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ある日突然 ある親子の1週間  作者: 春原 恵志
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被害状況 橘

 大阪市内は徐々に平時の状態に戻りつつあった。車で移動した橘たちは大阪分室に到着した。分室は大阪城近くのインテリジェントビル内にあり、内閣府の管轄で2千人程度の人間が様々な活動をおこなっている。

 如月は分室のリーダーでこのビルを活動拠点としている。300坪程度のフロアーを5階分使用している。一般企業の通常のオフィスと比べるといたって殺風景で、机、椅子、パソコン程度で実にお役所然としている。実際、役所なのでその通りなのだが。

 フロアーはオープンフロアとし、見渡せる形にしている。仕切りを置かないことで見通しをよくした。これは如月からの要望だった。見通しをよくして、職場内の風通しもよくしたいとの思いがあるようだ。

 如月が分室に入る。やはり室内は騒然としていた。ただ、幸い部屋自体に損傷はなく、壊れたものなどもないようだった。

「みんな、変わりはないか」

 総務の坂本課長が如月のところまで来て報告する。

「大丈夫です。けが人や大きな被害はありませんでした」

「それはなによりだ。ところで通信状況はどうなってる」

「だめですね。いまだにネットがつながらないです」

「じゃあ衛星電話はどうなってる」

「それなんですが、衛星電話は機能しているようですが、霞が関にはつながりません」

「つながらないってどういうことだ」

「霞が関からの応答がないです。それについては原因不明です」

「どこで通信障害が起きてるのかな?」

 如月と橘は衛星電話のある室長室に行く。まず如月が本部へ電話をしてみる。

 確かに電話自体は受話器を上げると音がして機能はしているようだ。しかし、ダイヤルしても霞が関とはつながらない。

「たしかに本部と通信できない。どういうことだ」

 橘は先ほどから気になっていることを確認しようと思った。

「如月さん。一度、九州へ電話してもらっていいですか?」

「ああ、福岡県庁でいいか」

 橘はうなずき、如月が福岡に電話をする。数回の呼び出し音の後、

「つながった。ああ、如月です。そちらの状況はどうですか?はい、ああ、そうですか、実は霞が関の内閣府への電話がつながらないんですよ。そちらからは・・・はい、ああ、やっぱり同じですね。わかりました。どうも」

 如月の顔が曇る。橘が話す。

「震源地は関東に近いのかもしれませんね。ひょっとするとあちらの方の被害が大きいのではないですか?」

「大阪で震度5だったんだぞ。もしそうだとすると関東で、それ以上だと・・・」

「仙台はどうでしょう」

「そうだな。宮城県庁にかけてみる」

 如月は徐々に深刻な顔になってきている。そして無事、県庁につながる。

「すいません。如月です。仙台はどんな様子ですか?はい、はい、そうですか、大阪も震度5程度です。実は東京につながらないので状況が見えません。そちらも震源地などの状況把握は出来ていないんですね。そうですか、わかりました」

 如月が暗い顔で電話を切った。

「仙台も震度5らしい」

「東日本大震災の時は大阪で震度3でしたよね。東京は震度5でした」

「埼玉はつながりますか?」

 橘の疑問にはすでに電話をしたとみられる坂本が答える。

「埼玉県庁は不通でした」

 如月が言う。

「情報収集衛星のデータを見るか。情報調査室権限で取れるはずだ」

「わかりました。やってみます。しかし、ネットがつながらないのは困りましたね」

「震災の教訓はどうなってるんだろうな。たしか、総務省指導でもっと早く復旧できるように対応したはずじゃなかったのか?」

 しかし、残念ながらその後1時間経過してもネット回線は復旧しなかった。衛星情報もネットがつながらないと確認できないことになる。ただし、震源地が関東地方であることや、震度が想像以上だったことだけは徐々に判明してきていた。

 そんな中、唐突に衛星電話から呼び出し音がした。

「はい、内閣府分室です。・・・Yes」受話器をふさいで如月が話す。

「ホワイトハウスからだそうだ」

 如月は数分間、ホワイトハウス高官と話をした。そしてその内容は信じられないものだった。その会話が終わりそうなタイミングでフロアーから声が上がりだしていた。

 橘がフロアーに戻る。するとそこにいる全員がモニターにくぎ付けになっている。どうやら回線が復旧しネットがつながったようだ。ただそこには信じられない映像が流れていた。おそらく羽田空港に着陸予定であった飛行機の乗客からの映像らしかったが、そこに羽田空港はなく、ほとんどが海に埋没している。陸地もガレキの山となっている。仕方なく飛行機はそのまま引き返す。ネット回線の復旧と同時にそういった画像が続々とアップされているようだ。

 橘が室長室に戻る。

「ネットが復旧した模様です」

 それには答えず、如月が話す。顔が青ざめている。

「東京が消滅したらしい・・・」

 ホワイトハウスからの情報によると、東京で大規模地震が発生した。これは主に衛星画像からの判断で、現地に設置されていた地震計ではなにも測定できなかったとのこと。これは推測だが地震計が瞬間に破壊されたためのようだ。震源の中心は東京の丸の内で、そこを中心に30km圏内に甚大な被害がでている模様だった。

 マグニチュード10以上の地震規模で、アメリカ国防省省ペンタゴンでは核攻撃によるものではないかとの見解もあるが、ミサイルなどの痕跡はなかったそうである。また、それとは別に震源地を中心に衝撃波が観測されたそうで、2次災害の恐れもあるそうである。

「如月さん、それは首都機能が喪失したということですか?」

「そうだ。とにかく一刻も早く、詳細を確認する必要がある。国家存亡の危機かもしれない。自衛隊に出動を要請する必要もある。しかし、政府がどうなったのかがわからない」

「国会会期中ですよね。議事堂は大丈夫ですかね」

「会期中だとほとんどの議員は出席しているだろうな」

「総理が不在でも自衛隊や警察は動けるんですか?」

「自衛隊は動けない。防衛大臣、総理大臣ともに不在であれば、誰も指示が出来ないからな。現在、法的に自衛隊が独自判断で動けない仕組みが出来上がってる。市ヶ谷の防衛省もどうなったかわからないな。警察も警察庁長官、警視総監がいない場合は動けないかもしれない。」

「とにかく、職員全員で状況確認を進めていきます」

 橘は職員への指示を急いでおこなう。今や内閣府だけでなく、残った政府関連の人材が集結して課題解決に当たっていく必要があった。


自衛隊北関東防衛局

 如月たちが対応を話し合っている同時刻、自衛隊の北関東防衛局では対応をめぐって局長を含めた幹部が会談中だった。

 北関東防衛局は、さいたま市にある『さいたま新都心合同庁舎』に存在している。こちらの被害は大きいものではなく、業務は出来ていた。局長が話す。

「現在までの被害状況は確認できるか?」

「自衛隊の北関東については、全基地において軽微な被害はありますが、機能はしております。しかし一番、被害の大きいのは横田基地です。こちらは地震よりもその後の爆風被害で米軍機を含め、相当数被害がでているようです。ただ、防衛上の問題はない模様です。また、千葉ですがこちらはヘリに数台被害が出ているようですが、なんとかなりそうです。それより南関東防衛局のほうが被害が大きいようです。横須賀は機能不全となっています」

「そうなのか・・・・」

「問題は本省のほうです。こちらは、おそらく崩壊した模様です。局長、このままでは我々は何も出来ません。司令部は壊滅状態です。トップ不在のまま指示待ちであれば、自衛隊の本文である人命救助活動も何もできないことになります」

「しかし、状況が見えない。連絡がつかないことには・・・」

「東京が壊滅しているとしたら、自衛隊に対する命令権を持ったものが誰もいなくなります。首相、防衛大臣、副大臣、政務官もすべて死に絶えた場合、何も出来なくなります」

「それはわかっている。もし、独断で動いた場合の責任をだれがとるのかといってるんだ。」

 幹部は局長の顔を見る。

「局長しかいないのでは・・・」

「無理を言うな」

 この応対に幹部全員が頭を抱える。別の幹部が話をする。

「とりあえず、被害状況を確認することだけなら、いいのではないですか?活動ではないと言えば申し開きはできるでしょう」

「ヘリは飛ばせるのか?」

「木更津駐屯地も被害を受けていますが、ヘリは飛ばせるとの報告はあります。ユーロヘリを飛ばせると思います」

「よし、いいだろう。私の責任で木更津から都内状況確認のため、ヘリを飛ばせ」

「わかりました。指示します」


 木更津駐屯地は、地震の影響も大きかったが、それよりもその後の爆風の被害が甚大だった。駐屯地からは都心を見ると核爆発でもおこなったようなきのこ雲が確認されている。

 ただし、こちらも指示がないと動けないため、今あった北関東からの指示はありがたかった。

 指示を受けた木更津駐屯地からヘリコプターEC-225が離陸した。

 木更津駐屯地は地震の被害で、基地が損壊することはなかったが、地震以降に発生した爆風の影響で、ヘリについては数台が被害を受け、今回は、たまたま、別場所にあった整備中での機体の使用が可能となった。

 しかし現在の天候については黒い雲が垂れ込み、嵐に近い風雨が続いていた。地震発生から1時間は過ぎているが状況は変わらない。

 そんな中でもヘリは飛び立っていく。そして東京湾を渡り、お台場方面に近づくにつれて、そこには信じられない光景が広がっていた。

 海岸沿いからお台場に飛行していく。お台場はそこがそれであったとは思えない惨状だった。そこにはただ海があるだけだった。

「これは、何が起きたんですか・・・・場所を間違えたのか・・・」

 パイロットがうめく。また、そこにあるべき建物もガレキと化していた。ここにはテレビ局やレインボーブリッジが存在するはずだったが、やはり、海しかない。

「建物がまるで見当たらない・・・」

 さらに都心方向へと進んでいくが、やはり同じくガレキの山で、そこにあるべき高層建築物なども存在していなかった。

「東京タワーが根本しか残ってない」

 東京タワーも土台部分が少し残っているが、鉄骨類は崩壊していた。スカイツリーも同様に倒壊していた。設計上ではどんな地震が来ても倒壊しないはずの鉄塔類が壊れている。

 さらに飛行を続けると皇居についてはかろうじて森は確認できたが、建物は崩壊していた。国会議事堂も存在は確認できなかった。ガレキと化していた。さらに市ヶ谷を通過する。

「防衛省が崩壊しています」

 防衛省は建物を含め、ガレキとなっていた。

「これでは生存の可能性は限りなくゼロかもしれない。ここまで飛んで動いているものはいなかった」

 ヘリはそのまま飛んでいく。新宿方面の高層ビルについても被害が甚大のようだった。ただ、窓や壁に傷やガレキ跡はあるが、ビルは建物としては残っていた。

「これは地震の被害じゃないな・・・都心の生存者は絶望的かもしれない」


 北関東防衛局は木更津からのこの報告を受け、対応を検討していた。

「どこから手を付けたらいいのか、ここまでの被害とは・・・」

 局長がうめく。

「とにかく現存する部隊を生存者の救助に向かわせましょう」

 幹部が提案する。

「いや、それよりも被害状況の確認が先だ。優先順位をつけるべきだろう、どこを優先するかが、まったくわからない。まずは、現存する部隊と動けるか否かを確認するしかない。それからやってくれ」

「わかりました。現存する部隊の確認はおこないます」

「私は政府関連の残存勢力をあたってみる。やはり法的に指示が必要だからな」



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