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ある日突然 ある親子の1週間  作者: 春原 恵志
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再会 みゆき

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 みゆきは内閣府大阪分室があるインテリジェントビルの一階ロビー受付にいた。

 受付嬢に話をする。

「すみません。私、橘みゆきって言います。内閣府のおとうさんに会いに来たんですが」

「内閣府の橘さんね」名簿で確認をしている。「はい、連絡もらってます。少しお待ちください」

「はい」

 受付の人は電話をかける。おとうさんとつながったみたいで、

「いまから、こちらに来るそうです。そちらの待ち合わせ場所で、お待ちください」

 みゆきは受付横にある待合所のソファに座っておとうさんを待つ。

 エレベータが開いて、みゆきを見つけたおとうさんが駆け寄ってくる。

「みゆき、大丈夫だったか。心配したんだぞ」

「うん、大丈夫だよ。いっしょに来てくれた人が居たんだ」

「そうらしいな。お礼をしないと。どこにいるんだ」

 おとうさんが辺りを見回す。

「もう、いっちゃたんだ。恥ずかしがり屋さんなの。うん、後でいっぱいお礼をしてよね」

「そうか、よかったな。ああ、おとうさん、もう少し仕事が残っててな。ここのホテルに部屋を取ってあるから、ちょっと先に行って待っててくれ」

 みゆきはホテルのパンフレットと部屋番号を書いた紙を受けとった。

「うん、わかった」

 そんなみゆきを見て、おとうさんは不思議そうな顔をする。

「みゆき、なんか大人になったな・・・」

「そう?日に焼けただけだよ」

「うん、そうかな。じゃ、あとで」


 おとうさんと別れたみゆきは指定されたホテルで待っていた。

 そこでちょうど、この1週間の振り返りをすることができた。いろんなことがあっという間に過ぎていった。今まで生きてきた時間とこの一週間の濃密さの違いに驚くほどだった。みゆきの人生観が経った一週間で根底から覆された。そんなこともあるのかと改めて思った。

 ベアさんの言う通りだ。人との出会いって素敵なことなんだ。


 午後6時になっておとうさんはホテルのみゆきの部屋まで来た。

「みゆき、晩飯は何を食べる?好きなものでいいぞ」

「お腹空いた。ステーキがいい」

「そうか。じゃあ、高級ステーキを食べるか?」

「うん」

 おとうさんはどこかのレストランを予約して、豪華にタクシーを呼んで出かけた。

 そこは確かにびっくりするぐらいの高級レストランだった。窓が大きく、いやすべてが窓だな。ガラス張りの店内から夜景がきれいに見える。室内にはシャンデリアが輝いていて、自分がお姫様になった気分だ。

 おとうさんがステーキを注文して、ワインとジュースで乾杯した。

「聞きたいことは山ほどある。この1週間の話を教えてくれるか?」

 みゆきはこの一週間の話をした。あまりの話におとうさんは驚いていた。

「そうか、良い人と出会ったんだな。みゆきは運が良かったな」

「うん、ほんとにそう思うよ」

「ベアさんには今度、お礼をしないとな・・・」

「うん、絶対だよ」

「うん、それでな・・・」

 おとうさんは話しづらそうにしながら、今日の目的の話をしだした。

「母さんの話だけど、みゆきにはなんであんなことになったのか、分からない部分があったよね。基本的には俺が母さんのことを、ないがしろにしたのが悪いんだけど・・・」

確かにおとうさんは仕事ばかりで、母さんがどんどんおかしくなってきたのに気づかなかった。気づいていたかもしれないけど、見て見ぬふりをしていた。これはみゆきのせいもあるのかもしれない。

「かあさんは病気だったんだ。診療内科には通っていたんだけど。とうさんも良くなっていたと勘違いしてた」

「そうなんだ。なんか薬も飲んでたし、どんどん話もしなくなってきてたから、単にみゆきを嫌ってると思ってた」

「違うんだ。かあさんも苦しかったと思う。ただ、みゆきには病気のことを知られたくなかったみたいだ。話をしないでくれって言われてた。母親は毅然として子供と接するべきだと思ってたみたいだった」

「私のいじめ問題で困っていたから」

「それもあったけど、それだけじゃないんだ」

「あと、わたしはやっぱり母さんに嫌われていたのかな」

 その話でおとうさんはより真剣な顔になった。

「いや、そんなことはないぞ。前にも言ったけど、母さんが死んだのとみゆきは関係ない」

「でも、みゆきを生んだのは失敗だって・・・」

「うん、ああ、やっぱりそこに引っかかってたか、その件でね。わかったことがあった。かあさんの昔の友達で、凛子さんって言う人が居るんだけど」

「みゆきもあったことある。OL時代の友達だよね」

「その彼女とこの前、会ったんだ。彼女から連絡があってね・・・彼女もかあさんの件はショックだったようで、ようやく整理がついたらしくって・・・。彼女はかあさんが死ぬ直前に会ったらしくって、その時、かあさんはみゆきにひどいことを言ったって、後悔していたらしい。本心じゃなかったって。

実は、かあさんはみゆきを産むときに迷ってたんだ。おとうさんとの結婚生活もけっしてうまくいってなかったし、母さんも母親になれるのか、不安で仕方がなかった。みゆきに母親としてしっかりと接することができるのかって、悩んでいたんだ。それでも最後はみゆきを生むことを決心したんだ。でも、やっぱり、子育てが上手くいかなくて悩んでた。母さんは完璧主義者でしっかりした仕事をしないと納得できないタイプだったんだ。いい加減ってことが出来ない人でね。母さんがみゆきに言った言葉は、みゆきを生むんじゃなかった。こんなダメな母さんで、人間としても未熟で、しっかり育てることが出来なくて申し訳ないって意味なんだよ。言ったのは病気のせいなんだけど、色々、不安になるんだ。少しでも楽になりたいから、思わず言ってしまったって」

「でも、かあさんはそのことを気に病んで死んじゃったのかも・・・」

「そうじゃないよ。色々なんだよ。かあさんには重荷がありすぎたんだろうね。一番悪いのはとうさんだよ。家庭から逃げてたからね。もっとおかあさんの力にならないといけなかった。寄り添っていかないとだめだったんだよ。もう、取り返しがつかないことだけど」

「どうすればよかったのかな」

「うん、とにかくこれからは話し合おうよ。おとうさんもみゆきともっと話をするよ。みゆきも嫌かもしれないけど、父さんの話を聞いてくれよ」

「うん、いやだけど、そうするよ」みゆきは笑いながら話す。

「みゆきはもう・・・しかし、みゆきはなんか、変わったな。なんていうか、大人になった」

「そうかな。でも、ベアさんからやりたいことをやればいいって言われて、吹っ切れた。母さんから嫌われようが、いじめられようが、好きなことを好きにやればいいって、やってみようと思う。ああ、そうだ。お父さん。私、医者になろうと思う」

「え?どうした。急に」

「ベアさんと会って、やりたいことをやれって言われて、色々,自転車に乗って見てきて、人を救いたいって思った。自衛官みたいなのは無理だけど、うんちのみゆきでも医者ならできそうだし、人の命を救いたいと思った」

「そうか、うん、そうしろ、もっと勉強しないとなれないけどな。そうか、みゆきもやりたいことが見つかったのか・・」

 おとうさんの頬につーっと涙がこぼれていた。

「よかった。ああ、それから、みゆきに言わなければならないことがある。これは誰にも話せないことだけど」

 そういうと、おとうさんのこの一週間の話を始めた。おとうさんの話というか、この地球の話だったけど。その話はまったく、ピンとこなかった。でも地球が無くなるのはわかった。

 おとうさんは最後に話をした。

「その学者の話だと、多分、明日にはブラックホールが作られて、地球は無くなるらしい」

「まじなの、正確な時間はわからないの?」

「あしたの朝早くになるらしい」

「ブラックホールが発生した瞬間ってどうなるのかな?」

「うん、多分、一瞬のうちに消えてなくなる感じかな」

「ほんとにあっという間もないぐらい?」

「うん」

「なんか、信じられないよ」

「とうさんもそうだ。そんなことが本当に起こるのか・・・」

「ベアさんに会いたいな」

「そうだね。今ごろ鳥取についてるかもな」

「多分、そうだよ。あの人の速さは異常だもん」

「ベアさんなら、何て言うかな」

「うーーん、多分、気にしないんじゃないかな。私には関係ないって、やるべきことをやるだけだって」

「そうか、それがいいかもな」

「そうだよ。それにそんな科学力を持ってる宇宙人でしょ。なんとかするはずだよ」

「ああ、みゆきの言うとおりだ。とうさんもみゆきの意見に賛成だ」

「大丈夫、大丈夫」

「みゆき、とうさん、これからまた、仕事なんだ。一人でホテルに戻ってくれるか」

「いいよ。頑張ってね」

 デザートもそこそこにおとうさんは職場に戻って行った。まったく、忙しい人だな。みゆきは、そうなるかもしれない最後の晩餐を優雅に過ごした。


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