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迷子に自己紹介

 

投げ出された体


心地よい風が気を失った星竜を包んだが、目を覚ます気配はない


快晴の空はどこまでも澄んだ青。つい今し方の天気が嘘のようである




―――――‥……


「頼んだぞ、ユニヴァース」


「お任せ下さい、導士」

 

「‥‥?」


星竜は周囲の声に意識を取り戻したが、まだ体にまで浸透していないのか、瞼が重い



「だぁーかぁら!俺達このままで良いわけ?!って言いたいんだよ!」


「しっ!アクア、静かになさい。病人がいるんですから」



(――……声?)


虚ろな思考で耳に入る会話を聞いていた



声の主は、諫められ一瞬口籠もりながらも、まだ反発を続ける


「だって嘆きたくもなるだろ?プリンセスどころか、ナイトの居所も掴めてないんだぜ?」




(……ダレ?)




「仕方ないでしょう?ユニヴァースは待ってほしいと言っていたじゃないか」


駄々をこねる彼に、肩を竦め隣で呆れ顔の人物と目を見合わせた。

2人の様子に、彼はやや気まずそうで


「だ、だけど手持ち無沙汰に過ごしてるだけで何も変わらないまま、1年が経った!俺たちが一緒に住み始めて1年だぜ?!その間、『奴等』の相手をしてただけだろ?!」


「アクア……」


僅かな同情を含んで見つめたが、次の言葉に耳を疑った


「なのに、余計なモンは増えて。どうせならナイトとかプリンセスを拾ってきたら良かったのに」


「アクアッ!!貴方って人はなんて事を口にするんですか?!」


ビクッ


すごい剣幕で怒鳴られて、流石に身を竦めてしまった


普段温和な人物だからこそ、ギャップの違いに恐怖する。

その後、しばらく説教が続く




‥……――


「とにかく僕は彼女が目を覚ました時の食事を持って来ますから、くれぐれも静かにしていなさいね?」


ソコは、かとなくお兄ちゃんの様



パタン


ドアの閉まる音、そして溜め息


「アクア、ホント君には呆れるね。あのスカイをアレだけ荒立て、むしろ感心するよ。

彼の前では少し黙ってなさい、それが懸命だよ」


「うー……」


居心地が悪くなって、矛先はベッドに眠る星竜に向いた




(……起きなきゃ)


微睡みから抜け出そうとする星竜


と、近づいていくアクア


何か言おうとする周りより早く、アクアが星竜を前屈みに覗き込み


目を開けた星竜は同時だった


「あ、起きた」


アクアの呟き


「えっ」


驚く周囲




目を開けた星竜の至近距離に、顔のドアップ


勿論アクアの顔


「ひゃあぁぁぁッっ!!」



ゴンッ


「イテぇッ!」

「痛ぁーいッッ!!」


驚いた拍子に、体を勢い任せに起こした星竜の頭と、覗き込んでいたアクアの頭が衝突。ものすごい音を立てた


二人共悲鳴をあげ、それぞれ頭を抱えて蹲り、悶絶


一部始終を目撃していた周囲はただただ、どうしたら良いのか分からず茫然と見守ってしまう


「だ、大丈夫です、か?」


恐る恐る話し掛けてきたのは、くせのある茶髪の青年でホストよろしく、相当整った顔立ちの美男子だった


星竜はそれどころではない


「――…ッイタイ」


まだ顔を押さえていた


それを見て青年は、もう1人の災難者に視線を向ける


「ぅぅ〜……」


床に這いつくばった状態で額を押さえている


「君が悪いよ、アクア。女性を驚かすからそんな目にあうんだ」


呆れた様子で、アクアと呼ばれた黒髪の青年をたしなめ、星竜へ話し掛ける


「すみません、ケガは?」


「なんでオレが怒られんの?!」


心外だと言わんばかりに顔を上げて反発したが、取り合う者はない


年齢は星竜と同じくらいか、どこか幼いイメージをそのまま成長させた感のある豊かな表情と大人になりきれない悪童顔から覗くドングリ目。

怒られて無視されて散々な彼は、星竜に非難がましい視線を投げて体を起こしてる


星竜もやっと痛みが落ち着いてきて、涙目で視線を上げた


見慣れぬシンプルな部屋には初対面の男性が3人


外の光が注ぎ込み、風は暑すぎず心地好かった


「(良い天気だなぁ、今日は……)まだ痛い」


星竜は臆することなく額をさすり、正直に告げた


目の前の青年は「でしょうね」と苦笑いをもらす


こうやって笑うと益々ハンサムで、少なからず女性であれば興味がなくても赤面してしまいそうだが、生憎相手が悪い。星竜は彼の関心より、どうやら部屋の観察の方が興味があるらしい


何より気になったのは部屋の隅に静かに立たずんでいた青年だった。


星竜の事など興味なさ気に窓の外を眺めている。

切れ長の涼しげな目元に、落ち着き払った雰囲気、アクアと並んだら正反対の印象を受ける


しかし星竜を引き付けたのは、その顔でも姿でも雰囲気でもない。もっと単純に外見的なトコ


(変な格好)


彼の身なり、服装である。まるでRPGよろしく、どこかの勇者サマの様な出で立ち、マントに甲冑、マンマである


(コスプレ……流行り?!)


世間一般で言うなら、星竜はかなりファッションなど「今どき」に疎いが、それでも流石に違和感を持った


目を点にして困惑してる星竜に別の声がした


「なんだか騒がしかった様ですが?」


部屋に入ってきた青年は、訝しそうにアクアに視線を送った。

それを、慌てて首を振って否定する


「ちょっ、オレじゃないよ!」


狼狽えている姿を、傍らで観ていた茶髪の青年が可笑しそうに笑っていた


スカイと呼ばれた青年は疑わしそうにアクアから、部屋の様子に目を配った


「!」


そこで初めて、星竜が目を覚ましている事に気づく


「気が付いたのですね、良かった。どこかご気分は悪くないですか?」


ニコニコして穏やかな口調で星竜に近寄って来た


サラッサラなおぼっちゃま刈りの黒髪で癒し系の雰囲気そのまま醸し出されていた。優しげな表情が幼気だ


(男の子だよ、ね?)


笑うと可愛くて、どちらかと言うと守られるより守りたくなるタイプ


「ご気分が宜しければスープ、作ったんですがいかがですか?」


男性には珍しく馬鹿丁寧な言葉使いは恐らく天然


一瞬、惚けていた星竜だが、思い出した様に口を開いた


「食事より聞きたいコト満載なんですけど?」


一応敬語で切り出して


スカイは納得した様に「構いませんよ」と頷いた

※ここからは星竜の一人称でお楽しみください…


食事してる場合じゃないよ、私!テレビに吸い込まれて……で?どうしたッケ!?


「ココどこ?」


まずは場所よ、ばしょ。

なんせ最後の記憶がかなり非常識だったし……


目の前にいる穏やかそうな彼に聞くのが良いよね!冷静っぽいし


スカイは質問にニコやかに応えてくれた


「ロウ国中部の、森の外れにある僕達の居住まいです」


彼にしたらかなり詳しく説明してくれたんだと思う、思うケド!


ドコそれっ?!


「はい〜?」


つい首を傾げて聞き返してた


しょうがないでしょ?そんな国知らないし、聞いた事もない


「え」


相手も私の言葉に当惑してる


ちょっとちょっと?


(もしかして、日本ではないかもしれない……ってか、日本じゃない!寒くはないけど暑くもないし、真夏の日本では考えられないもん。

ましてや、私がテレビに吸い込まれた事を認めたら、外国にいてもヘンじゃないわ。言葉が通じるのが気になってるけどさ)


案外冷静だなぁ、自分……しみじみ思うね。

適応性があることは自覚していたケドここまでとは、私自身驚いてる。

昔、友達にソレが危ういのだ、と忠告を受けていた程に


(私、なんでこんなに落ち着いてられるんだろ)


それは、まだココが『還れる範囲内』だと信じていたからなんだ。『地球上のドコか』だと


「日本では、ないんだね?」


確認の意味でスカイに尋ねてみた


「ニ、ホンです、か?」


おやおやおや?


スカイは困った表情を浮かべ、茶髪の青年を振り返る


なんで?


その彼も当惑している様だった


何で、その反応?アレ?日本、知らない?


予想外


そこに顔をしかめたアクアの一言に血の気が引いた


「ドコだよ、ソレ。聞いたコト無いぞ?」


不審を顕にして私を睨み付けている


何でそんなに敵意丸出しなの?さっきの事まだ根に持ってんの?アレは痛かったな、マジで


「知ら、ない?」


「少なくとも、この周辺ではないね、別の場所かな?でもそれ以外となると……」


茶髪の彼はそう呟いたまま何やら考え込んじゃった 


(日本を……知らない?!)


嫌な予感


ドッと襲ってきたのは不安より疲労感。ベッドに項垂れる


(何よ、それ……質問する気にもなれない!)


「あの、大丈夫ですか?」


私の様子があまりにも落胆してた為、スカイは心配して私を覗き込んできた


でも、正直大丈夫じゃない……その時は頭が真っ白になってて、ただ一つの目的しか見えなくなった


「……帰る」


「え゛?」


頭が重い、顔を上げる気力もない……でも言った


徐ろに告げた私の一言は、彼らを慌てさせるには充分な効果を得ていたらしい。戸惑う彼らの顔が並んでる


ここにいちゃいけないのよ


構わずベッドから立ち上がった私を、スカイが止めた


「まっ、待ってください!……セルフ!」


突拍子もない行動に助け船を呼び、茶髪の彼、セルフも一緒になって私の説得に回ってきた


が!


「スカイッ、セルフ、放っておけよ!!帰りたいって言うなら帰してやりゃイイじゃん!お人好しにもホドがあるぜ。

コイツ、聞いた事もないような場所から来たんだろ?この国すら知らないって顔してたじゃん」


知らないのよ、そんな国。

君は、まだ私に腹立ててるの?しつこい


そんなアクアをセルフが咎めた。イイ気味!


「アクア!君は言葉を選べないの?!

……そしてお嬢さん、よく考えて。そんな軽装で外なんて出たら危険なんだよ?」


そのまま私に視線を移し、優しく嗜めてきた。はい、ごもっとも。私は今パジャマ姿だしね。


「その通りです、森を抜ける迄には凶暴な獣や毒虫がいます」


続いてスカイも必死な顔で私を説得に回る


うわー、なんか謝りたくなっちゃう様な顔しないでよ……って言うかそんな危険な処に住んでるアナタ達って……

それに約1名、私を目の敵にしてる人いるし?


「(歓迎されてないの解っていていられませんよ)幸い外はまだ明るいし、何とかなるよ。この場所が分からなくたって町とかに出れば連絡手段も見つかると思うから」


多分……


自信はまったく無いけど、半分意地になってたのかな。止める二人を振り切って出口までやって来たまでは良かったの。ソコで初めて気づいた


私、裸足だ……


確か、家ではスリッパを履いてたけど、こっちに引っ張られた時落としちゃったよ


一瞬足を止めたが、今更戻るのは恥ずかしいし、しょうがない!


ドアが開くのと同時に飛び出してみた


ら?


「避けろ!!」


声がした



「?!」


ドカッ


「つッ」


イタイぃ


声がなかったら反応が遅れてた


と言うのも、気付いた時には声に無意識に反応して受け身をとった体に対して蹴撃が与えられていた。鈍い痛みで顔をしかめる


あっぶなぁー


カバーした右腕赤くなっちゃった


蹲った私に、一部始終を目撃していたと思われるスカイが血相を変えて駆け寄って来た


「だっ、大丈夫ですか!?け、ケガ、怪我っ……腕は平気ですか?!」


かなり焦っているみたい。私の腕に対してすっかりパニック状態で目をぐるぐるさせてるー♪オモシロイ……じゃなくて!


「大丈夫だよ?」


むしろ落ち着け。

そんな気持ちで言ったけどスカイは真っ青で「そんな訳無いでしょう?!」と怒られちゃった


何?その自信に満ちた否定。本人が大丈夫だって言ってるんだからホントに大丈夫なのに


この騒ぎに、後から来たセルフ達が目を丸くした。

まぁ当然だよね、この様子見たら誰だって不審に思うよ。それくらいスゴい取り乱し方してるよ?スカイさん


「スカイ?……とフレイム」


あ、忘れてた


スカイの反応があまりに大げさで、もう一人の当事者の存在……


セルフが見つめる先には私とスカイ、そして『彼』がいた


一見、表情が見えない冷めた様子で立って私達を見下ろしていたけど、微妙に気付いていた……僅かな動揺と泳ぐ視線


筋肉質の身体、でも綺麗にバランスが取れた体躯、格闘技やってるんだね


気にしないで、これは事故


「なんだ?どうしたよ」


アクアが後ろで首を傾げていたけど、セルフはそのまま私の傍らに片膝をついて、慌てふためくスカイの話を聞いた


アクアは眉を潜めながらも空を仰ぎ見てから屋敷を振り返る


怒られるから黙ってるのかな?かなり立場低そうだもんなぁ


呑気に思いながらアクアの振り返っている方向を見つめる


ちょうど、さっきまで私達がいた部屋の窓が見えた


(あ、ターンさんがいる)


後で知った事だけど、あの部屋はターンの私室で、いつもそこからこの出入口を見て侵入者などを監視したりしてる、らしい


侵入者って……どんだけ物騒なんだ


「あれぇ?なんかターン、珍しい顔してね?」


そこにアクアが呟いていたが別の声でその注意が削がれる事になる


「なんだって?!大丈夫なんですかッ?」


私に怒鳴らんばかりのセルフの声が、アクアの関心を戻していた


「なんだぁ?!」


あーあ、喋っちゃった


……スカイから事情を聞いたセルフは、目を見開きながら大げさに気遣ってくれちゃって……ほら、見てよ。あまりにも異様な反応にアクアまで参加して来ちゃったじゃない


「何?一体……」


でもスカイもセルフも聞いちゃいない。私の腕で盛り上がらないでよぉー


「オイってば!」


ほーら、無視されて怒っちゃった


……ケド、やっぱり立場が低いんだなぁって再認識


「邪魔ですっ、アクア!!そんな所でツッ立っているなら早くターンを呼んで来なさい!」


怒ってるよォ


(スカイさん、怒ると怖いんだな。アクアくんなんか理不尽さに涙目だぁ。挙げ句に蔑ろにされる始末、アハハ……カワイソ。同情だけ♪)


アクア自身、動揺しながらもキョロキョロしてるのは、言われた事を実行させようしてるらしいが、焦ってるから中々実行できない模様


(あっ、ターンさんが部屋からいなくなってる。だからオロついてたんだ)


そう、「避けろ」って言ってくれたの彼だよね?後でお礼言おう


……って来たよ、目的の人物(ターン)がコッチに。

アクアも何か言いた気だ


しかも私の前に座るし。

え?アナタも腕、見たいの?


そんな無表情で腕取られても……どうしたいの?ンー…


「あのぉ、心配してくれるのは難なんですけど、意外と平気デスよ?」


グーパーしてみせようか?


なのに!スカイはまだ納得してくれない


「何も無い訳ありません!フレイムの攻撃を素手で受けて無傷であるなんて!!」


(んもうっ!なんで、信じないの?)


相当腕を見込まれてるんだね、フレイムさん


その台詞を聞いて、アクアも皆の慌てている理由を理解したみたいだけど……


ポカーンとしてる


その反応も変でしょ?


と、次の瞬間


理解したみたいなんだけどね、理解したらしたで‥‥ハァ……


「お前ッ、腕、無事かよ?!」


うざ……


結局、同じ反応が増えたのみ


(だから大丈夫だってば!)





ホント、怒るよ?

溜め息が出る……


※星竜、一人称終了

 

結局、この騒ぎで部屋へ引き返す事になってしまった


(なんかカッコ悪‥‥‥)


「でもフレイムの蹴りを受けて無事だった常人いないぞ」


「ソレは私が変人って言いたいの?ヤメテよ。少しだけ護身術の心得があるだけ!

それに咄嗟に受け身が取れたのは、そこの(ターン)が声を掛けてくれたお陰だし、攻撃だって勢いを間際で抑えてくれたからであって!」


アクアを睨みながらターンとフレイムに礼を言う星竜を見て、セルフがニコリと笑う


「でも本当にケガがなくて何よりだよ?女の子だし」


「ただの女だったら、右腕、一生使い物にならなくなってたかもな」


「アクアッ!!」


一言多いアクアの憎まれ口を、スカイが一喝した


(うわっ)


「すみません、みっともない所を見せてしまいまして。念のためこれで冷やしておいて下さいね。痣になるといけませんから」


冷やしたタオルを差し出され、星竜は苦笑した


「ハハハ……(過保護だなぁ)ありがとう」


すっかり疲れ果てて、素直に対応する事にした


(とにかく今日はここに泊めてもらうしかないな、私を拾ってくれた恩人は事実だし)



「名前、自己紹介しませんか?お互い折角知り合えたんですし」


セルフが徐ろに提案してきた


アクアが横で「ええぇー」と何か言いた気にしたが、スカイの目があって公にはせず、おとなしいものだ


「(そっか!名前無いと不便だよね、何かと……)私は、シリュウよ、『龍宮星竜』っていうの。16」


(なんだかさっきと比べて随分人懐っこいな)


星竜の態度にギャップを感じて戸惑いを見せる


元々、星竜の本質。とにかく警戒心より先、他人に対して抱くのは好意。来る者は全部受け入れて適応してしまう傾向がある


長所であり欠点。

特に、金持ちの息女という立場で言うなら致命的、危険極まりない。だからこそ、徹底した護身術を身に付けさせられているようだ


「俺は『セルフ=アース』 17です」


無邪気な星竜に動揺しながらも、セルフはニッコリ笑って自分の名前から始めて、そして無愛想なターンと、仏頂面のアクアを振り返る


「『ターン=サターン』彼は君と同じ16才、そして『アクア=マーキュリー』彼も16だよ」


(コスプレお兄さん、寡黙だから年上かと思ってた)


意外そうに話を聞く星竜に、スカイが頭を下げる


「僕は『スカイ=ウラヌス』と申します。18歳です、宜しくお願いします」


穏やかに微笑むスカイの紹介


星竜は、思わず目を見開いて驚いた


(ウソっ、18?!2つも年上なのっ?年下かと思ってた)


「そして最後に、君に脚蹴を当ててしまった武術の得意な『フレイム=マーズ』17才だよ。

フレイム、君きちんと彼女に謝ったのかい?……ごめんね、わざとではないんだ、許してあげてね」


フレイムを嗜め、それでも自分がフォローするあたり、彼が調整役のようだ


これには星竜も笑って頷いた


フレイムは感情表現が不器用な人物なのだ。だからこそ悪気が無いことも、星竜には解っていたから先程も責めたりはしなかった


(なーんで同じくらいの年代が一緒に暮らしてるのかとか、どんな集まりなのかとか、そこら辺も興味はあったんだけど……気のせいじゃない事、1つめっけ)


大きな邸だが、周囲には街は愚か、家すら見当たらない。このような場所で、それぞれタイプも違う、血縁でもない年頃の青年達が一緒に暮らしている違和感


その中で見つけた




『共通点』




(セカンドネーム、明らかにヘンでしょ?)


彼らのセカンドネームが共通して惑星の名に因んでいたのだ


それこそ違和感の原点‥‥


星竜の困惑を知ってか知らずか、話を進めるセルフ達


「倒れていた君を見つけたのはスカイ、運んだのはターンなんだよ。あの周囲には民家はないし、その軽装で旅ってわけでもなさそうだし、君は何故あんな場所にいたの?」


(それは私が聞きたいくらい。なんで私、ココにいるの?)


「‥‥‥」


星竜には答えようがなかった


『何か』に連れて来られたと言えば間違いないが、素直に口には出来ない。何せ、確証がないのだから。そもそも誰に、なんの目的で?


自問していたら益々実感して落ち込んでくる


(なんで私がこんな目に……)


黙っている星竜に、セルフは当惑しながらも覗き込むようにして驚きの質問を投げ掛けてきた


「この星の出身じゃないんですか?」


「ほ、星ぃ??!ッ」


声は裏返る


星竜の反応があまりにも明ら様だったのだろう、言った方も戸惑っている


「えっと(そんな驚く事?)だからこの『ドラゴンファンタジー』の中央極星(タイヨウ)出身ではないかって……あの、聞いたんだけど……俺、変な事言った?」


「ドラゴン?!何っ?どこって言った、今!!」


すっかりパニック状態で繰り返す星竜の様子に、茫然としながらも同じ質問をする


「だから、太陽星出身なのかって、違うのか?」


アクアも少なからず戸惑って聞いた


「太陽、ドコが?此処?!ココなの?!バカ言わないでよっ!燃えてるでしょっ、太陽は!!」


「この状況で冗談言わないで」と非難したが、こちらもそれを否定する


「何を言っているんです?」


訝しむ様子に、星竜は興奮したまま続けた


「それはこっちのセリフよ!私は地球に住んでるッ!!それで、太陽には人間はおろか、生物という生物の生存は不可能でしょ?!」


そんな子供でも知っている事を力説している自分が情けなくなってくる


なのに周りの反応はやけに神妙で、むしろ不思議そうな顔を向けていた


「地球?『俺』の星の出身者なんですか?」


(?……『オレの、星』??)


呆然と目を丸くする星竜。言っている意味が分からない


そこへ、スカイも首を傾げ考え込む


「燃える太陽?それは……」


皆が顔を見合わせてから一様に頷く




「『異次元地球』」




星竜以外の声が重なった


(今、何地球って言った?)


困惑する星竜を尻目に、彼らは納得を含んで語り合う


「けどさ、話だけで実際行き来した人間の話なんて聞いた事ないぜ?」


「しかし、それなら彼女の話の内容にも辻褄が合います。ロウ国を知らない事や何より太陽星を燃えているという認識です」


「聞いた事があるな、異次元で人間が生息できるのは『地球』だけなのだと。そして、その気候を保てるのは燃え盛る星の熱、太陽のお陰だって」


彼らの会話は更に続き、深刻な表情が崩れない


「ケド、どうやって来たんだ?方法は限られてるし……その上、目的が分かんねぇ」


「方法と言ったって……」


セルフが物言いた気にターンを遠慮がちに見上げる


「進展はない」


その視線を感じて、ターンは無感動に答えた


星竜には誰の事を言っているのか分からない。それ以前に、皆が何の事を言っているのか理解できなかった


皆の視線が再び星竜に向けられた、その時だ


「?」


光が一点に集中し渦を巻く怪奇現象発生


初めて目の当たりにした現象を、星竜は呆然と見開いた


「??」


そんな星竜を尻目に、彼ら全員が光に向かって片膝を折って敬礼する


この現象が何を表しているのかを知っているらしい


(なんなの?)


光は淡く広がって……


そして、中心に浮かぶ影


「!」


現れたのは、長いハニーブロンドを揺らした美女だった


「ひッ……人ー?!ッ」


「お前、ウッセーよっ!!」


驚愕を露に絶叫した星竜。それにアクアからの非難を受けたのは言うまでもない


 

彼女は『ユニヴァース・ガディス』と名乗り、彼らのいわば保護者だと星竜は理解する。彼女に対して敬意を払っているし、心から信頼してるのが見て取れたからだ


(でも、人間じゃないよね)


彼女の事を彼らは何も知らないのだと言う


(そんな人物を信用できるのか理解に苦しむトコだけど)


神出鬼没で突然現れ、呼んだ時に出没し、彼らを導くらしい


(何を?てか、なんて自分勝手な……)


その意志も彼女以外の第三者が関与すると言っていたが、星竜にはサッパリ理解できない事だった


(意味が分からない。彼女の登場で『異次元地球』っていう言葉の意味も途中だし、そもそも光から人間が現れる事態を異常以外になんて表現するのよ?!幽霊?)


結局、辿り着く結論


「えっと、ガディス。あの……彼女は… 」


セルフが星竜について説明をしようと話を切り出すと、それを彼女が遮った


「知っています」


戸惑ったのはセルフ達


「ガディス、知っているとはどういう事ですか?彼女は偶然スカイが連れてきたんですよ?」


不可解な言動に、食い下がらないセルフを、ガディスは「偶然ではないのです」と言って星竜を見下ろし、美しく整った眼差しを向ける


「?」


全員が眉を潜める中、ガディスは改めて告げる


「偶然ではなく、必然……必然なのですよ。彼女がこの地へ来た事は……」


(?……この人、何言ってんの)


「彼女は異次元地球からやって来た」


「?! どうしてそれを?」


驚くセルフの質問を、ガディスは目を閉じて口を開く


「彼女は『来た』のではありません……こちらから『喚んだ』のです」


「は?」


星竜まで目を点にする


(ヨンダ?……私を彼女が?)


ガディスは、ゆっくり水色の瞳を星竜へ向けて白い手を伸ばしてくる


「待っていました……貴方を」





―――……やっと見つけた

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