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財前杏華はお金持ち!(でした)

作者: タチバナ

 財前杏華ざいぜんきょうかはお金持ちである。そんなことは世界の常識だ。


 たとえば日本の駐車場の多くを運営している月極駐車場株式会社、ビルやマンションの管理をしている株式会社定礎などは、彼女の父が先代から受け継いだ会社である。

 また、アメリカのゴランノス氏、ポンサー氏の兄弟ふたりが創立し、多くのテレビ番組に資金援助することで知られるも、その実態は闇に包まれているゴランノス・ポンサー株式会社に対しては、彼女の父は相談役という形でかかわっているとされる。

 そんな父を持つ杏華も「衛生上の問題から、回転寿司チェーン店のカウンターには手を洗うための蛇口を設置する必要がある」との研究論文が央端社から書籍化され、日本中から賞賛された才女である。

 現在はハイスクール学園学院高等学校の生徒だが、将来は国際信州学院大学に進学し、父が経営する会社のひとつである割り箸メーカーの株式会社おてもとに就職する予定だという。


 そんな一方で――、

「じみ子、今日もお昼はそうめんなんだ……」

「お弁当にそうめんはどうかと思うけど、足りなかったらうちらのおかず分けてあげるからね」

 教室の隅で、そうめんを食べる少女がひとり。それを心優しい友人たちが心配そうに見守っていた。

「ありがとう、ユウ、ジン。いつも心配かけてごめんね、ユウ。

 ジンも闇の組織の一員みたいな名前なのに、気遣ってくれてありがとう……」

 金梨かねなしじみ子は、めんつゆに浸したそうめんをすすりながら、ふたりの友人に微笑みかけた。

 クラスメイトたちはみな、貧乏生活を送るじみ子を不憫に思い、とても親切にしてくれている。

 ――ただひとり、財前杏華を除いては。


「あーら、じみ子さん! よく飽きもせず貧乏飯をお喰らいになられてますわね!

 わたくしなんて、セバスチャンが毎日毎日、三段積みのお弁当に高級食材てんこもりでしてよー! おーっほっほっほ!!」

 その声がする隣の席にじみ子と友人たちが目をやると、杏華の豪華なお弁当が燦燦と輝いていた。

 そこには、伊勢海老のてんぷらやフォアグラのソテー、黒毛和牛のステーキなどが入っていた。


「……そっちは栄養バランス悪そうだね、杏華ちゃん」

「はあ? それを言うなら、そうめんなんてほとんど炭水化物のかたまりですわよ!」

 売り言葉に買い言葉で、意外にもじみ子は杏華に対して強気であった。それに友人たちも加勢する。

「ちょっと杏華さん! いくらじみ子と幼馴染だからって、毎日毎日ちょっかいかけるのやめてもらえる!?」

「そうよそうよ、じみ子がかわいそうでしょ!?」

 だが、杏華はそんな言葉も意に介さずといった様子で高笑いをした。


「ほーほっほ、貧乏人の貧乏飯を嘲笑って、何が悪いと言うんですの!?

 悔しかったら、わたくしのようなお金持ちにおなりあそばせ!」

「でも、そんなに食べたら太るよ?」

「………!! ……………………っ!!!」

「あ、杏華さんにクリーンヒットした」

「そう言えば、この前健康診断があったばかりだよね……」

 じみ子の鋭い言葉の刃に貫かれ、杏華は黙り込んでしまった。

 どうやら体重の話題は、杏華にとっては禁則事項だったらしい。


 そんな淀んだ空気の教室に、黒服の男が飛び込んでくる。

「大変です、お嬢様! こんなことを言うのは、どうにも口が重いのですが……!」

「誰が重いですって!? ほんの2kg、大物に近付いただけですわ!」

「は……? し、失礼しました……!?」

 その男はどうやら財前家に勤める執事のひとりらしい。

 まだ若く気の弱い彼は、杏華の勢いに尻込みしてわけも分からず謝罪の言葉を口にした。


「そんなことより、わざわざ学校にまで来るなんて、一体なんの騒ぎですの?」

「は……、それが、その……。だ、旦那様が……」

「父上が……? まさかご病気でお倒れに!?」

「い、いえ……、そういうわけではなく……、その、全ロストしました!!」

「………………はい?」

 今度は杏華が首を傾げる番だった。全ロストした? 一体何を?


「つまりその、旦那様が闇のゲームに敗れて全財産を失ったのです!!

 財前家はこれにて無一文になりました!!」

「んなーーーっ!!???」




 闇のゲーム、それは資産家たちが集まり、それぞれの資産を賭けて戦う禁断のゲームである。

 その種目はトレーディングカードゲームから鉄骨渡り、王様ゲームまで多種多様だ。

 最近ではそれぞれ1本ずつタコの足を引っ張って、最後まで足がちぎれなかった者が勝ちというタコゲームも導入された。

 杏華の父は、そんな闇のゲームに全財産をベットし、そして敗れてしまったのだ。

 そのとき彼は「悔しい、悔しい、悔しいっ……! しかし、これでいいっ……!!」などと意味不明なことを呟いていたという。


「どういうことですの、父上! 財産を全ロストしたって、これから一体どうするつもりなんですの!?」

「すまん、杏華……。この屋敷からもすぐに出ていかなくてはならん……。使用人もすべて解雇し、一からやり直すつもりだ。

 こうなったのもすべて俺の責任だ。本当に申し訳ない」

 慌てて屋敷へ帰り杏華が問い詰めると、父は深く深く頭を下げて謝罪した。

 普段は豪胆でありつつも気高い彼が、それほどまでにしおらしくしているのは、杏華にとって初めてのことだった。


「父上……、しかし、やってしまったものは仕方ありませんわ。

 そんな無謀な賭けに出たのにも、何か事情がおありになられたのでしょうし……」

「うむ、初めは俺のポケットマネーだけにするつもりだったが、次第に負けが込んで、預金に手を出し、ブランド物の時計や車などを賭け、やがては会社の資産もベットして、最後には屋敷しか賭けるものがなくなり――」

「ただのギャンブル中毒ですわ、このクソ親父!?」


 その翌日から杏華は三段積みの豪華なお弁当箱で、もやしを食べる生活を送ることとなった。

「くっ……、今はまだ母上の分の貯金で暮らせますが、少しでも節約するために今は我慢のときですわ!」

 なお、さすがに使用済みのお弁当箱は売れる当てもなく、そのまま使うことになったのだが、それがより惨めな様子を演出していた。もやしをもしゃもしゃと頬張る杏華に、誰も声をかけることができない。

 しかし、事情は聞いているじみ子だけは、幼馴染の友達でもある杏華のことを心配し、おずおずと話しかけた。


「杏華ちゃん、私にできることならなんでもするから気軽に言ってね。

 お腹空いてない? お弁当分けてあげようか?」

「じみ子……、気持ちは嬉しいのですけど、あなたもどうせそうめんでしょう?

 そのお言葉だけで結構ですわ」

「そっか、要らないかあ、めんつゆ」

「めんつゆのみ!?」


 じみ子は残念そうに、めんつゆの入った容器をスクールバッグにしまう。その表情は本当に悲しげで、裏表なく杏華を気遣っていることが感じられた。

 その姿に杏華は率直な疑問をぶつける。

「どうして、あなたはわたくしに親切にしてくださいますの……?

 いつも意地悪なことばかり言ってきたのに……」

「そんなの当たり前じゃん。だって、私たち、小学生の頃からずっとお友達なんだから」

「……でも、わたくしはもうお金持ちですらない、ただの嫌味な女の子ですのよ?

 あなたに与えられるものなんて、何も――」


 そこで、じみ子は杏華の唇にそっと人差し指を当てた。

「もう忘れちゃった? 私がクラスの男の子たちにいじめられていたとき、杏華ちゃんが助けてくれたこと。

 それから私たちはどこへ行くのも一緒の、大切なお友達になったこと。

 大事なのはお金じゃないよ。私たちの絆はもっともっと深いところに刻まれているんだから」

「じみ子……」

 そうして、ふたりは手を取り見つめ合うと、出会った頃のように純粋な瞳で笑い合ったのだ……。

 そして、その翌日――、




「ねえ、聞いて、杏華ちゃん!! 宝くじで3億円当たった!!

 うひょぉおおおおおぉおお、これで貧乏生活ともおさらば!!

 世の中やっぱりお金だぁあああああああああぁあ!!!!!」

「んなーーーっ!!???」


 それから数ヶ月後、金梨家は3億円の資産を元手に投資に成功。さらに、もとは杏華の父が経営した会社を次々に買収。

 あっという間に、全盛期の財前家にも匹敵するほどの富を築き上げてしまう。

 そして、じみ子の私服もどんどん派手になっていき、スクールバッグすらブランド物のバッグを用いるようになった。

 教室にはお弁当の代わりに、そうめん職人を呼び、毎日教壇のうえでそうめんを作らせるほどのセレブとなったのだ。

「いや、なんでそこでまだそうめんなんですの!?」

「やれやれ、杏華ちゃんみたいな貧乏人には、出来立ての高級そうめんのよさが分からないか……」

「そんなの別に、分かりたくはないですわー!?」


 そうしてじみ子は完全に調子に乗って、都内の一等地を買って建設したお屋敷からジェット機で学校に通い始める。

 一方で、お屋敷を差し押さえられた杏華は、ボロアパートに引っ越して徒歩通学をする生活だ。

 まあ、そんなこんなで、完全に杏華とじみ子の立場は逆転してしまったわけである。


「このままではまずい! 大変にまずいですわ!!」

 貧乏生活で追い詰められているとは言え、杏華にはまだプライドがあった。

 下賤な者たちが営むというアルバイトなるものは、絶対にやるつもりはなかったのだ。

 しかし、こうも苦しい経済状況では、そんなことは言っていられない。母からも、このままでは大学にも通わせてあげられないかもしれないと言われている。

 そこで意を決し、杏華はまず近所の喫茶店でアルバイトを始めたのだが――、


「ご、ご注文を承ります……!」

「トゥーゴーパーソナルリストレットベンティツーパーセントアドエクストラソイエクストラチョコレートエクストラホワイトモカエクストラバニラエクストラキャラメルエクストラヘーゼルナッツエクストラクラシックエクストラチャイエクストラチョコレートソースエクストラキャラメルソースエクストラパウダーエクストラチョコレートチップエクストラローストエクストラアイスエクストラホイップエクストラトッピングダークモカチップクリームフラペチーノで!」

「……はい? も、申し訳ありませんが、もう一度お願いしますわ!」

「だから、トゥーゴーパーソナルリストレットベンティツーパーセントアドエクストラソイエクストラチョコレートエクストラホワイトモカエクストラバニラエクストラキャラメルエクストラヘーゼルナッツエクストラクラシックエクストラチャイエクストラチョコレートソースエクストラキャラメルソースエクストラパウダーエクストラチョコレートチップエクストラローストエクストラアイスエクストラホイップエクストラトッピングダークモカチップクリームフラペチーノで!」

「………………(失神)」


 次に働いたファミレスでは――、

「どいてニャ! どいてニャ! どけどけどけどけどけどけどけどけどけどけどけどけどけどけどけどけどけどけどけどけどけどけどけどけどけどけニャ!!」

「猫型配膳ロボットが暴走し始めましたわ!? どうしたら止まるんですの、これ!?」


 さらにファーストフード店では――、

「ふふっ、君のその可愛らしいスマイルをテイクオフで!」

「帰れ。そして飛ぶなですわ」


 といった具合に何故かトラブル続きで、どのアルバイトも長続きしなかったのである。

 杏華はこれでも愛想はいいほうで、接客業が苦手なわけではないはずなのだが、どうにも行き詰まりを感じてしまう。

 何か他にいいアルバイトはないものかと杏華がふらふらと街を歩いていると、とある張り紙が目に飛び込んできた。


「メイド募集。未経験歓迎。やる気のある方ならどなたでも……」

 見れば、そこには立派なお屋敷があった。その姿はどことなく、かつて杏華が暮らしていたお屋敷を彷彿とさせる。

「懐かしいですわね……。もうあの日々が何年も昔のことだったように感じられますわ。

 せめてもう一度、あのお屋敷で暮らすことさえできれば……」

 そう思いかけたところで、杏華はぶんぶんと首を振る。いくらなんでもかつての令嬢がメイドだなんて、あまりにも屈辱的過ぎる。

 気を取り直して、そのお屋敷を素通りしようとするが、その目の端に先程は気付かなかった文言が捉えられた。


「住み込みOK。三食昼寝付き……!?

 く、くぅううううううぅうう!!!」

 住み込みということはつまり、このお屋敷で寝泊まりができる!?

 そして、もやし料理ではなく、優雅なフレンチが食べられる!?

 ……いやいや、ただのメイドにそこまでの好待遇は期待してはいけないかもしれないが、それにしたってボロアパートでの生活よりははるかにマシだろう。

 気付けば杏華はそのお屋敷のインターフォンを鳴らしていた。もはや彼女に選択の余地はなかったのだ。


「はい、どちら様でしょう?」

 若い男の声。どうやらその雰囲気からすると、ここの主人や息子などではなく、使用人のひとりであろう。

 杏華は間髪入れずに、こう申し入れた。

「あの、わたくし、表の張り紙を見て! ここのメイドとして働きたいんですの!

 是非雇っていただけませんか!? お願い致しますわ!!」

 すると男は悩ましげな声を漏らしたかと思うと、すぐに応えた。


「分かりました。それでは面接を行いますので、どうぞ入ってきてください」

「え、今から!? わ、分かりましたわ!!」

 そして杏華が庭の門を潜り、お屋敷の扉を開くと、そこには端正な顔立ちの、それでいてどこか怪しげな高身長の男が待ち構えていた。


「どうぞどうぞ、こちらにお入りください」

 そうして通された部屋は、普段は客間として使われているらしい。

 年代物の木製の椅子がアンティークとして部屋に彩りを与えている。

 杏華は見慣れているはずの光景にも気圧されて、なんだかそわそわと落ち着きのない様子であった。


「ふふっ、そう硬くならずに。そちらの席に座ってください」

「は、はいですわ……!」

 男は杏華に椅子に座るように促しつつも、その向かいの椅子に腰かけた。

「それではまず名前と年齢、それから好きなサメ映画を教えてください」

「え、ええっと、名前は財前杏華、年齢は18歳、好きなサメ映画は……、好きなサメ映画!?」

「なんでもいいんですよ、サメの出てこないサメ映画でも」

「サメの出てこないサメ映画はサメ映画と言えるんですの!?

 ……いや! そもそもサメ映画なんて一度も観たことがありませんし、面接でそれを訊かれる意味も分かりませんでしてよ!?」


 その杏華の叫び声に、男の眉がぴくりと反応する。

「サメ映画を一度も観たことがない……!?」

「あっ…………」

 しまったかもしれない。いくら意味不明な質問だったとしても、こんな受け答えをしてしまっては、面接は不合格だろう。

 杏華は唇を噛み締めながら、男の次の言葉を待った。せめて彼を怒らせていなければいいのだが……。


「すばらしい! それではこれから存分にサメ映画を味わうことができるではないですか!

 面接は合格です! その代わり研修として一日一本はサメ映画を観ていただきます!!」

「んなーーーっ!!???」




 そうして杏華はこのお屋敷のメイドとして働き始めることとなり、早速メイド服に着替えさせられた。

 使用人たちが身につけていた服をまさか自分が着ることになるなんて、なんだかむず痒いような気持ちだった。

 だけど、これで、お屋敷で寝泊まりできるし、貧乏飯ともおさらばだ。そのうえ、給料もいいとくれば、これはもう一石三鳥だろう。

「それではまずはお屋敷の掃除からお願い致します。できるところだけでいいですよ。

 私はその間に、ここの主人を連れて参りますので」


 使用人の男はそう言うと、杏華に竹ぼうきと雑巾を押し付けて、お屋敷の奥へと行ってしまった。

 取り残された杏華は言われるがままに、まずは廊下の掃除から始めることにした。

 しかし、今までずっと掃除は使用人に任せきりだったのだ。

 どこから手を付けていいかも分からず、ただ適当に竹ぼうきを揺らすことしかできなかった。


「新人メイドをいきなりひとりきりにするなんて、ここの教育とセキュリティはどうなってますの?

 まったくまともな主人じゃありませんわね。第一サメ映画って……!

 それとメイドの仕事に一体どう関係があるって言うんですの? ただ、あの男がサメ映画を布教したいだけではありませんの!?

 どうしてわけの分からない使用人の趣味で、一日一本別に観たくもない映画を観せられなければならないんですの!?

 あーもう、なんだか急にムカついてきましたわ!! こんな掃除なんてさっさと終わらせて、文句のひとつでも言ってやらないと、……うわっ!?」


 そのとき、がむしゃらに振り回した竹ぼうきが何かに当たるような感触がした。

 そして、その直後、無情にも響き渡る何かが倒れてぱりんと割れる音。

「……え?」

 恐る恐るそちらに目をやると、高価そうな壺が粉々になって床に散らばっていた。これは非常にまずいことになった。


「どどど、どういたしましょう!? この壺、絶対高級な壺ですわよね!?

 こんなの弁償するお金なんて持っていませんわよ!? どうすれば、どうすれば……!」

 そこにこつこつと靴音が響き渡る。どうやら使用人の男が主人を連れて戻ってきたようだった。


「お待たせしました、杏華さん。こちらが我が主人の――、おや?」

「あらあら、これは。大変なことになっているね」

 背中越しに聞こえる主人の声は、意外にも若い女性のもののように感じられた。

 いや、相手の年齢や性別など関係がない。完全に自分の不注意でやらかしてしまったのだから、きちんと目を見て謝らなくては!

 杏華は勢いよく振り返るとともに頭を下げ、主人に対して口を開いた。


「も、申し訳ございませんわ! わたくし、新人メイドの財前杏華と申します!

 このたびは、わたくしのミスでこのような惨事となってしまい、大変申し訳なく――」

「うんうん、大変だね、杏華ちゃん。その壺結構高いんだよ?

 杏華ちゃんがここで5年働いても、そのお給料に届かないくらいのお値段。

 これはもう、必死に働いて、身体で返してもらうしかないよねえ?」

「そ、その声は……!?」


 杏華が見上げた先には、幼馴染のじみ子の顔があった。その表情は何故か楽しげであり、嬉しそうだった。

 杏華がお屋敷の面影を懐かしんで、メイド募集の求人に応募してくることも、彼女にとっては計算のうちだったのだろうか。

 じみ子は満面の笑みで、杏華にこう告げた。


「驚いた、杏華ちゃん? ここは私のお屋敷だよ。

 壺はちゃんと弁償できるまで、ここで働いてもらうからね。

 ……そんなわけで、一言いいかな?」

「は、はいですわ……」

 その言葉は友達としては聞きたいようで、メイドとしては聞きたくない最悪の言葉だった……。


「これからもよろしく♪」

「んなーーーっ!!???」


 こうして杏華とじみ子の奇妙な主従関係が始まったのだった……。

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