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44_2通の求婚状











夜会の翌日、想定通りにエンハンス公爵 (タウンハウス)には皇宮から2通の求婚状が届けられ、姉2人を覗く家族全員が談話室に集まっていた。




 「今朝2通のチェリーナ宛の求婚状が皇宮から届けられた。1通は王命でヴィンセント・ヨーゲンバレン第3皇子殿下体。もう1通はケヴィン・ヨーゲンバレン第2皇子殿下からだ。


 話し合う前に、チェリーナはこの2人のうち結婚したい相手はいるだろうか?」


 公爵はテーブルを囲んで椅子に腰かける家族全員を見回した後、チェリーナに問いかける。



 


 「――私は、どちらかと必ず結婚しなければならない状況でない限りはまだ結論は出したくないです。」

 先日から想っていたことであったが、あまりにも物事が急激に進んでいた為、チェリーナの頭ではまだ整理できていなかったのが一番の理由だった。




 「どちらの王子殿下も気に入らないのか?」


 


 「そういう訳ではございません・・。

 私の力が帝国にどのような影響を与えるのか理解できるようになってきたからこそ、安易に自分の感情のままに結論を出して良いのか判断できていないのです。」

 深刻な表情で告げる言葉に様々な面持ちでチェリーナの答えを待っていた家族は皆表情を強張らせる。



 チェリーナにとっては好きか好きじゃないかなどという単純な話で決めて良い話ではなく、帝国の事を考えて結論を出すべきだと深く考えている。

 その思慮深さは素晴らしいものだが、そこまで考えさせないと結婚自体を決めさせてあげられないという現実に、家族は憤りを感じずにはいられなかった。


 家族にとっては魔法使いどうこうより、【チェリーナ】に重きを置いていたからだ。それは先日の魔法使いであるというカミングアウトの後であっても変わらない家族全員の総意であった。

 



「チェリーナ。それでは結婚の話は抜きとして、貴女が共にこれからも一緒に生きていきたい方はいますか?」

 公爵夫人は優しくチェリーナに問いかける。




 「お母様。私はヴィンセント・ヨーゲンバレンとお付き合いしております。

 これからも共に多くの事を感じ合い、歩んでいきたいです。」

 躊躇うことのない返事に、侯爵夫人は嬉しそうに微笑む。




 「結婚というのは確かに大切なものです。

 ですが、一緒にいたくない人間と添い遂げるなど苦痛でしかありません。逆に、一緒に添い遂げたい相手がいるのに、誰かに遠慮して我慢する事。それも苦しみを伴います。

 私は貴女には幸せになってほしいのです。帝国の為と考えるチェリーナを誇りに思いますが、母としては娘の幸せが一番なのですよ。」

 公爵夫人は優しく慈愛の籠った眼差しでチェリーナに告げた。



 「確かに、魔法使いが誰と結婚するかは帝国としてはかなりの重要な問題だろう。しかし、もし帝国が利益だけを考えるのであれば、恐らくこの求婚状は第3皇子殿下からではなく、皇太子殿下からであったはずなんだ。


どういうことかわかるかい?」



 公爵の問いにチェリーナはハッとする。



 「皇帝陛下は、私の気持ちを尊重する気があるという事ですか?」




 「――恐らくそういう事ではないかと思う。

 第3皇子殿下と、チェリーナが交際しているのであれば、思い合うもの通しの婚姻程強い強いものはない。

 相手が皇子なら、皇帝陛下からしてみれば、何番目の皇子であっても構わない問う言う事なのだと私は判断する。」



 公爵の話は確かに納得がいくものだった。

 先日まで【無能皇子】と呼ばれ、まだ大きな功績を上げたわけではない皇子殿下を、皇帝が王命を使ってまで推すというのは普通であれば考えられない。


 そこにチェリーナの意思があるからなのだろうと理解できた。




 「・・・私は・・・自分の好きな相手と婚姻を結んでも良いのでしょうか?恋心で選んでしまって・・良いのでしょうか・・。」


 心の中は言いようのない高揚感で舞い上がっていた。

 もしかしたら愛するヴィンセントと一緒にいても許されるのだろうか?

 帝国の事よりも、自分の恋を優先して良いのだろうか?



 「私は、皇帝陛下が慮って下さるなら、チェリーナが幸せになる決断をして欲しいと思っている。」

 公爵ははっきりと言葉に表し、家族皆強く頷いてくれていた。




 「・・・私は・・・・ヴィンセント・・・様と・・一緒になりたい・・です。」

 やっとの思いで言葉にした想いは、溢れるように胸に熱く込み上げて、チェリーナの瞳から涙が零れ出していた。

 



 「決まりだな。皇宮へ返事をだそう。」

 







 ***







 皇帝の執務室にはエンハンス公爵から王命の返事が夕刻前には届いていた。


 まるで示し合わせたかのように、告げてもいないのに第2皇子は皇帝へ謁見の依頼を出していた。





 「―――一体何用だ?求婚の返事でも確認しに参ったのか?」



 「はい。いてもたってもいられず参りました。」


 皇帝の冷淡な言葉に動じることなく第2皇子は同意を示す。




 「残念だがチェリーナ嬢はヴィンセントとの婚姻が決まった。お前には隣国から有力な姫君を選び妃として迎えられるようにする。良いな?」




 「恐れながらそのお言葉には同意致しかねます。

 私の妻はチェリーナ嬢以外考えられません。お考え直し下さい。」

 きっぱりと皇帝の決断を拒絶すると、執務室はまるで真冬のように寒々しく空気が凍り付きそうだ。



 「お前の意思は関係ない。全ては魔法使いの想いに寄り添うのが帝国のをまとめる皇帝の責務だ。

 魔法使いがヴィンセントを望むならそれに従うまで。」




 「皇帝陛下ともあろうお方がいつまで魔法使いに尻尾を振るおつもりなのですか?

 あのような年端もいかぬ令嬢の決断に従うなどありえません。」


 皇帝の言葉を真っ向から否定する第2皇子に、周りに控えている宰相や側近は顔面蒼白である。


 

 周りのことなど気にも留めず、堂々と持論を吐く第2皇子に皇帝は深くため息を吐く。




 「ケヴィン・ヨーゲンバレン。お前はまだ帝国を守るという責務の大きさがわかっておらぬようだ。

自室に戻り理解できるように1週間謹慎せよ!背くならば臣籍降下も覚悟せよ!」




 「なっ?!!ち・・父上あんまりです!!私は未来の皇帝なのですよ!?このような仕打ちあってはなりません!!」


 皇帝の決断に、納得いかずいてもたってもいられない第2皇子は、声を荒げ自分の意見を主張しようと皇帝を睨みつける。




 「愚か者が!衛兵!皇子を自室に連れていけ!外から鍵で施錠してだしてはならぬ!」



 皇帝の言葉に外で待機していた衛兵たちは、即座に第2皇子を捕まえると、暴れる皇子をものともせず速やかに執務室を後にするのだった。





 「・・・陛下。第2皇子殿下の発言は・・かなり危険な内容でございました。監視の目を増やすようにいたしましょうか?」



 「―――そうしてくれ。」

 宰相の言葉に皇帝は眉間にしわを寄せ呆れたように同意してから執務を再開させるのだった。













ストーリーはあと5はで完結となります。

是非最後までお楽しみください☆彡





ー・-・-・-・-・-・-・-・-・-

いよいよ佳境です。

あと5話前後で完結となりますので是非最後まで

お付き合いください。

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