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21_Aランク討伐









 3人は馬を30分程走らせた先の町で馬留に馬を預けると、アルダナ森林の見える場所まで歩きながら状況を整理していた。


 「今ここから見た状況でも大きな獣の殺気は感じる。明らかにいつ住民を襲ってもおかしくないと思う。」



 「そんなに殺気だっているのか?」

 コリンの報告にジークは険しい表情をする。



 「かなり・・殺気だっていると思う。何があったのかはわからないけど相当強そうだ。森林からいつ出てきてもおかしくはないかもしれない。」



 「ならとっとと終わらせようか。飛んで近くまで行くのか?」

 コリンの言葉にヴィンセントは問いかける。



 「うん。その方が早いよ。ただ、森林の中で戦うか、外におびき寄せるかどっちが良い?」



 「森林の中は俺たちはまだ慣れてないだろ?できたら平原に連れ出してしまった方が楽だが、住民に被害があったらまずいよな・・・。」



 ヴィンセントは周りの状況を見渡すが、住民が作業をしている姿が所々見えるのが気になるようだ。



 「そうだな。今の時点でコリンの魔法も住民に見られるわけにはいかない。やりづらいが森林の中で討伐しよう。」

 ジークはコリンを案じて森林の中を指さす。



 「ジーク・・そうだね!それなら森林の中に降りるようにするけど、降りたらすぐに戦闘できるように今の時点から身体強化も防御魔法もかけておくからね!!

 あと、毒を持った植物や生き物も昨日森林に入った時に気づいたんだ。

 だから早めに危険地帯は知らせるようにする。

 上手く伝達できなかったら困るから、念話でも話すこともあると思うからよろしく!」



 店を出る前にローリーに頼んで貴石パワーストーンを用意してもらい、ジークの為の幻影魔法の込めた貴石と通信用の貴石パワーストーンをすでに渡してあり、3人の耳には紫のアメジストのピアスが装着されている。


 「戦闘に関してなんだけど、ヴィンセント。ベアレイジって結構固いのかな」



 「・・そうだな・・・恐らくかなり固いと思う。俺はまだ戦ったことはないが、間違いなくランページディールの比じゃないぞ。」



 「――だろうな。俺も戦ったことはないが、森林の危険動物の調査報告は良く受けていたからな。ランページディールは1頭を騎士2人がかりで倒すのに対し、ベアレイジの場合は5-8人だ。銃を使うなら3人でも行けるかもしれないが、他にも仲間がいる場合音で暴走されたら困る。

 ――あいつらは大きい音で怯むようなやわじゃないからな。」



 「そうなの?」

 ジークの言葉にコリンの顔は青ざめる。



 「ランページディール5頭を2人で倒したお前たちだ。接戦ではあるだろうがきっと勝てるさ。俺だってある程度は情報も持っているし、実力もそこそこあるんだからな!」

 ジークの言葉に二人も頷く。



 「ベアレイジの急所ってどこなのかな?」



 「胸部だ!ただ刃物で一突きというのはリスクがかなりある。

 反撃された場合こちらが危ないからな。

 コリンの魔法で狙い撃ちできるような魔法は使えるか?」



  「――やったことはないけれど、集中すればできない事はないと思う!・・でもできればそれはいざというときにしたい。・・恐らく体力の消耗が大きいような気がする。」



 「そうだな。それなら俺とヴィンセントで攻撃していくしかないな。」



 「あぁ。俺はそれで構わない。」



 「それなら最初に魔法で怯ませた後、範囲攻撃で3体に風魔法で切り刻んで弱体化させるよ。その後畳みかけるように攻撃して。」



 「了解!」



 3人は作戦を共有するとコリンの魔法で飛行して森林の上空を飛んでベアレイジの殺気を追う。


 森林の入り口から100メートルも入らない距離に大きな敵意の反応を3つ感じた。



 「――いた!森林のここから10メートル以内に3頭いるよ!降りたらすぐ戦闘だ!他の獣の反応も見ながら殺るからね!」



 「了解!」



 コリンは森林の中に降り立つとすぐに前方に3頭のベアレイジが佇んでいた。



 (―――大きい!!!)

 コリンはあまりの大きさに驚愕する。



 「おいおい・・うそだろ・・これ5メートル近くあるんじゃないか?」

 ジークも驚きが隠せない。


 1匹は2メートルほどだが、他の2頭は明らかに4メートルは超えているように見える。まさに化け物のような大きさだった。



 「気を付けて!!僕から行くよ!」


 コリンは声をかけると即座にベアレイジ3頭に向かって殺気を含んだ衝撃破を放ち、その後風切りの刃をいくつも繰り出し衝撃破で怯むベアレイジは魔法の攻撃で至る所から血が吹きだす。



 「浅いけど傷は入ったよ!!畳みかけて!なるべく援護する!」



 コリンの掛け声で二人は直ぐに駆け出し剣撃を繰り出す。



 「――かった!!・・・全然刃が入らないな!!傷口からどんどん攻めるぞ!」

 ジークは手ごたえのなさに苦笑しつつも状況を判断していく。



 ヴィンセントもジークも、それぞれベアレイジを1頭ずつ相手にしている。決着がすぐにつかない以上コリンは2メートルのベアレイジを放置するわけにはいかなかった。


 時間を稼ぐために、すぐさま小さいベアレイジを魔法で氷漬けにして動きを封じ込める。


 これでは刃も通らないのですぐ仕留めることも叶わないが、今は二人が手が離せないので動きを先に留めるのが優先だと判断した。



 コリンが続けて二人の援護に入ろうとすると、沢山の数の殺気を感じ取る。



 森の中から1メートル近くはあるであろうカラスのような真っ黒な鳥が、10羽近くコリンの後ろから飛び掛かってくる。



 「―――コリン!!!」

 ジークは思わず叫び、ヴィンセントもベアレイジとやり合いながら振り返る。



 (――まさかこんなに多いとは!!)



 コリンは一瞬怯んだが、昨日の突然の渡り鳥の飛び立ちで魔法が解けた時のことを考えれば、そこまでの動揺には至らなかった。



 「――燃えてしまえっ!!」

 目に映る限りの鳥たちを荒々しい炎が包み込む。



 ―――ぎゃわっぎゃぁぁぁぁーーー



 不気味な鳥たちのけたたましい鳴き声が響き渡り、飛んでいた鳥たちは数秒程で地面に落ちて身動きが取れなくなり絶命する。


 『こっちは大丈夫!!皆大丈夫?!』


 あまりにも突然高度な攻撃魔法を繰り出したため、息が上がり声が上手く出せずコリンは念話で二人に確認を取った。



 『おれは大丈夫だ!!コリン!無理するなよ!援護は必要ないぞ!』

 ジークはコリンを気遣いベアレイジに集中する。



 『こっちも何とかなる!あと少しだ!』

 ヴィンセントもコリンを頼るつもりはないようだ。



 しかし明らかに二人の動きも俊敏さがなくなってきている。


 彼らの体力が心配になったコリンは、体力回復用の貴石パワーストーンを1つ使用する。


 荒々しかった呼吸は戻り、緊張感で強張っていた体も落ち着いてくる。



 援護を拒む2人に叱られるかとも思ったが、コリンは集中してベアレイジ2頭に拘束魔法を放つ。


 途端にベアレイジの体は身動き一つとれなくなり固まってしまう。



 『今なら急所を狙える!!一突きでいって!!』

 コリンは迷わず念話で指令を飛ばす。



 『!!!』



 二人ともこちらを振り向いたがすぐさま向き直ると身動きの取れないベアレイジの胸部に飛び掛かり鋭い刃を突き刺す。



 ―――ぐぅぉぉおおおっっっ!!

 大きな絶叫が木霊する。



 剣を引き抜き二人はもう一度同じ場所に刃を突き刺す。


 2頭のベアレイジは立っていられず仰向けにずしんっと倒れる。しかしまだ死んではいない。



 『二人とも離れて!!』



 コリンの声に咄嗟に二人は後方に飛び退くとコリンは火炎魔法で鳥の時と同じように荒々しい炎でベアレイジのみを燃やし絶命させる。



 『二人ともあと1頭のベアレイジを解凍するから仕留めてほしい!』



 コリンは自分で魔法を使う事のリスクを避け二人を頼ることにする。すぐさま解凍すると、弱体化した2メートルほどのベアレイジは二人によって仕留められたのだった。




 「・・・・終わったな・・」

 ジークが呟く。



 『まだだよ!!討伐の証のベアレイジの片手を切ってすぐにここを出よう!ベアレイジがいなくなったことで他の獣がやってきてもおかしくない!』



 コリンの予測は間違っていないだろう。先ほどの鳥も、恐らくベアレイジがやりあっているのを感じ取っておこぼれをもらいにやってきたようだった。他の肉食系の獣であれば血の匂いで寄ってきてもおかしくない。



 「3頭分証は取れたぞ!行くか?」

 ヴィンセントはコリンに声をかける。



 「行こう!体力回復を今2回したから多分足りるはずだ!」



 「・・・・」



 笑顔で飛行してエルネイ領の馬留に移動するコリンをジークは唇をかみしめて、悲し気に見つめることしかできなかった。


 ヴィンセントもジークと同じく自分一人で1頭も倒し切れなかったことに悔しさを滲ませていた。



 




 「・・・も・・・もう無理だ・・・あとはよろしく・・」



 馬留の少し離れた茂みに降り立つとコリンは全ての魔法を解いて脱力してしゃがみこむ。



 「コリンすまない。後は任せろ。」

 ジークは優しくコリンを横抱きにして立ち上がる。



 「ジークも・・ヴィンセントも・・・無事に戻れて良かった・・」



 力の抜けた声音でへらっと笑いながら安堵するコリンを、ジークはぎゅっと強く抱きかかえる。



 「―――ありがとう。」

 ジークは苦し気に微笑み呟いた。



 ヴィンセントは帰りはコリンを自分が馬に乗せて戻りたかった。しかし、ジークの胸の中で安心しきっている表情を見てしまったら声をかける事なんてできなかった。

 しかもコリンを守るどころか、応戦するのにやっとやっとだった自分が不甲斐なかった。


 

 夕刻をまだ過ぎない茜色の空の元、2頭の馬はゆっくりと常歩なみあしウィッシェントローズを目指すのだった。



 






コリンとジーク

挿絵(By みてみん)

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