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28_17歳の誕生日パーティー_2









 オーウェンとのダンスは踊りやすくて楽しい。



 「チェリーナ。またこうやってダンスができて嬉しいな。」



 「1年ぶりですね!毎日一緒にいてもダンスは夜会に出ないと踊らないですものね。」



 二人はくるくる軽快にステップを踏みながら会話を楽しむ。


 昨年も魔法で体は軽くダンスも上手に踊れたが、今年は討伐経験などにより更に体幹がよくなって難易度の高いダンスもお手の物。



 「昨年だってチェリーナのダンスは注目されていたのに、今年は大勢の前で披露してしまったからもっと注目されてしまうだろうな!」



 「・・もうあまり目立ちたくはないのですけどね・・。」



 「チェリーナ。あまり深刻に考えすぎても良くないぞ。楽しむことは楽しんでいいんだ。いざとなれば俺が守るから。エンハンス家の総意だぞ!」



 「ふふ。大袈裟です♪」



 「いーや!そんなことはない!とにかく、ダンス位気を遣わずに楽しもう!この後はあいさつ回りが待っているんだ。楽しめるのは今位だぞ?」



 「・・そうですね。今夜は第2皇子派の貴族もいるのですよね?」



 「――そうだな。確かに今夜は第2皇子派も参席している。特に注意が必要なのはゼリス・アルガン。次期侯爵にも拘らず、第2皇子の為に常に自ら動き回っているらしい。ウィッシェントローズのまわりでもアルガン次期侯爵を最近見かけることが多いと報告を受けている。」



 「次期侯爵様が自らですか・・・それはすごいですね・・。」



 「わざわざ動くという事はそれほど重要な仕事をしている可能性が高い。アルガン次期侯爵は特に気を付けた方が良いだろう。あとは、皇后の実家であるディオルス侯爵閣下も注意が必要だろうな。間違いなく第2皇子殿下をかわいがり、皇帝になれると唆しているに違いない。」

 チェリーナが知らない情報をオーウェンが当たり前に知っていることに驚愕する。

 


 「・・という事は皇后陛下も第2皇子を推しているの?」

 


 「いや。皇后陛下は皇帝陛下と仲睦まじく、皇帝陛下の決断を覆そうなどという考えを持つような方ではないな。第2皇子殿下の野心的な考え方は、伯父の侯爵閣下に似たと思う。第2皇子殿下はかなり冷酷で自分の願いは何でも叶うのが当たり前だと思っているような方なんだ。幼少期から侯爵閣下がそれが当たり前だと吹き込み続けて、そのように育ってしまったと皇后陛下が漏らしていたのを皇宮の女官も聞いたことがあるらしい。

 育った環境で人は善にも悪にも変わるっていうお手本のような方だよ。」



 「・・お兄様・・何故皇宮の女官の話の情報まで持っていらっしゃるの?」

 怪訝そうなチェリーナにオーウェンはにっこり笑って誤魔化す。



 「教えて下さらないのですか??」



 「こういう情報収集に関しては俺とマライセルに任せておけば大丈夫だから、気にするなよ。」

 ぷくうっと頬を膨らませ拗ねて見せるが、ダンス真っ最中でもあるのですぐに表用はにこやかに戻す。



 「こんな重要な案件を話しながらもここまで踊れてしまうんだから、本当にチェリーナは優秀だよ。」

 嬉しそうにオーウェンは微笑んだ。



 オーウェンとのダンスも終わり挨拶に回ると、アルガン次期侯爵と、ディオルス侯爵閣下とも挨拶を交わしていく。



 会話自体は他の貴族と全く変わりなく祝いの言葉をかけてもらう程度で、突出して怪しむべき雰囲気は感じられない。ただディオルス侯爵閣下は、「君があのチェリーナ嬢か。」と、意味ありげな発言を残していた。


 それはチェリーナが昨年から社交を始め、優秀さが知られたことを言いたいのか?

 

 それともウィッシェントローズとの孤児院への寄付の癒しのパワーストーンのラッピングを手伝って貢献していることを言いたいのだろうか。


 

チェリーナはウィッシェントローズから癒しのパワーストーンを販売するようになってから、孤児院にも寄付したいとエンハンス公爵家のチェリーナの名義で買い取り寄付してきた。


 その功績は慈善事業のなかでも非常に注目を集め、今話題の癒しの石にいち早く着眼したチェリーナの審美眼を称える噂も広まっており、貴石パワーストーンを求める貴族の間では、エンハンス家はウィッシェントローズと深いつながりがあるのでは?と憶測も広がっている。



 まさにウィッシェントローズとチェリーナは、世間を賑わす話題となっている。


 そこでもしコリンがチェリーナだとバレれば間違いなく自分が魔法使いと疑われるのは必然だろう。




 きっと貴石パワーストーンの件はローリーが周りに説明をしてくれるだろうと期待して笑顔でスルーし続けた。




 「チェリーナ大分疲れただろう?少し早いがもう部屋に戻っても構わないよ?」


 オーウェンが気を使ってくれたので、両親や兄姉妹に挨拶をして大広間を去ることにする。


  出口を出ようとすると、一人の従者らしき男性が声をかけてきた。



 「チェリーナ様。我が主が再度お話したいことがございます。よろしければ部屋へご案内させていただけないでしょうか。」



 「―――話ですか?一体どなたが?」



 「貴女様のファーストダンスを務めた方でございます。」



 (!!!!)


 「―――――わかりました。案内してください。」


 

  まさか皇太子殿下から呼ばれるとはチェリーナは思わなかった。しかし、先ほど退席の挨拶をしていた際に皇太子の姿が見えなかったのでどこかで休憩しているのだろうかとおもってはいたが、自分を待っていたとは・・。


 何のために皇太子殿下が自分を呼ぶのか思考を巡らせるも、唯一思い至ったのは【魔法使い】の件に関してだけであった。



 「――こちらで主がお待ちです。私はこの場で待機しております。」



 「わかったわ。ありがとう。」

 侍従に感謝を述べるとドアをノックして部屋へ入室する。



 「やあ。チェリーナ嬢。いきなり呼びたててわるかったね。」



 「かなり驚きましたが退席のご挨拶もできておりませんでしたのでお会いできて良かったです。」



 「それなら良かったよ。さあ座って。」

 お互い微笑み合うとソファに腰掛ける。向かいに腰掛ける皇太子は先ほどダンスを踊った時のように柔和な笑みを浮かべている。



 「君が不安に感じているんじゃないかと思ってね?私から教えてあげられることを教えておいてあげたいなと思ったんだよ。」



 「??!」


 「ケヴィンに狙われているんじゃないか心配だろう?」



 「――何故そのようなことをおっしゃるのですか?」



 「それはまぁ・・・・ね?」



 笑って茶化す皇太子は一体どこまで把握しているのだろうか・・



 「ケヴィン様というのは第2皇子殿下の事でございますね。最近私の行っている慈善事業に興味を持つ貴族の方々が多いとは聞いておりまして、第2皇子殿下のお話はその時に伺っております。」



 「・・・ふぅん?それだけ?」



 「はい。私が確認できているのはそれだけです。」



 「そうなのか・・オーウェンが随分動き回っているからもっと色々聞けると思ったんだけどな?」



 (!!!)


 「―――皇太子殿下。私は例え公爵家の生まれでも末端の人間です。起きに留められるようなことはございませんわ。」



 皇太子殿下が知りたいのはウィッシェントローズのことなのか?


 それともギルドのことか?

 

 ・・それとも・・


どの内容にしても、チェリーナにとっては話して良い結果にはならない。



 「私は力になってあげられると思うのだけれど、頼りたいとは思っては貰えない?」



 「―――私が皇太子殿下にお願いをするなど恐れ多い事です。」



 「・・ヴィンセントとかかわりがあるとしても?」



 (!!!!)


 「――――なんの事でしょうか?」



 (ヴィンセント??!なぜヴィンセントの名前がここで出てくるの?!ギルドのこと??)


 「チェリーナ嬢は、彼の正体が知りたいかなーと思ったのだけれど、君が私と仲良くしてくれるなら彼の秘密教えてあげるよ?」



 チェリーナの頭の中で警鐘が鳴り響く。ヴィンセントの正体を皇太子殿下は知っている。しかし、それと引き換えに私に何かを要求するつもりなのだろう。



 「皇太子殿下。私は人間関係でどのようなことであっても、本人から告げられていないことは信じたくはございません。ですのでその方がどのような方であるかなど、私は皇太子殿下から伺うつもりもございません。」



 「うーむ・・なかなか頑固なんだね。


 ――そうか。チェリーナ嬢は仲間にしか心を開かないんだね。これ以上は難しそうだ。」



 「私は仲間は大切にするものだと信じております。あくまで私の想いです。」



 「その揺るがない心は非常に気に入ったよ。困ったことを聞いてしまって悪かったね。だけど、君を陥れたいわけではないんだ。だから今日はここまでにしておくよ。

 時間をもらって悪かったね。侍従に送らせよう。」



 「勿体ないお言葉ですわ。――では失礼いたします。」



 チェリーナはアルファンとの会話の最中ずっと冷徹令嬢の仮面を被ったまま話を続けていた。



 絶対に魔法使いに繋がる言葉は一言でも肯定することはできないし、動揺も見せたくはない。





 ―――たとえヴィンセントのことであっても。





 (・・でもヴィンセントは平民ではないという事?何故皇太子殿下が・・)



 やっと最近になって彼に対しての悩みが他の事で紛らわされてきていたというのに、また再熱してしまう。


 




 『―――話がしたい・・』


 自室に歩いて戻りながら、自分の心の中で思っていた感情が気づくと念話に変わっていたことにチェリーナは気づいていなかった。




 『今から?』


 


 ヴィンセントの言葉でチェリーナはやってしまったと後悔するのだった。


 


 



  




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