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ある日突然 ある親子の1週間  作者: 春原 恵志
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6日目 発光

6日目

「橘さん!」

 分室内仮眠室で仮眠を取っていた橘を呼ぶ声が遠くで聞こえる。はっとして橘は起きる。しまった。寝過ごしたか、時計を見る。6時だ。それを見て少しほっとする。ブラックホールは起きなかったのか。

「橘さん」

 仮眠室に清水がいる。

「ああ、どうかしましたか?」

「はい、原田女史からメールが届いています」

 とたんに目が覚めた。ベッド脇の自分のノートパソコンを開ける。確かに原田女史からメールが来ていた。タイトルを見た瞬間、力が抜ける

『危機は去った』

 ああ、なんということだ。そしておもむろにメールを確認する。


各位

先ほどの発光現象を当方にてスペクトル分析および解析作業を行った結果、反物質による対消滅現象だと断定した。これは宇宙船の完全な消滅を意味する。よってブラックホール発動の危機は去った。詳細については別途、報告させていただく。以上。


 メールを読んだ橘が清水に言う。

「清水さん、これは確かなんだろうか」

「多分、原田女史の話なので確かなことだと・・・」

 橘はそのままベッドに倒れこむ。

「助かった・・・」

「ええ、助かりました」

「とにかく、官邸に連絡しないと」

 橘は如月に電話する。

「如月さん、おはようございます」

「おはよう、どうかしたか」

「はい、危機は去りました。宇宙船が破壊されたそうです」

「何!本当か・・・」

「先ほど、原田女史から連絡がありました。詳細は後で報告するそうですが、発光現象は宇宙船の破壊だそうです」

「・・・」

「如月さん」

「助かった」

「はい、女史のメールをそちらにも転送します」

「ああ、そうしてくれ」

「はい、じゃあ、また後で」

「ああ、ご苦労様」

 電話を切る。清水、橘はしばらく放心状態でそのまま、へたり込んでいた。

「ああ、清水さん対消滅現象って何なんですか?」

「はい、物理学の話です。粒子と反粒子を衝突させて他のエネルギーに変換されるといった事だったと思います。要は完全に消滅させたんでしょうね。その反応が発光現象だったと思います」

「なるほど、完全消滅か」

「そうです。無かったことにされましたね」

「証拠隠滅だね。まったく宇宙人、やってくれるな」


 みゆきはホテルで朝を迎えた。みゆきは今までの疲れもあってぐっすり寝てしまっていた。あれ、ここはホテルだ。じゃあ死んでないのかな?ホテルのカーテンを開けて窓から外を見る。昨日と同じ世界だ。やっぱり、地球は残ってる。ブラックホールが遅れてるのかな。

 時計を見る。8時半だ。すると部屋の電話が鳴った。おとうさんからの電話だった。

「みゆき、おはよう、朝食にしようか?今、ホテルのロビーにいる」

「何も起こらなかったね」

「奇蹟が起きたよ」

「まじ!」

「うん。詳しくは飯を食いながら話す」

 みゆきは生きている。やった、これからは、やりたいことをやるんだ。エレベータでロビーに降りる。ロビーにおとうさんがいた。


 橘はロビーでみゆきを待つ。エレベータが開いた。みゆきだ。その瞬間、緊張の糸が切れてしまった。嗚咽だ。くやしいが、もうどうしようもなかった。娘の前で泣くなんて、でもだめだった。ここ数年のハリがすべて崩れてしまった。

「おとうさん・・・」

「みゆき、ごめん。少し泣かせてくれ・・・」

 みゆきは呆然としている。

「みゆき、神様は俺にもう一回チャンスをくれた。とうさんは頑張るよ」

「うん、みゆきもがんばるよ」

 橘はそのまま、しばらく泣き続けていた。


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