報告 橘
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内閣府大阪分室、実質は内閣府そのものだが、その小会議室で如月が橘と清水の報告を聞いていた。青ざめた顔で如月が確認する。
「つまりは、地球はあと、2日で滅亡するということなのか?」
「原田女史の説ではそうなります」
「米国からの反応はどうなんだ。結果報告をしたんだろ?」
「先ほど、データと口頭でも話をしました。当然、再度のブラックホールについては伏せています。今のところ大きな問題はないようです」
「そうだな。もし、ブラックホールが起きると言ったらアメリカは核攻撃でもなんでもやりそうだ」
「ブラックホールでも壊れない宇宙船ですよ。それはやるだけ無駄だと思います」
「そうか」
「我々はどうします。発表の範囲はどこまでおこないますか?」
「やるとしても官邸までだろうな。それでもパニックになるな。ところで、原田女史のレポートの信ぴょう性はどうなんだ」
「一応、国内外の口の堅い有識者には情報を流してます。もちろんブラックホールの件は伏せてますが、ケンブリッジの教授は報告書に間違いないだろうと述べていました。特に教授が驚いていたのは、原田女史のブラックホールと特異点の生成条件の解説と計算式です。そこまでの理論が完成している点に驚愕していました」
「ちょっと待てよ。その計算式から特異点生成が失敗しているとはわからないのか?」
これには清水が補足する。
「大丈夫です。そこまではわからない内容になっています」
「米国にも情報を流したんだよな」
「流しました。情報提供が条件でしたので」
「じゃあ米国についても大丈夫だろうな。偉い人の考えることはよくわからんな。とにかく、我々は出来ることを粛々とやるしかない。月並みだが、奇蹟が起こることを祈るしかない」
「はい、そうですね」
橘は原田女史が述べた奇蹟の確率0.1%についてはあえて言わなかった。
「宇宙船の探査はどうなってる?」
「海洋開発機構に依頼しています。ただ、すぐには出来ないと言われています。また、お台場なんで彼らは再度の地震を警戒している気もします」
「そうだろうな。わかった。そこは官邸を利用しよう。脅迫でもなんでもやるしかない、とにかく大至急、探査する必要がある」
「はい、そのとおりです。早ければ早い方がいいです」
「さて、今の話をどうするかだが、官邸に話す意味があるかな」
「どうですかね。末期がんの患者に明後日に死にますって言うような話ですから・・・」
「そうだな。言う価値はないかもしれないな。わかった。おれの判断に任せてくれ」
足早に如月が会議室から出ていく。こんな時でも橘はみゆきの事を考えていた。みゆきは今、どこなのかな、もうすぐ会えるのかな。




