。毒反応がなければすぐ(タウンハウス)に戻るだろ?」



 

 「――えぇ。まだ大元を浄化しただけなので、広まってしまった毒はこれから浄化しなければなりませんから・・」




 「―――急ごう!」




 2人は皇宮用の配水池も確認を終えると(タウンハウス)へと戻っていく。







***





 (タウンハウス)へ戻ると、そこにはヴィンセント、ローリー、エリン、そして家族や使用たちが庭に出て対応をしていた。




 「――チェリーナ!!大丈夫か?!」

 チェリーナとオーウェンが庭に降り立つと、真っ先にヴィンセントが駆け寄ってきてチェリーナを抱きしめる。



 「私は大丈夫です。ただ、大元は浄化してきたのだけど、すでに流れ出た毒水や民の浄化はできていないの・・

 皇宮はどうだった?」




 「皇宮は皇太子(兄上)が貴石(パワーストーン)の力を扱えるようになったから任せてきた!だから俺もチェリーナと共にいる!」



 「そうなのね!――死者は出ているの?」



 「・・・配水池に近い場所に住んでいた住民のほとんどは・・助からなかった。

 恐らく毒素の濃度が濃かったんだろうな・・ほぼ全員が亡くなっていた・・。


 今は重症患者を優先で貴石(パワーストーン)を使用して治癒を行っている。兄上だけじゃなく、マライセルも協力してくれているから問題なく対処はできるはずだ!」




 「―――やはり配水池が大元なのよね・・何故このようなことが・・」



 「それは兄上と皇帝陛下とも話をしたが、十中八九第2皇子の謀反で間違いないようだ。謹慎している部屋の中で、【自分とチェリーナ以外は毒で死ぬがいい!】と狂言していたらしい。ローリーから証人も預かっている!」





 「―――なんという愚かな行いを・・信じられないわ・・」



 「あいつはイカれているんだ!自分以外は家畜以下だと思っているからな。」

 苦々しい表情でヴィンセントは吐き捨てる。



 「そんな人の思惑通りにさせるわけにはいかないわね!帝都を浄化しましょう!!」



 「帝都中を?」




 「えぇ。毒水になってしまった以上、全てを浄化するしか方法はありません。」


 チェリーナは強く拳を握りしめ、断言したのだった。













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