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32_Aランク高難易度討伐再び_1









 一週間ぶりの外出でチェリーナの心は踊っていた。誕生日パーティーは本当に怒涛の一日で、考えさせられることが多すぎたせいもある。


 熱はでなかったものの、体調があまりよくなかったのでオーウェンに外出を止められていたのだ。


 やっと本調子に戻り、オーウェンも一緒に外出できるという事だったので、ウィッシェントローズに顔を出してからギルドに行くことにした。



 ヴィンセントはすでにウィッシェントローズ)で待機していた。しかし、チェリーナはあの夜の事を思い出して恥ずかしくてヴィンセントの顔を直視できない。

 


 そんなチェリーナにお構いなしにヴィンセントはくっついてこようとする。



 (・・・な・・何故?!)


 流石に鬱陶しいと思ったのか、オーウェンがヴィンセントに止めに入ってくれる。


 ローリーも店に控えていて、誕生日パーティーで話せなかった分を取り戻すようにチェリーナは感謝の気持ちも伝えた。


 やはり誕生日パーティーの日は散々癒しのパワーストーンのことを話題にされたらしく、チェリーナの所に話しに行ける状況ではなかったとローリーは申し訳なさそうに話してくれた。



 チェリーナはコリンに変装すると、オーウェンもジークに変わっていて、3人は久しぶりのギルドへ向かった。




 いつものギルド職員は満面の笑顔で出迎えてくれて、いない間討伐が溜まってはいたが、ヴィンセントが主にBランクなどの討伐を一人で済ませてくれていたらしくなんとかなっていたことを教えてくれた。


 「本当にお久しぶりです!お会いできてなんだかすごく嬉しいです!!」


 コリンに抱きつこうとしてくる職員を、ジークとヴィンセントはしっかりガードする。


 職員さん男性なのだけど、いつものことながらフレンドリーでスキンシップが多めなのだ。


 コリンだけでなく、ジークもヴィンセントもいつも抱きつかれていたから、見慣れた光景ではあったけれど、ジークとヴィンセントが必死にコリンを守るから、同性愛者のトライアングルと思われているという話まで耳に入ってくる。


 ジークもヴィンセントも昨年よりも5センチ以上も身長が伸びているようで、更にイケメン度が爆上がりしている2人だった。その為噂の広がり方も尋常ではない。そしてその間に挟まれるコリンは、かわいい系男子に入れられているらしく、男色家に狙われないように2人はいつもガードしてくれていた。


職員さんのお陰で余計な噂が更に広がって正直迷惑だが、討伐受付などのサポートは真面目にしてくれるので憎めない人だ。



 そして今日は久々だというのに、早速職員さんからお願いをされてしまう。


 「本当にすっごく良いタイミングなんです!!是非お3方にお願いしたい討伐があるんです。可及的速やかに対処しないとならない緊急案件がありまして、どうかお力を貸していただけないでしょうか!!」



 「一体何があったんです?」

 コリンは直ぐに反応を示す。



 「流石コリンさん!貴方は本当にいつも優しいっ!!」



 「あ―――そういうのは良いので内容教えてくれます?」



 「はいっ!失礼いたしました。実は昨日アルダナ森林の南タワヤ領から観光客2名が護衛兼ガイドの1名とアルダナ森林に入って行方不明になったという報告がありまして、どうやらその向かった先がポイズンマンバの生息沼付近だそうなんです。」



 「ポイズンマンバだと?!Aランクでも最上級の生物じゃないか!」

 ヴィンセントは驚愕して職員に怒鳴るように言葉を吐き出す。



 「――はい。そうなんです。どうやら他のガイドには止めるように言われたようなんですが、ある一人のガイドが、3倍の料金を払うなら連れて行ってやると話したそうで・・どうやら3人で行ってしまったらしいんです。」


 

 「――それは自殺でもしに行ったという事でよいのではないか?」

 呆れたようにジークは言う。



 「いえいえ。そんなことはないです。向かった理由というのが、ポイズンマンバの生息域に咲いているティエンサ(光で虹色に反射する白い花)を見たかったからだそうなんです。」


 「あー・・あの幻の花とか言われている花か。」

 ジークは思い当たるらしく白けた表情で返事を返す。



 「はい。非常に美しい花だそうですが、見に行って生きて帰れるわけがないのに、遠くから一目で良いからという条件でどうやらOKしてしまったようなんです。

 しかも、その男性側は隣国のドレンティア公爵家のご令息だそうで、国際問題になりかねないとタワヤ領主から助け出してほしいと依頼が来ているわけなんです。

 ただ依頼内容がないようなので・・誰も引き受けてくれないんですよ!!もうすでに36時間以上経過していまして、非常に危険な状況なんです。」

 目を潤ませながら頼み込む職員さん。


 コリンが一歩前に歩みだそうとした瞬間、グイっと後ろから抱きしめられる。



 「え??」

 「ヴィンセント!」

 驚くコリンと怒鳴るジークに構うことなくヴィンセントは職員さんを睨みつける。



 「最初、依頼を受ける条件として【救助】はやらないと伝えてあったはずだろ。今回の依頼は却下だ!コリンも安易な判断をするな!冷静に考えろ!」



 ――そう。自分たちの討伐を受ける中で絶対やめようと誓ったのが救助活動だ。

 

 万が一にもコリンが魔法を使っている所を他人に見られないようにするため。これは絶対的な約束になっていた。



 「確かにヴィンセントの言うことが正しいな。――ただこのこの手を話せっ!!」

 ジークはコリンをヴィンセントから強引に引き剥がすと、討伐不参加の同意の意思を表す。



 「・・でも今は危険な状況なんだろ?僕たちが行かなかったら誰も助けに行けないんだろ?そんな話を聞いてしまったら・・これから平気な顔して生きていけないよ・・」

 コリンは状況を放ってはおけない。


 2人の言いたいことはわかっていたが、救える命を救わないことをどうしても了承できないのだ。



 「最悪・・誓約を使おうよ。・・・そうすればきっと・・」


 「――コリン。誓約だって確実ではないんだぞ?守らなくても死ぬわけじゃないんだ・・。」


 「・・・・」

 コリンの表情は暗く荒んだまま俯くばかり。


 ――2人は頑なであったがコリンの方が更に頑なだった。



 「あーーーーーもーーー危ない橋をなんでお前は渡りたがるんだ!!やればいいんだろ!やれば!」



 「ヴィンセント!!」

 呆れた顔をして大きな声で吐き出すように告げた言葉に、コリンはぱあっと表情を明るくする。



 ジークも深い溜息を吐いた後に職員さんに討伐申請の手続きを進める。



 「依頼は受けるが、念のためウィッシェントローズで不足なものがないか確認してから行くからな!」


 3人は頷き合うとウィッシェントローズに戻っていくのだった。






 

 コリンには了承したものの、ジークとヴィンセント浮かない表情で互いに念話しあっていた。



 『ポイズンマンバの生息域って・・ポイズン系、電撃系の生物の宝庫じゃなかったか?』



 『あぁ。間違いない。皇宮でも立ち入り禁止区域に設定されたデンジャラスゾーン指定がされている。』

 ヴィンセントは深い溜息を吐く。



 『救助でなければ恐らく問題はなかっただろうが、救助含めて討伐となると・・間違いなく苦戦するだろうな。』



 『ジークはやれそうか?俺たちが主戦力で動くしかないだろ?』



 『・・まぁ・・ポイズンマンバだけなら余裕だ。・・・だけならな。』

 もう一度2人は深い溜息を吐く。



 『恐らくあのあたりで危険なAランク討伐対象はポイズンマンバ以外にも、サンダフィッシュ、ポイズンバット辺りがヤバそうだな。』

 


 『どちらもAランクだな・・しかも恐らく1匹どころじゃない。間違いなく魔法必要な区域だ。』



 『ヴィンセントはサンダフィッシュとポイズンバッドを剣で倒せるか?』



 『・・・・・1匹なら・・』

 自信なさげにヴィンセントは答える。



 『・・あいつらは群れ行動の生物だぞ・・無理だろ・・』



 『・・・・だよな・・』

 ヴィンセントはぎゅっと拳を握りしめた。



 今回はどんなに頑張ってもポイズンマンバ以外の生物が現れた場合、コリンの魔法が必須という内容なのだ。


 『最悪生存者に気絶しててもらったらいいんじゃないか?』

 ヴィンセントが閃いたとばかりに告げるがジークは却下する。



 『コリンは反対するだろう。精神攻撃はコリンが嫌がるから。かといって物理的に気絶させてもコリンは怒ると思うぞ・・』




 『・・・・・・』



 2人は相談しても答えが出せなかった。


 このまま向かえば間違いなくコリンは人前で魔法を使うことになるのだろう。


 できればそんな危険なことを2人はさせたくはなかったが、生きて帰ることが最優先。





 最悪誓約魔法に頼るしかないだろうという話で相談は終わったのだった。











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