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ある日突然 ある親子の1週間  作者: 春原 恵志
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悩み 橘

その後、内閣府大坂分室に日本中から様々な情報が入ってくる。橘はそういった情報入手のたびに事の重大さを思い知らされていた。

インターネット通信障害の主な要因は都内サーバーがダウンしたこともそれだったが、通信各社が緊急対応をどうするかについて、東京本社の指示を仰ぐ必要性があったことが主要因だった。これはあらかじめインターネット各社が社内規則として決めていた内容でもあり、トップの状況確認に時間がかかったことが遅れの原因であることが判明した。トップは常に東京在住ということの弊害でもある。指示を仰ごうにもそのトップの存在が不明だったということだ。

東京の地震については上限値最大の震度7強で、マグニチュード10程度の規模だということであった。ただし、今回地震計は地震発動と同時に破壊されたため、震源地付近の正確な数値はわからないとのことだ。直下型地震を大きく超える震度というだけでなく、有史以来、計測史上最大の地震だった。さらにこれはプレート移動による海溝型地震ではなく、直下型の傾向も強いことがわかってきた。よって直下型では津波は発生しない。

正確な数字が現在までも判明しないのだが、丸の内を中心に10Km圏内の人間の生存は絶望とみられ、少なくとも500万人を超える死者数が想定された。さらにその都心部では自衛隊や警察が入ることが出来ないほどの建物の損壊やガレキの山があり、道路が寸断されていた。それゆえ救助活動はまったく行えていない。

まずは救援活動をどうやっておこなうかが、大阪分室の最優先事項となっていた。さらに国家としての体をなす必要があるために、早急に臨時政府を発足させなければならない。その作業も同時に進めていた。

分室の小会議室にて如月と橘が相談している。如月が吠える。

「気象庁の地震担当で生き残ってるやつはいないのか?国交省の担当でも良い。地震の原因を見極めないと今後の対応ができない。これから余震がどうなるのかが分からないと救助活動をおこなってよいのかも判断できないぞ」

「気象庁の地震火山部の生き残りを探しています。たぶん、東京にいなかった現場担当が残ってるはずです」

「まずそこを当たってくれ、いなければ専門家の意見を聞こう、とにかく緊急で頼む。それと自衛隊と警察には各支部単位で救援指示を出してくれ。それは内閣府指示でけっこうだ。都心は壊滅だし、道路がこの状況じゃあ、手の下しようがない。郊外の救援を主体にするように地方自治体経由で指示してくれ。あと、防衛省の幹部クラスも必要だな。すぐに分室に呼んでこちら勤務としてくれるよう指示してくれ、とにかく防衛問題も喫緊の課題だ」

「了解しました。気象庁の生き残りもこっちに呼びますか?」

「そうだ。ここから指示を出すためにもここで業務してもらう」

「了解しました」


橘は業務に追われながらもその合間にみゆきと連絡をとろうとしていた。長野の情報が入ってこない。東京ほどひどい状況ではないはずだが、東京に近いことから大阪よりも被害は出ていることが推測された。みゆきのことが心配でしょうがない。

ところが震災から数時間を経過して、みゆきのスマホにはつながるようになったが、みゆきは出ない。すぐに留守番サービスになってしまう。さらに学校への連絡は混みあっていて、まったくつながらなかった。

「どうなってるんだ」

休憩室でスマホを片手に呆然としていた橘のところに如月が来た。

「どうした?」

「ああ、すみませんいそがしいのに。実は娘が電話に出ないんですよ」

「何かあったのかな」

「留守番サービスになるんですよ。大丈夫だとは思うんですが」

「確か、娘さんは長野の学校に転校したんだよな」

「はい、そこの寮にいるはずなんですが、連絡がつかないんです」

「ひょっとすると娘さんはこっちに向かってるんじゃないのか?」

「そうなのかな・・・交通機関もまともな状態じゃないし、とにかく、電話に出ないのが気になります」

「まだ、通信状態が正常じゃないのかもしれないし、もう少し時間を置いたらどうだ」

「そうですね。こっちとしてもそれしか手がないんで・・・」

このあと、再び、橘は仕事に忙殺されることになる。

夕方になって、ようやく学校と連絡がついた。なんと、学校は休校になっており、寮生は親元に返したとのことだった。みゆきについては怪我などはしていなかったということは確認できたが、学校側も帰省したものとばかり思っていたそうだ。ひとまず、無事が確認できたことはよかったが、その後の足取りが分からないとは、橘にとって新たな問題が発生したことになる。しかし、その後もみゆきの携帯電話は依然としてつながらない。橘は憤る。 

みゆきはいったい何をしてるんだ・・・

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