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24_広がりゆく噂









 

 ベアレイジ討伐以降、3人は鍛錬を強化して討伐は無難なものを選び続けていた。


 しかし、その討伐スピードは周りと比較しようがないほど早いものだった。



 「流石ですね!今日もAランクの討伐を2つもありがとうございます!!」

 今日も職員は嬉々として討伐の証を確認している。



 そう・・確実にやり遂げられるAランク討伐や、Bランク討伐を数を多めに受けてきたことで、

3人は簡単に完遂できてしまい、気づけばほとんどの高ランク討伐を自分たちが終わらせてしまっていた。



 「この強さならもっと難易度の高い討伐もいける気がするんですが・・」


 討伐を受けるようになって半年以上過ぎ、ギルド職員も今では高ランク討伐を積極的に勧めてくるようになっていた。


 「いやいや。ベアレイジの時はたまたまだから自分たちはまだ無理だよ!」

 ジークはしっかりと否定していく。



 しかし、流石に半年以上確実に討伐できる依頼を受け続けてきたので数は十分こなしているし、すでに討伐件数も300件を超えている。


 コリンからしてみれば、身体強化や悟られにくい魔法攻撃を強化して、普通の冒険者に上手く擬態できるようになったと自信も出てきた。

 

そろそろ高難易度討伐にもチャレンジしたい気持ちも高まっている。



 「――――ジーク。そろそろAランクの高難易度の討伐も良いんじゃないかな?」



 「コリンは気づいていないようだが、俺たちは目立ち過ぎている。

 周りの奴らを見てみろ。

 最近だと俺たちを目指して冒険家になる若者まで増えているらしい。あまり注目は浴びない方がお前の為にも良いと思うんだ。」



「ジークの言う通りだ。最近じゃ俺たちの事を英雄とまで言い出す冒険者や平民がいると聞く。万が一コリンの事が明るみになれば、一番困るのはお前だろ?今は焦らない方がいい。」



 コリンの言葉に2人共無難を求めなるべく目立たないことを優先させている。


 勿論コリンにだって目立ち過ぎることのリスクはわかってはいたが、自分の力量を確認したい欲求は日に日に増すばかり。


 ジークやヴィンセントは物凄い勢いで鍛錬を積んでいるようで、今では剣撃に関しては本当に物凄い強さだ。

 

 身内贔屓などではなく、本当に騎士団長をも超えるレベルなのではないかと感じる。


 以前はベアレイジを1匹すら倒せなかったというのに、今はベアレイジ1匹の討伐であればどちらが倒すか競い合う程早く倒してしまう。


 それでもAランクの多量討伐は嫌煙している。


 コリンもこの半年以上の間にかなり能力は高くなり、より気づかれにくく魔法発動できるようになった。


 剣撃を繰り出すように見せかけて、剣に風切りの刃を乗せて攻撃し、殺傷能力を格段に飛躍もさせている。


 魔法の威力自体も少ない疲労で攻撃力を明らかに上げてきた。

 

 体力も付いてきたので魔力消費の激しい魔法も身構えず使えるほどである。

 

 仲間への身体強化も悟られることなく付与できるようにもなった。回復も然。




 確かに自分が魔法使いであると露見し、ウィッシェントローズの貴石パワーストーンも魔法によるものだと露見すれば大騒ぎになってしまうだろう。


 そう考えればバレる確率が上がるような真似はしない方がよいに決まっているのはわかる。


 わかってはいても、相手を想う気持ちとはまた別で自信の強さの向上に情熱を注いでしまっている自分を、コリンは好ましいと思ってしまっている。



 「俺たちは十分過ぎるほど強くなってきている。高難易度は受けれないんじゃない。状況を把握しながら受けるタイミングを見計らおうという事だ。」



 ジークは励ますようにコリンの頭を撫でながら言葉をかける。



 「―――うん・・。」



 「そんなかわいい顔したって駄目だぞ?」

 寂し気に返事をするコリンにヴィンセントはとんでもない言葉を投げかける。




 「は?か・・かわいいって・・・な・・」



 ちょっと揶揄われだけなのに、いつもいつもヴィンセントの言葉にコリンは頬を紅潮させて反応してしまう。


 そしてヴィンセントはそれを狙っているかのように、その後スキンシップを多くとってくる。後ろから抱き着いてきたり、指を絡ませてきたり、耳元で囁いてきたり。



 ジークに気づかれると叱られるのがわかっているから、こっそり仕掛けてくるのが余計こちらを動揺させる。



 (――何なのよ・・・もうっ!!)



 向けられる熱い眼差しにもくらくらしてしまいそうになる自分が嫌でたまらないのに、もっと見つめてほしいなんて思う自分は頭がおかしくなってしまったのか?



 眠る前に自問自答する日々も日に日に増えている気がする・・



 最初はジークも敏感に反応してヴィンセントに説教していたが、いつの間にかそこまで厳しく目を見張らせることはなくなっていた。





 魔法を扱う事にも慣れ、貴石パワーストーンの流通も問題ない状況。


 討伐も鍛錬も順調で、家族との関係も改善されて交流も以前よりずっと増えた。


 全てが上手くいって日々の生活にも慣れてきている状況で変化を求めたいと思ってしまうコリンは好奇心が旺盛なのだろう。



 しかし、ジークとヴィンセントの不安を煽るように、彼らを注視する人間が増えているのも事実だった。



 冒険者の3人がウィッシェントローズによく出入りするところも見かけられており、貴石パワーストーンの謎と、ありえない討伐成果を上げる謎の美形3人組冒険者。


 目を付けられない訳がない。


 ローリーは度々新聞記事にのりそうなコリンたちを守るべくストップをかけたり、調べ回ろうとしている者たちを護衛たちに邪魔させている。


 勿論オーウェンもギルドだけに収まらず、騎士団に引き抜きたいという上層部とすら掛け合い引き抜きを止めに入っていた。


 それぞれの妨害の上に成り立つ平穏をコリンだけは知らない。




この平和な日々が続く。そう疑わなくなっていたのだ。





 ***




 「最近帝都に目立つ連中が増えているようだね。」



 「・・・それは冒険者の事でしょうか?・・それとも・・」




 「おや?お前はどちらも無関係と思っているのかい?」



 「・・・いえ・・」



 淡々とした冷たい会話が静かな室内に響き渡る。



 「私はそうは思わない。

 ――たった3人で、騎士団の1部隊総出で倒すような討伐を簡単に成し遂げるんだぞ?化け物じみた人間が普通の人なわけがない。

 ――たかが貴石に人を癒すだけの魔力が初めから備わっているわけもない。

 両方とも説明できないような何かが齎されている。

 ――――そうは思わないか?ゼリス。」




 「―――はい。おっしゃる通りですケヴィン殿下。」



 「しかも冒険者3人組は身元不明者の平民で、うち2名はマライセル姓だ。

 ウィッシェントローズはあのマライセル一族が運営しているそうじゃぁないか。

 これが偶然と言えると思うか?」



 「・・・・・・」



 「ふふふ・・・どうやら私は神の思し召しでもあるのではないだろうか?

 あのマライセルがここまで派手に動くのは理由は一つ。

 【魔法使い】・・・だよねぇ。

 まさか私がこれから統治する時代に数百年ぶりにあらわれるだなんて。」



 男は不敵に笑い自分の運命に酔いしれているのだろう。




  「しかし・・マライセル一族は魔法使いにのみ従属する一族。たとえ皇帝陛下の命令であっても魔法使いが納得しなければ逆らうことも許された者たちです。

 我々の命令に従わせることは難しいのでは・・」



 「正攻法でいく馬鹿はいないだろ。魔法使いである証拠を見つけ次第弱みを握る。

 それだけで十分だ。魔法使いが納得すればマライセルなど何も怖くなどない。」



 「・・おっしゃる通りでございます。」



 「あれだけ目立っているんだよ。間違いなくそのうちにしっぽをだすだろうねぇ。その時に畳みかけるのさ。

 ふふ・・・はははは・・・ゼリス。お前はしっかりと両方を見張れ。必ず綻びを探し出し良い報告を持ってくるんだ。いいね?」



 「――仰せのままに」



 ゼリスは主の命に従い部屋を後にする。



 彼が廊下にでた後も主の高笑いは止むことはなかった。

 










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